ここ数年は新作映画で感動することなど滅多にない。自分の感受性が退化してきたのかな、なんて思ったりしていたが、昨夜BSプレミアムで放送された「ローマの休日」にはやっぱり感動した。もう10数回見ているというのにだ。いつまでも僕らを惹きつけて離さないこの映画の力は何なんだろう。この「ローマの休日」が製作されたのが1953年。2003年には製作後50年で著作権が消滅するという「2003年問題」で話題になった。この1953年というのはハリウッドを始め、世界の映画界が一つのピークを迎えていた時期。この後、50年代後半から60年代にかけて、映画はテレビに娯楽の主役の座を奪われて行く。ちなみに1953年に製作された映画では「ローマの休日」の他に、アカデミー作品賞を獲った「地上より永遠に(ここよりとわに)」を始め、「 第十七捕虜収容所」、「ジュリアス・シーザー」、「聖衣」、「シェーン」など問題作、話題作がずらり並んでいる。日本映画の「東京物語」や「雨月物語」もこの年だ。こうしてみるとその時代の映画界の勢いというものが感じられる。そうした業界全体の勢いと作られた映画の持つ力とはけっして無関係ではないと思うのである。