知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

無効審判請求の対象でない請求項を含む訂正請求がされた場合

2010-09-06 06:42:36 | 特許法126条
事件番号 平成21(行ケ)10389
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年08月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

1 再訂正は認められないとした判断の誤り(取消事由1)について
(1) 判断の誤りの有無と審決の結論への影響
 実用新案登録無効審判請求について,各請求項ごとに個別に無効審判請求することが許されている点に鑑みると,実用新案登録無効審判手続における実用新案登録の有効性の判断及び訂正請求による訂正の効果は,いずれも請求項ごとに生じ,その確定時期も請求項ごとに異なるものというべきである。

 そうすると,2以上の請求項を対象とする無効審判の手続において,無効審判請求がされている2以上の請求項について訂正請求がされ,それが実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とする訂正である場合には,訂正の対象になっている請求項ごとに個別にその許否が判断されるべきものであるから,そのうちの1つの請求項についての訂正請求が許されないことのみを理由として,他の請求項についての訂正事項を含む訂正の全部を一体として認めないとすることは許されない
 そして,この理は,無効審判の手続において,無効審判請求の対象とされている請求項及び無効審判請求の対象とされていない請求項の双方について訂正請求がされた場合においても同様であって,無効審判請求の対象とされていない請求項についての訂正請求が許されないことのみを理由(この場合,独立登録要件を欠くという理由も含む。)として,無効審判請求の対象とされている請求項についての訂正請求を認めないとすることは許されない

 本件においては,・・・,審決には,上記説示した点に反する判断の誤りがある。

 しかし,・・・,審決は,請求項1,2及び5についての再訂正が認められたとしても,再訂正考案1,2及び5は,引用例考案,引用例に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるとし,再訂正考案1,2及び5についての実用新案登録を無効とする旨判断しており,その点の審決の判断に誤りはないから,上記の判断の誤りは,審決の結論に影響を及ぼすことはない。

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