徒然なか話

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近江八景随想

2023-11-26 18:15:38 | 日本文化
 先週のNHK「チコちゃんに叱られる!」では「急がば回れの回れってなに?」という疑問を取り上げていた。
 「急がば回れ」という諺は、「武士(もののふ)の矢橋の舟は早くとも急がばまわれ瀬田の長橋」という古歌に始まるとされている。この古歌の作者は諸説あるらしい。現在の草津市にあった矢橋の浦は今では「矢橋帰帆島」という人工島ができて景観が変わってしまっているが、かつてはここの港から琵琶湖対岸の石場へ渡し船が通っており、京を目指す旅人にとって最も近道だった。しかし、琵琶湖は春先の比良おろしなど風の影響を受けやすいという危険性があった。実際、昭和16年に琵琶湖でボート練習中の四高生が突風のため転覆し水死するという事故が発生し、それを悼んで「琵琶湖哀歌」という歌も作られた。そんな危険を冒して琵琶湖を船で渡るより、現在の大津市にある瀬田唐橋を利用する方が安全で確実に京に到着するということを例えた諺が「急がば回れ」だという。
 しかし、ふだんは穏やかな湖面の琵琶湖を船で渡りたいと思う旅人が多かったのか、「瀬田へ廻れば三里の廻り ござれ矢橋の舟に乗り」という俗謡もあるそうだ。
 琵琶湖周辺の美しい景観をいつの頃からか「近江八景」と呼び、その中には「瀬田夕照(せたのせきしょう):瀬田の唐橋(大津市)」や「矢橋帰帆(やばせのきはん):矢橋(草津市)」も含まれている。江戸時代の浮世絵師・歌川廣重は「近江八景」を描いた作品を残している。


歌川廣重 画「近江八景之内 矢橋帰帆」


歌川廣重 画「近江八景之内 瀬田夕照」



 歌舞伎舞踊の代表的な演目である「藤娘」には「近江八景」が掛詞として歌い込まれており、藤の花の精である藤娘が恋しい殿御と逢えないもどかしさを歌う一節の中に「瀬田夕照」と「矢橋帰帆」も含まれている。

男心の憎いのは ほかの女子に神かけて あはづ(粟津)と三井のかね(鐘)ごとも 
堅い誓ひの石山に 身は空蝉の から崎(唐崎)や まつ夜をよそに 比良の雪 
とけて逢瀬の あだ妬ましい ようもの瀬田にわしゃ乗せられて 
文も堅田のかた便り 心矢橋の かこちごと
 
下の映像は現在放送されている朝ドラ「ブギウギ」で話題の芸者タイ子役を演じる藤間紫が舞う「藤娘」

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令和4年7月舞踊公演「花形・名作舞踊鑑賞会」より「藤娘:藤間紫」


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6 コメント

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Unknown (志場)
2023-11-27 11:17:13
この絵は実際の景色よりもっと綺麗な気がしますが浮世絵という限りは版画なんでしょうか?版画では無理なような気がするんですけどね。「東海道五十三次」という作品の中の一つでしょうか?
Re:志場様 (FUSA)
2023-11-27 13:35:56
浮世絵ですから絵師、彫師、摺師によって作成された版画ということでしょうね。
「東海道五十三次」とは別の全8図からなる名所絵だったそうです。
Unknown (志場)
2023-11-27 22:34:02
有難うございます。
そうでしょうね。ただ、あんまり綺麗なものでびっくりした次第です。
Re:志場様 (FUSA)
2023-11-28 11:37:32
志場さんもお相撲、OSK、フィギュアスケート等々、趣味がお広いですね(^^♪
巡礼の旅もまだ続けておられるんですか?
ところで朝ドラ「ブギウギ」はOSKがモデルですので興味がおありでしょうね。
Unknown (志場)
2023-11-29 14:55:25
身体が動けるうちにと思って、いろんなことをやっております。西国三十三所巡礼ではもうちょっとで大先達です。でも熊本が心残りなので何か理由を見付けて再度お邪魔したいと思っています。
Re:志場様 (FUSA)
2023-11-29 15:07:40
来年、花誠先生の還暦記念特別公演が計画されています。日時会場等、詳細が決まりましたらご連絡いたします。ぜひお越しください。

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