知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

副引用例の認定の誤り(具体的な手段としての相違)

2010-01-11 19:35:20 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10425
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年12月22日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣


 引用発明において,・・・,その構成を実現する具体的な方法として,呼吸の状態を検知する手段として排気弁又は吸気弁(以下「排気弁等」という。)の動きを検知するとの構成(以下「本件発明の検知の構成」という。)を採用することまでが同当業者において容易に想到し得たものであるか否かについて判断することとする。

(1) 引用例4について
 ・・・
 そうすると,本件発明の検知の構成が,消費電力の増加を抑制するために呼吸連動制御の構成を採用する前提として,呼吸の状態(排気又は吸気)を検知し,これにより,呼吸に連動したブロワー送風の切替えを行うものであるのに対し,引用例4の検知の構成は,無呼吸症候群の病状をモニターするなどするため,呼吸の状態(呼吸停止の有無)を検知するものの,これを単にデータとして取得するのみであり,これによって呼吸に連動したブロワー送風の切替えその他の呼吸に連動した何らかの制御を行うものではないから,引用例4の検知の構成は,その作用及び機能の点において,本件発明の検知の構成と大きく異なるものであるし,また,その解決課題の点においても,呼吸連動制御の構成と大きく異なるものであるというべきである。
・・・

(2) 乙21公報について
・・・
 しかしながら,上記記載によると,乙21公報の検知の構成は,設定した時間内の電気パルスの数を数えることにより呼気の有無・数を検知するものであって,呼吸(排気及び吸気)がなされた時点における呼吸動作そのものを検知するものではないし,乙21公報の人工呼吸補助装置における送気も,通常になされている吸気の補助のために行われるものではなく,呼吸停止時における強制的な送気を行うものである。また,同人工呼吸補助装置における排気弁(呼気バルブ)と引用発明の排気弁とは,明らかにその構造を異にするものである。
・・・
(7) 設計的事項性について
 ・・・,本件発明の検知の構成は,面体内の圧力(圧力の状態)を直接検知する手段をより具体化したものであるところ,上記(1)ないし(6)のとおり,引用例4及び乙21公報を除き,排気弁等の動き(開閉)を検知するとの構成を具体的に開示する刊行物は見当たらず,また,引用例4の検知の構成及び乙21公報の検知の構成についても,引用発明において,呼吸連動制御の構成を採用し得ると仮定しても,本件出願当時の当業者において,その構成を実現する具体的な方法として,本件発明の検知の構成に容易に想到することができたものとは認められないのであるから,被告らが主張するとおり,呼吸の状態を検知するために面体内の圧力を直接検知することが本件出願当時の当業者において容易になし得たものであったとしても,その具体的な手段として本件発明の検知の構成を採用することについてまで,これが当業者の通常の創作能力の範囲内のものであり,設計的事項であると認めることは到底できないというべきであり,その他,そのように認めるに足りる証拠はない。

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