知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

技術常識を参酌しても実施不能

2006-04-04 22:36:39 | 特許法36条4項
事件番号 平成13(行ケ)422
裁判年月日 平成16年03月17日
裁判所名 東京高等裁判所
特許法36条4項

(注目判示)
一般に,人の体温は,おおむね一定と考えられ,外的温度に対し,着衣等による保温効果がある中,発熱,発汗等により複雑に体温調節機能が働いていることが知られているから,単に頭部を冷却し,足部を加熱した場合,ひざ部,腰部,胸部の温度が傾斜するとは認め難く,
また,乙1の図48「同一外界温における対象グループの体の各部で計ったもっとも高い温度と低い温度の平均」(101頁)によれば,・・・,人の通常時の温度分布は,本願発明が達成しようとする温度分布である①式「T1>T2>T3>T4>T5」とは異なっている。
 したがって,上記のとおりの人の通常時の温度分布を本願発明が達成しようとする温度分布である①式を満足させるようにするというのであれば,そうすることが可能となる具体的手段が明細書又は図面に開示されない限り,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないところ,
 通常の着衣で,頭部を冷却し,足部を加熱してひざ部,腰部,胸部の温度を傾斜させるための加熱部と熱吸収部の温度設定条件が本件特許出願時における技術常識であったとは認められないから,このような加熱部と熱吸収部の温度設定条件の開示がない本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,当業者が,①式を満たすための条件を見いだすことは,技術常識を参酌しても可能であるとはいえない。

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