アルバムに貼られた写真には、いつ撮ったんだか全然記憶にないものもあれば、何十年も経つのに撮った時の情景を鮮明に憶えているものもある。この写真は昭和28年、僕が小学2年生の時に撮った写真だ。当時、父は八代の太田郷小学校に勤めていて、熊本から汽車通勤をしていたが、学校が休みのある日曜日、職員の慰安行事だったのだろう、八代海のイカ釣り船に乗るというので僕がお伴した。父の同僚の若い女の先生方に散々可愛がられ、すっかり良い気分になった。この写真はその途中、小さな無人島に立ち寄って、記念写真を撮ろうということになり、一人の先生と僕が、まるで松竹映画のワンシーンのようにポーズをとっているところだ。釣り上がったイカが吐くスミを、歓声を上げながら身をよじってよけたり、小島の磯でタコをつかみ取りしたり、数々の楽しい想い出とともに、この写真を撮った瞬間を昨日のことのように想い出す。この先生がまだご健在であれば、80歳前後になっておられるはずだ。ところで、先般、太田郷小学校がテレ朝の「30人31脚」で全国優勝した時は、嬉しさとともに懐かしさがこみ上げてきた。
