知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

発明の要旨の認定と用語の意義の認定

2009-02-01 12:20:11 | 特許法70条
事件番号 平成20(行ケ)10166
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年01月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘


ウ 以上によれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,次の内容が記載されていることが認められる。
すなわち,本願発明は,・・・,わずかな水分又は有機溶剤によって造粒できるようにすることを目的としたものである。そして,・・・,結合剤に粘性を生じ,周囲の粒子を粘着させることにより造粒が行われる。このような造粒方法は,従来の湿式造粒法とは異なる新しい造粒方法として開発されたものであり,「熱粘着式造粒方法」(Thermaladhesion granulation)と命名された。

エ そうすると,本願発明にいう「熱粘着式造粒方法」とは,希釈賦形剤・薬学的活性成分・結合剤等の混合物を加熱することにより発生する蒸気が密閉系統中で凝結することを利用して,凝結した水分により結合剤に粘性を生じさせ,周囲の粒子を粘着させるという造粒方法をいうものと理解される。

 なお被告は,本願発明に関して特許請求の範囲の記載に何ら不明確な点はなく,発明の詳細な説明の記載を参酌すべき特段の事情も存在しないから,審決が本願発明の「熱粘着式造粒方法」は加熱して粒状物を製造する方法であるとした点に誤りはないと主張する

 しかし,特段の事情が存在しない限り発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されないのは,あくまでも特許出願に係る発明の要旨の認定との関係においてであって,上記のように特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たっては,特許出願に関する一件書類に含まれる発明の詳細な説明の記載や図面を参酌すべきことは当然であるから,被告の上記主張は採用することができない。

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