徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

国史跡「熊本藩高瀬米蔵跡」

2023-01-13 17:02:04 | 歴史
 昨年11月、「熊本藩高瀬米蔵跡」が国史跡として指定された。この史跡は、高瀬御蔵跡・高瀬船着場跡・晒船着場跡の3つの文化財で構成されている。このニュースを聞いてとても残念なことがあった。それは史跡の中に大浜の名前がないことである。

 菊池川流域で獲れた米は、藩政時代は年貢として平田舟で高瀬に集められた。いったん高瀬御蔵に収められた後、再び船着場から積み出され、菊池川河口で大きな五百石船に積み替えられ大坂へ運ばれた。「高瀬米」とよばれた上質な肥後米は、全国の基準米としてその年の米相場を左右したといわれる。高瀬港は、熊本藩で最大の蔵米積出し港で、取り扱われた米は25万俵にも達した年もあったという。しかし、江戸中期以降、河川の堆積などのため、高瀬は港としての機能を徐々に失い、3キロ下流の大浜がその役割を担うようになった。

 下の大浜外嶋宮住吉神社に奉納された絵馬も大浜港が一番栄えていた頃の風景である。歴史上、大浜の果たした役割は極めて大きいものがある。にもかかわらず、大浜の名がないのは数年前の護岸工事で港の跡が埋められてしまったからである。大浜港の歴史が抹消されたような気がして残念でならない。


大浜外嶋宮住吉神社奉納絵馬


大浜の船着場跡が残っていた頃


大浜の船着場跡が残っていた頃




   ▼高瀬蔵から米俵を積み出す風景を唄った「肥後の俵積出し唄」

今日は「鏡開き」

2023-01-11 20:17:03 | 日本文化
 今日1月11日は「鏡開き」。昨日放送されたNHK熊本放送局のローカルニュース情報番組「クマロク!」では「みんなでことば塾」というコーナーで、可愛らしい女学生姿の佐藤茉那アナが「鏡開き」について解説していた。その要点は
  • 「鏡開き」とは、正月に飾っていた「鏡餅」を下げること。
  • 「鏡餅」は神様に供えるもの。「鏡開き」することで運気や力を体に取り入れ無病息災を願う。
  • なぜ「鏡」餅なのかというと、昔の金属製の鏡と丸く平たい形が似ているから。
  • なぜ鏡「開き」なのかというと、「切る」とか「割る」は忌み言葉だから「開き」という。
  • まとめると「鏡開き」とは「正月に神様が宿っていた鏡餅を食べ一年の無病息災を願う行事」


 わが家では昔から「鏡開き」のことを「猪の爪鹿の爪(いのつめかのつめ)」と呼ぶ。なぜそう呼ぶかというと、「鏡開き」の「ぜんざい」に付け合せる「たくあん」を、猪や鹿の爪に見立てた形状に切っているからだ。もともと「鏡開き」は武家社会の慣習となっていた「具足開き」が一般化したもの。具足というのは武士がいくさの時に身に着ける「甲冑(かっちゅう)」のこと。正月には床の間に飾った甲冑に神饌である餅や酒、魚、野菜などを供えたという。1月11日の「具足開き」にそれらの供え物を食べた慣習が「鏡開き」になったわけだが、わが家に伝わる「猪の爪鹿の爪」の由来がよくわからない。おそらく、ずっと昔は猪や鹿の肉を供えていたのが形だけ残り、「たくあん」を猪や鹿の爪に見立てて供えるようになったのではないかと思う。近隣には同じ風習が残る家は見当たらないが、静岡県伊豆の国市に千年の歴史を有する江川家という名家があり、そのフェイスブックによると「鏡開き」に馬蹄に見立てた「たくあん」を供するという記事が写真とともに掲載されていた。同じような風習が残る地方あるいは家もあると思われる。
※右の甲冑は「細川家の至宝展」に展示された「黒糸威二枚胴具足(くろいとおどしにまいどうぐそく)」細川忠興(三斎)が関ヶ原の戦で用いたもの(東京・永青文庫所蔵)

2022年度動画視聴ベスト10

2023-01-10 22:20:59 | Web
 YouTubeマイチャンネルの「2022年度動画視聴ベスト10」は次のとおりでした。

 2021年、2022年と連続して「幸若舞 敦盛」が最多試聴動画となりましたが、この勢いが今年も続くのかどうか注目です。また、これらの動画はいずれもアップしてからだいぶ年数が経過しており、年々全体の視聴数が低下傾向にありますので、今年は新作も積極的にアップしていきたいと思っています。

 サムネイル画像をクリックしていただきますと動画を視聴いただけます。

1.幸若舞「敦盛」(34,247回)


2.熊本民謡おてもやん(31,024回)


3.伊勢音頭(30,109回)


4.おてもやん(26,856回)


5.かっぽれ(20,428回)


6.南部俵積み唄(19,631回)


7.ひえつき節(17,929回)


8.だいこんの花(10,137回)


9.2022 藤崎八旛宮例大祭・飾馬飾卸(10,117回)


10.こわらべ ~ 京ものがたり ~(9,578回)

それ青陽の春になれば

2023-01-09 21:53:09 | 日本文化
 今日は地元壺川校区の恒例行事「どんどや」が京陵中学校のグラウンドで行われた。今年は50回目の節目の回だそうである。青竹で組み上げられた櫓に火が入るとたちまち炎が駆け上り、門松や注連飾りによって出迎えた歳神が炎とともに雲一つない青空へと昇って行く様を見送っていると、なぜかこみ上げるものがあった。





 どんどやからの帰路、青空を眺めながら、ふと「それ青陽の春になれば」という長唄「鶴亀」の冒頭の一節が口をついて出た。

2019.1.20 熊本市国際交流会館7Fホール
第54回 熊本県邦楽協会演奏会より
三味線:杵屋五司郎・杵屋五司雄・杵屋五司幸・杵屋五司起久・杵屋五司美幸
 唄 :杵屋六花登・宇野民子・木庭順子・今村梨江子・山口嘉子
 笛 :藤舎仁鳳
小 鼓:上村心寧・花童すず・花童ゆうあ
大 鼓:花童かな
太 鼓:今村孝明

二上り甚句とおてもやん

2023-01-08 19:58:42 | 音楽芸能
 昨日放送された「民謡魂 ふるさとの唄」(NHK-G)は宮城県名取市から。その中で、江戸の昔から今日まで民謡の普及に活躍した「民謡インフルエンサー」についてクイズ形式で紹介するというコーナーがあった。今回は「江戸の流行歌を民謡として全国に広めたのは?」という問題で、解答は「歌舞伎役者」「火消し」「相撲取り」の三択。正解は「相撲取り」なのだが、その具体例として紹介されたのが江戸で流行った「二上り甚句」が、全国を巡業した相撲取りによって各地に
  • 酒田甚句(山形)
  • 名古屋甚句(愛知)
  • 日高川甚句(和歌山)
  • 男なら(山口)
  • おてもやん(熊本)
 などの民謡となって今日に伝わっているというものだった。
 これらの民謡が源流を同じくする系統であることは以前から聞いていたが、相撲取りが唄ったのは「相撲甚句」。花柳界で三味線伴奏で唄われて初めて「二上り甚句」となったわけであり、相撲取りがインフルエンサーになったという説には違和感を感じた。
 それはさておき、昭和39年に発売された赤坂小梅さんの「二上り甚句」と、2010年3月収録のわが熊本の邦楽演奏家たちによる「おてもやん」を聴き比べると民謡としての進化が感じられて面白い。



赤坂小梅さんの「二上り甚句」

熊本の邦楽演奏家たちによる「おてもやん」

熊本城の10年後

2023-01-07 18:18:50 | 熊本
 昨年暮れ、熊本地震からの復旧が続く「熊本城」の復旧計画について、熊本市の大西市長は当初予定の2037年度に工事完了を15年延ばし、2052年度とする方針を示した。熊本城には、宇土櫓など築造当時からその姿をとどめ、国がその歴史的価値を認めた重要文化財13棟と天守閣、本丸御殿大広間など、昭和から平成にかけて復元された再建・復元建造物20棟がある。熊本地震ではその全てが被災。現在、復旧工事が完了しているのは天守閣と長塀だけだ。示された計画案では、2027年度までに十四間櫓、源之進櫓などを、2032年度までに飯田丸五階櫓、宇土櫓、本丸御殿大広間などを復旧するという。今からちょうど10年後、元の姿に戻った宇土櫓や本丸御殿を本当に見られるのだろうか。はたして僕はそれまで生きていられるだろうか。


10年後、宇土櫓は再びこんな姿を見せてくれるだろうか。


本丸御殿や十四間櫓、源之進櫓などは再びこんな姿を見せてくれるだろうか。

2013.4.6 熊本城本丸御殿~春のくまもとお城まつり~より「本丸御殿」
演奏 Viento(吉川万里・竹口美紀)
舞踊 ザ・わらべ
囃子 中村花誠・中村弌誠

氏神様 藤崎八旛宮

2023-01-06 19:47:58 | 歴史
 昨日は藤崎八旛宮へ初詣へ。何といっても藤崎宮はわが家の氏神様。それは46年前に他界した祖母の言い伝え。祖父はさらにその60年も前に他界しているので祖母方、祖父方あるいはその両方とも藤崎宮を氏神と崇めていたのかどうかわからない。祖母の実家は一番被分町(現水道町)にあったので、明治11年に目と鼻の先の井川淵町に遷座してきた藤崎宮を氏神と崇めるのはよくわかる。今でも例大祭の飾馬奉納は鳥居基に次ぎ水道町親和会が二番を務める。
 一方、祖父方はどうだったのだろうか。わが家の発祥の地である黒髪町下立田は明治時代、長岡(細川刑部)家があった泰勝寺跡を中心として10数軒の集落で、一軒の農家を除いてすべてかつて細川家に仕えていた家だったそうである。おそらく旧藩時代の名残が極めて強かったと考えられ、熊本城の鎮守社、あるいは熊本城下の総鎮守であった藤崎宮への尊崇の念は強かったであろう。おそらく祖父家も藤崎宮を氏神と崇めていたことは想像に難くない。
 さて、正月5日ともなればさすがに初詣も一段落。ゆっくりと一年の家族一同の息災を祈ることができた。5日恒例の松囃子は動画におさめたので後日アップしたい。 


初詣も5日ともなればゆっくりと参拝できる


松囃子の前に神職のお祓いを受ける金春流・喜多流の能楽師

小鍛冶のはなし。

2023-01-04 20:04:52 | 伝統芸能
 元日の早朝、Eテレで「新春能狂言 能『小鍛冶 白頭』~喜多流~」が放送された。起きる自信がなかったので録画しておき今日になって見た。「小鍛冶」を全編通して見たのは初めて。前シテ童子、後シテ稲荷明神を香川靖嗣さん、ワキ宗近を演じるのが飯冨雅介さん。実は、僕が能を見始めて10数年になるが、その間、最も多く見ているのがワキ方高安流の飯冨雅介さんだ。この方が登場すると何だか安心感が湧く。物語は

 平安時代の刀匠として名高い三条宗近は帝の霊夢により新たな剣を作ることを命じられるが、しかるべき相槌を打つ者がいないことに困り、氏神の稲荷明神に祈願する。 現れた稲荷明神の化身である狐の力を借り名刀・小狐丸を作り上げる。稲荷明神の化身を白髪・白装束にし、「狐足」という独特の足運びを見せるという小書き(特殊演出)。

 非常にシンプルなお話で分かりやすかった。見た後ふと、夏目漱石の謡曲俳句の中に「小鍛冶」もあったことを思い出した。
 「蝙蝠(かわほり、こうもり)に近し小鍛冶が槌の音」
 「蝙蝠」は夏の季語なので、こうもりが飛んでくるような夏の夕暮れに、鍛冶屋の槌音が響き渡っているという夏の風情を詠んだのだろう。


後シテ稲荷明神の香川靖嗣さんとワキ宗近の飯冨雅介さん

正月三日の風景

2023-01-03 20:09:23 | 熊本
 正月三日目にしてやっと初詣に加藤神社へ出かける。ところが元日はともかく三日としては今まで見たことがないような混みよう。拝殿到達までには小1時間くらい並ばなければいけないような行列に、コロナでもうつされたら大変と、いつでも来られる僕は早々にあきらめ、古札納めだけ済ませ、遠くから拝礼して失礼した。
 その後、錦坂を下ってスーパーで買い物をした後、夏目漱石内坪井旧居の前を歩いて通る。ひっそりと静まり返っているが、今年度中(3月まで)には再公開される予定と聞くので楽しみだ。
 歩いて新坂を上っていると東の彼方に阿蘇中岳の噴煙がきれいに見えた。昨年暮れから火山活動が活発化しているようで、気象台はさらに活動が活発化すれば噴火警戒レベルを「2」に引き上げる可能性があるという。今後の情報に注意が必要だ。


初詣の人出で混雑する加藤神社


夏目漱石内坪井旧居はひっそりと正月を迎える


阿蘇中岳の噴煙を望む

扇屋花扇の逸話

2023-01-02 19:14:08 | 音楽芸能
 昨夜の「ブラタモリ×鶴瓶の家族に乾杯 新春スペシャル2023~江の島でブラブラ乾杯」(NHK G)放送後、このブログへのアクセスが急増した。予想外のことに驚き、アクセス解析を見てみると、どうやら番組内のタモリと鶴瓶のエピソードトークで語られた「扇屋花扇」への反応のようだ。江の島入口の鳥居には寄進者である吉原遊郭の旦那衆の名前が刻まれているが、その中に扇屋宇右衛門の名前を見つけたタモリが扇屋の花魁花扇の逸話を思い出した。11年前に放送されたブラタモリの「江戸の盛り場 ~吉原編~」のロケの時、タモリが現地で仕入れた話を鶴瓶に持ち掛け、7年前に鶴瓶が新作落語「山名屋浦里」として発表した。さらにそれが評判となり、新作歌舞伎「廓噺山名屋浦里」として歌舞伎座で上演されたというもの。
 僕はこれまで「山名屋浦里」の原話である扇屋花扇にまつわる話をブログに5回ほど載せており、それらの記事に今回再びアクセスが集まったというわけだ。


タモリと鶴瓶のつながりを示すエピソードでもある「扇屋花扇」


江の島の鳥居に刻まれた扇屋宇右衛門の名

▼これまでアップした「扇屋花扇」にまつわるブログ記事

新年のご挨拶

2023-01-01 17:46:07 | 
あけましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いいたします

 今年の元日も、3年続けて初詣に行くこともなく、わが家を訪ねてくる人もなく、家族でささやかな正月の膳を囲みました。
 毎年当たり前のように膳の上にすえられた「にらみイワシ」を見ながら、そもそもこれって何だろうと気になり、「熊本県大百科事典」で調べてみました。


【にらみイワシ】(熊本県大百科事典より)
 元日に雑煮を食べるときのお膳に並べられるイワシ。別名の拝みイワシやすえイワシも、イワシが並べられるだけで、食べられないことからきた名称。県北に多く見られる習俗で、まだ家庭によっては続けられている。各家で異なるが、ツルの葉やウラジロを敷いた上に一匹または二匹のイワシをのせて一人分として出される。これは、その食事が晴のものであることを表し、イワシは頭付きの魚の代表とみられる。