知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

組み合わせの適否

2006-07-14 22:22:13 | 特許法29条2項
事件番号    平成17(行ケ)10666
事件名     審決取消請求事件
裁判年月日   平成18年07月12日
裁判所名    知的財産高等裁判所
裁判長裁判官  塚原 朋一

『(3) 原告は,審決が,本件補正発明における新たな課題の発見や効果の非予測性について考慮することなく容易想到性の有無の判断をしたことは誤りであると主張する。
しかし,不所望な色付きの防止という課題の有無にかかわらず,引用発明を出発点として本件補正発明の構成に至ることが当業者に容易であることは,上記のとおりである。なお,刊行物1の実施例8について「図7の電極・・・に電圧・・・,を印加し,画素部での透過率を調べたところ,透過率が等しくなる角度が上下左右及びそれらの中間の方向でほぼ一致し視野角も広いものが得られた段落00 , 。」( 【59 )と記載されており,図7(b)の電極対を採用することにより,視野角を拡】大する効果が得られることが示唆されているのであるから,このことからも,引用発明を出発点として本件補正発明の構成に至ることが当業者に容易であることが裏付けられる。
また,効果の予測についても,本件補正発明の構成を採用すれば,液晶分子の配列の変化する方向が異なる複数の表示領域が形成され,黄色の変色方向と青色の変色方向が重なって,視角に対する色変化を互いに補償し合い,色変わりの少ない画像を得ることができることは,容易に予測することができる。
したがって,本件補正発明の構成に想到することが容易であり,上記効果はその構成から予想される程度のものにすぎないのであるか
ら,原告の前記主張は,採用することができない。』

『3 取消事由3(審判手続の法令違背)について確かに,平成13年10月30日付け拒絶理由通知書(甲2の2 ,平成14年)8月19日付け拒絶理由通知書(甲2の3 ,及び,拒絶査定(甲2の4)におい)て,刊行物2は引用されていない。
しかし,平成14年8月19日付け拒絶理由通知書では,刊行物1を「引用文献1」として引用した上で「引用文献1の図7(b)に記載の電極・・・の線対称を,走査線配線に平行な直線に対称にすることに困難な点はない」としているのであり,審決における刊行物2の引用は,この点を補強するものとしてなされたものと理解できる。したがって,審決における拒絶の理由は,既に拒絶査定の段階において特許出願人(原告)に示されていたということができるから,特許法159条2項にいう「拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」には当たらないというべきである。』

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