知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

発明の要旨の認定-発明特定事項の技術的意義の認定事例

2012-10-09 23:44:30 | 特許法70条
事件番号 平成23(行ケ)10405
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月19日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、古谷健二郎
特許法70条2項、特許法29条2項

1 取消事由1(補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定についての誤り)について
(1) 審決の当否について
 栞本体の形状に関して,補正後の請求項1には,「折山を有する折り曲げ可能な縦長状」のものであること,及び,「前記栞本体は前記折山によって二分された」ものであることが特定されている。これらの発明特定事項の技術的意義は一義的に明確で,誤記も存在しない。したがって,本願明細書や図面を参酌すべき特段の事情は存在しないから,補正発明の要旨は,原則どおり,特許請求の範囲の記載,すなわち本件補正後の請求項1の記載に基づいて認定すべきものである。そうすると,補正発明と引用発明とを対比する際,補正後の請求項1に記載された発明特定事項との関係において構成の異同を認定すれば足り,そこに記載されていない事項を考慮する余地はない。
 審決は,補正後の請求項1に記載された発明特定事項との関係において,栞本体につき「補正発明は『折山を有する折り曲げ可能な縦長状の』及び『折山により』二分され,と特定されているのに対し,引用発明は,湾曲部を有し,湾曲部で短延面(2)と長延面(3)が区分されているものの,補正発明のような折山を有するものとはいえず,折り曲げ可能な縦長状のものともいえない点」を相違点1として挙げている。この相違点1の認定は,特許請求の範囲の記載に則ったものであり,審決の認定に違法はない。

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