知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

書面によらない商標の使用の許諾を認めた事例

2010-09-18 17:23:37 | Weblog
事件番号 平成21(行ケ)10392
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年08月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

2 判断
 以上のとおり,エレクター社は,平成19年6月及び平成20年5月に,インターメトロ社製の組立式棚の写真を掲載した製品カタログに,本件商標等を付して頒布し,また,そのころ,本件商標等が付されたインターメトロ社製の組立式棚を販売した。そして,上記認定した事実によれば,エレクター社は,本件商標について,原告による通常使用権の許諾を受けて使用したものと認定するのが自然である。
 すなわち,
① エレクター社は,昭和41年に設立され,インターメトロ社の製品である組立式棚を,同社から輸入し,販売する事業を継続してきたこと,
② エレクター社は,昭和40年代前半には,インターメトロ社が製造した組立式棚「エレクターシェルフ」を日本で独占的に販売する権限を取得し,昭和63年ころには,エレクター社のC 及び同夫人Dが,インターメトロ社のAと,技術援助契約を締結し,エレクター社は,インターメトロ社の製造に係る組立式棚を日本で独占的に販売する権限を取得していること,
③ エレクター社は,インターメトロ社の製造に係る組立式棚の写真を掲載した製品カタログに本件商標等を付して頒布するなどしてきたこと,
④ インターメトロ社及び原告のいずれも,エレクター社の本件商標等の使用に関して,何らの異議を述べたことはないこと
等の一連の経緯に照らすならば,エレクター社の本件商標等の使用は,原告の通常使用権の許諾の下でされたものと解するのが合理的である。

 もっとも,技術援助契約書(甲18)は,A,C 及び同夫人D を当事者として,作成されたものであること,本件商標は,同契約の対象に含まれていないこと等の事実に照らすならば,同技術援助契約を直接の根拠として,原告がエレクター社に対し本件商標の通常使用権を許諾したものではない
 しかし,
① エレクター社とインターメトロ社とは,上記技術援助契約書に沿って,円滑な取引を継続してきたものであり,インターメトロ社は,所定のロイヤリティの支払を受けていたこと,
② 平成21年8月に,上記技術援助契約のロイヤリティに関する合意が改訂されているが,エレクター社とインターメトロ社とは,上記技術援助契約が,両社に対して効力を及ぼすものであったことを当然の前提として,改訂交渉を行っていること
等の事情を総合参酌するならば,インターメトロ社(知的財産権の管理のために運営されていた同社の完全子会社である原告を含む。)が,エレクター社に対して,本件商標に係る通常使用権の許諾を与えたと認定するのが合理的である。
 すなわち,エレクター社とインターメトロ社(子会社である原告を含む。)とは,本件商標の使用許諾に関して書面を作成してないが,少なくとも書面によることなく,本件商標の使用を許諾していると認めることができる。この点に関する被告の主張は,採用の限りでない。
その他,被告は,縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。

3 結論
 以上のとおり,エレクター社は,本件商標の通常使用権者と認めることができ,同社は,取消審判請求の登録前3年以内である平成19年6月及び平成20年5月に,インターメトロ社製の組立式棚の写真を掲載した製品カタログに,本件商標等を付して頒布し,また,そのころ,本件商標等が付されたインターメトロ社製の組立式棚を販売したことを認めることができるから,商標法50条1項の規定に基づいてその登録を取り消すべきものであるとする審決の判断は誤りである。よって,主文のとおり判決する。

平成21(行ケ)10393 平成22年08月31日 知的財産高等裁判所 飯村敏明裁判長も同趣旨

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