知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

再許諾権を有していない者からの再許諾に過失を認めた事例

2011-12-18 19:47:20 | 著作権法
事件番号 平成23(ワ)17393
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成23年11月29日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸

 しかしながら,アートステーションが本件両作品の複製及び頒布に係る再許諾権を有していないことを被告が知っていたことを認めるに足りる証拠はない。もっとも,前記認定の事実に証拠(甲9,乙3)を総合すれば,
○1 DVDの製造・販売業界では,再許諾を認めると,ライセンス対象物の管理や広告宣伝,パッケージの表示内容,品質管理が困難となるため,再許諾を禁じるのが通常であること,
○2 アートステーションは,被告との間で前記ライセンス契約を締結した当時,資金繰りに窮しており,被告への製造費も支払えなかったことが認められる。
 以上の事実を前提とすれば,被告は,DVDの製造販売業者として,原告に対してアートステーションへの再許諾権付与の有無を問い合わせたり,アートステーションに対してライセンス契約書を提示させたりして,アートステーションが上記再許諾権を有しているか確認すべき注意義務を負っていたものといえる。

 そうであるにもかかわらず,証拠(乙3,弁論の全趣旨)によれば,被告は,原告に対してアートステーションへの再許諾権付与の有無を問い合わせたり,アートステーションに対してライセンス契約書を提示させたりしていないことが認められる。
したがって,被告には,原告が本件両作品について有する著作権(複製権及び頒布権)を侵害したことにつき,過失があるというべきである。

最新の画像もっと見る