ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

古代エジプトは永遠だ!

2014-07-31 10:36:47 | 本のレビュー

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「最も輝かしい日、私が経験したうちで最も素晴らしい日、そして将来も経験できるとは決して期待できないような日」--ツタンカーメンの王墓を発掘した時、ハワード・カーターが語った言葉である。

1922年の11月にツタンカーメンが、はるかな古代の眠りからさめて、もう百年近くたっているのかと思うと、そのことに愕然とさえする。 幾度も繰り返し語られた、カーターとカーナボン卿の物語、灼熱の王家の谷、砂漠からの熱風といったイメージは今も鮮烈で、あの発見のドラマから長い歳月がたったなんて信じられない。

シャンポリオンがヒエリグリフを解読してからというもの、エジプト学は確立した研究分野であったが、それでもその全容については多くが推測でしかなかった。なぜなら、王家の谷に葬られていた歴代のファラオたちの墓は皆盗掘されており、埋葬品や黄金など、古代エジプト文化やその高度に発達した文明生活を語る品々は、完全な姿では見出されなかったからである。

そして、ツタンカーメン(もしくは、古代時代のできるだけ正確な呼び名でいえば、トゥク・アンク・アメン)の墓が発見された時、人々は古代エジプトの底知れぬ富、ユニークでいながら心の琴線に触れる美、合理的で豊かな生活に驚嘆した訳なのだが、この少年王の生涯も謎めいていて、想像力をかきたてるのだ。

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個人的には、ツタンカーメンの兄とされるアクエンアテンのファンで、彼の妻でエジプト史上最高の美女と言われるネフェルティティやアマルナ遷都やアテン信仰など、素晴らしく面白い歴史ドラマにはまっていた時期があるのだが、このツタンカーメンの死の謎もミステリアス。

9歳で即位し、19歳という青春の盛りに斃れた若きファラオの頭部には、棍棒で殴られた後のようなものが残っていた。 第18王朝という、古代エジプトが豊かさの絶頂に達し、文化も洗練の極みに達していたこの時代に、王宮の奥深くに何が起こっていたのだろう。美しい庭園に這いよる毒蛇のように、黒い影が忍び寄っていたのかもしれない。  この史上もっとも古い殺人ミステリー(?)を描いたもので、ある昼下がり午睡をとっていたツタンカーメンは突然殴られ、瀕死の状態で殺人者を確かめようとしたが、彼の目がとらえたのは、愛妻アンケセナーメン(アクエンアテンの娘)だった――という筋書きがあったのを思い出す。 

あの有名な肘掛椅子( 黄金でできており、ツタンカーメンとアンケセナーメンという若き国王夫妻が互いに微笑みあっている姿が背もたれに浮き彫りされている、素晴らしく美しい芸術品) を知る者には、この推測は、ドキドキするほどショッキングに感じられてしまう。

上の写真は、ツタンカーメンの発掘ドラマを取り上げた愛蔵版だが、写真家ハリー・バートンによって撮られた王の黄金のマスクや副葬品の数々は、ため息がでるほど美しい。 被写体(?)が素晴らしいのはもちろんなのだが、バートンは墓内に流れる古代の時間、王家の谷にさす灼熱の日差しまでも感じ取れるほどに生き生きと濃密に撮りあげているのだ。 もちろん、白黒写真なのだが、わたしにさえ、墓の玄室に漂う埃や香料の匂い、腕に照りつける日差しが感じ取れるほど。 数千年の時をこえて、優雅に横たわるアヌビス神の気味悪く魅力的な姿も・・・。 天才写真家の腕によって、古代エジプト発見のドラマは永遠に封印された。

 

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第6回カリグラファーズ・ギルド展

2014-07-31 09:39:17 | カリグラフィー+写本装飾

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宅配便で、「カリグラファーズ・ギルド展」の作品集が到着。 出展者全員の作品が紹介されています。(わたしも末席ながら、掲載)

カリグラファーズ・ギルドとは、カリグラフィーを職業としたり、それを目指す人たちで作られる組織。 今、現在全国で300人ちょっとの会員がいるようです。

さて、今第6回目となる作品展が東京で開かれていて、後京都と九州を巡回します。

作品展の日時・場所はーー

<東京>

2014年7月29日(火)~8月3日(日)

11時~18時30分(最終日は13時30分まで)

ギャラリーくぼた

東京都中央区京橋2-7-11

<関西>

9月2日(火)~9月7日(日)

10時~18時(最終日は15時まで)

京都文化博物館ミュージアムギャラリー

京都市中京区三条高倉

<九州>

9月16日(火)~9月21日(日)

11時~19時(最終日は17時まで)

ディーキューブギャラリー

北九州市小倉北区馬借1-3-23

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いわさきちひろさんの夢

2014-07-30 20:05:21 | アート・文化

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いわさきちひろ作品展に行って参りました。 多くの方と同様、わたしもいわさきちひろさんのファンなのです。

会場には、優しくにじむような水彩に彩られた世界が広がっていて、あの有名な愛らしい子供たちの姿が・・・。 才能ある画家は沢山いますが、いわさきちひろさんの絵が、没後40年たった今も、こんなに多くの人を惹きつけるのは、描かれた子供が、可愛いだけでなく、きりっとした意志の強さを感じさせ、何ともいえない気品を漂わせているせいだと思うのです。

わたしの幼年時代にも、いわさきちひろさんが挿絵を描かれた絵本が、幾冊も家にあって、アンデルセンの「赤い靴」は、幻想的な絵と美しく残酷なストーリーが一冊の本の中に見事に溶けあっていて、幼心にも強い印象を抱かされたもの。

あの独特なにじみが、色彩が優しいハーモニーを奏でる「こどもの国」を作りだしていて、いわさきちひろさんが亡くなったのは、わたしが生まれた頃に近いせいか、懐かしさを感じるのです。 その絵を見ていると、ずーっと昔の自分を見ているような気がしたり・・・。注:わたしは、幼児の頃、なかなか可愛らしかったのであります(笑っちゃうわね)。

そして、忘れられないエピソードが一つ。大学生の頃、いわさきちひろ美術館の近くに下宿していたことがあるのです。 静かな住宅街の奥のくぼみにひっそりと存在していた小さな美術館。 白い上品な洋館風の建物は、生前いわさきちひろさんが住んでいた家をそのまま使ったもので、不規則に曲がりくねった廊下や、中庭に茂っていた緑濃い木々などが、独特の魅力的な雰囲気を醸し出していました。  その静けさと雰囲気が好きで、時々訪れていたもの。 喫茶室で、冷たいココアとケーキ(よく覚えていないのですが、チーズケーキかアップルパイだったと思います)を食しながら、昼下がりを過ごしたのも、遠い青春の一ページ。

かなり時がたって、再び「いわさきちひろ美術館」を訪れた時、そこは立派な近代的な建物に。これはこれで素敵で、ティールームで頂いたランチセットも美味しかったのですが、やっぱりいわさきちひろさんの息遣いが感じられるかのような、あの住宅街の中に突然泉のように出現する古い美術館が懐かしい。

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角島と赤い鳥居

2014-07-29 12:12:02 | 旅のこと

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バスの日帰り旅行で、山口県にまで行ってきました。 日本海を臨む突端からのびる橋--ここから角島という小さな島にまで海の上を渡っていくのですが、この煌めくような海の青さ! 不意に、以前訪れた沖縄の離島を思い出してしまいました。

島には、明治の初めに建てられた灯台がぽつんと立っているだけなのですが、そのたもとの売店で、北海道や角島の灯台を描いているという女性の絵葉書が、心に残り、一枚購入。

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そして、この無限に続くかと思われる鳥居--入口には、可愛らしいキツネの飾りがつけられていたりして、守護神はキツネらしいのですが、朱色の鳥居がずら~っと並ぶ様子を見ていると、頭の中で(関係ないのに)「通りゃんせ」とか「かごめの鳥」といった、薄気味悪い童謡が浮かびそうな感じなのであります。 でも、なかなか印象に残るスポット!。 真夜中、キツネたちが、赤い鳥居の間を駆け抜けて行く姿を見ることができそうな気もするのですが、見たいなあ・・・。

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続リボンの話

2014-07-25 17:27:43 | ある日の日記

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夏の暑い中、リボンが到着(なんて、そんな大げさなものではないけれど)。この間のリボンシリーズですが、今回は動物や虫をデザインしたとびきりキュートなもの。真ん中の星たちと一緒に羊なんて、まるで童話か絵本の挿絵から飛び出てきたよう。

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ブタさんに、扇の組み合わせというのが、意表をついて楽しいし、植物の葉影から顔をのぞかせるテントウ虫も可愛い! リボンというより、繊細な刺繍を見ているような気持ちにさえなるのです。

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そして、これ。「お菓子の家」という名前のデザインなのですが、家の前に佇む男の子と女の子の姿といい、「ヘンゼルとグレーテル」の世界そのもの! モミの木を思わせる針葉樹と夜空の月とあいまって、おとぎ話の中に誘い込まれそう。 リボンの中に、小さな物語が隠されているのですね。

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アナと雪の女王

2014-07-24 21:22:40 | 映画のレビュー

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ついに観ることができた「アナと雪の女王」。 頂いたDVDを昼下がりにセットして・・・の鑑賞とあいなったのでありますが、実を言うと、これがわたしの初めてのディズニー映画体験。

ディズニー映画というと、あまりにも有名なのに観たことがないとは・・・・我ながら不思議なのですが、絵や映像の色彩が好みではなかったせいかも。 「白雪姫」も「眠れる森の美女」も「百一匹わんちゃん」も何にも知らない-- ただ「バンビ」の小鹿の絵は何だか好きで、キャラクターグッズを買ったこともあります。

さて、この「アナと雪の女王」--空前のヒットで映像がメディアに流れたこともあり、そのど迫力の画面に釘付け。 はじめてディズニー映画が見たくなったのでありました。 アンデルセンの「雪の女王」に着想を借りたまったく新しいストーリーというのも、面白そう!

どきどきしながら観た本作。最初、アナとその姉ゲルダが画面に現れた時、あれれ、という感じ。アニメなのに、この生々しい人形のようなキャラクターは何? うまく言葉がでないのですが、今までのディズニー映画の絵やジブリアニメのキャラクターがあくまで「絵」として楽しめるのにひきかえ、肌がぬめりと光って、目は大きく輝き、画面から飛び出すような迫力があるのです。これ、3D体験? もちろん、コンピューターで画像を作っているのでしょうけれど、これに似た質感のアニメを、チェコかどこかの国のもので見た記憶があるような・・・。

トナカイもあんまり可愛くないし、オラルという雪でできた雪だるまのキャラクターも、キュートじゃない・・・やっぱり、好みの絵ではないなあ、と思いながらみていたのですが、それでも、主人公のアナとゲルダ(雪の女王)は素敵ですね。 アナもキュートでありながら、目のさめるような美少女でなく、顔や首すじや肩のあたりにそばかすがちらばっているのも、変にリアルで面白い!

アナが歌うシーンなど、かつてのハリウッドのミュージカル映画を思い出したのですが、これってわたしが思っただけ? 若かりし日のオードリー・ヘプバーンが歌い、踊るシーンを、ディズニーも参考にしたのじゃないかしら? そして、圧巻は何といっても、冬山に逃げ出したゲルダが歌いながら、氷の城を築くシーン。黄金のハリケーンのように響く歌声、煌めく氷が次々立ち上がっていく映像の美しさ! ディズニーの映像技術は神業であります!  

氷や、凍てつく世界の凄絶なまでの美しさ・・・ここにファンタジーは美の結晶となったのであります。 アンゼルセンも、草葉の陰で、微笑しているかも。

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久しぶりに

2014-07-21 16:18:36 | カリグラフィー+写本装飾

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久しぶりに、カリグラフィーのカードを作る。 写真は、傾斜台の赤いスゥエードの皮の上に置いたところ。 やっぱり、コンスタントに「書く」ことをしなきゃ駄目だな。

8月には、ワークショップにも行く予定なので、少しでも技術を吸収するようにしよう。

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鎌倉ものがたり

2014-07-18 17:39:28 | 本のレビュー

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疲れている時は、真面目な本など読めません。 特に純文学、歴史といった勉強になるような本は、マジでいけませんわ。

そんな時、おやすみ前や昼下がりのリラックスタイムなどに重宝するのが、「マンガ」であります。 「ちびまるこちゃん」も愛読書ですが、もう一つ面白いのが、この「鎌倉ものがたり」

絵が何ともいえず、ユーモラスで物語も短いストーリーが連作で続くという読みやすい構成。パソコンや今はやりのものも出てくるのに、「鎌倉ものがたり」の中に流れる時間は、昭和40年代かもっと昔のもののよう・・・。 売れないミステリー作家である正和さんと、その若い奥さんである亜希子さんのほのぼのストーリー。これに、鎌倉在住の魔物たちや、日々起こる殺人事件などがからみ、外に類を見ない唯一無二の作品世界に。

こんなに面白いのに、万人向けではないのか、書店にもなかなか置いてあるのを見ませんです。 でも、根強いファンはいるはずで、だからこそ30巻以上もの巻を重ねているのでせう。

今は、子供達も夏休みで、世間は夏ムード全開。 夏といえば、怪談ではありませんか! 怖くはないけれど、ちょっぴりスリリングな「鎌倉ものがたり」を丑みつどき読んで、ゆる~く怪談気分。

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取材

2014-07-18 17:20:45 | アート・文化

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地域情報雑誌「OSERA(オセラ)」の方が、取材に来られる。 中国の伝統的文様をデザインしたMUNIカーペットを離れの床に敷いているのだが、その広告写真に使うのだそう。

それで、ライターの方やカメラマンの方、MUNIのお店の方などが来られたのだけれど、皆さん、一枚の写真を取るために、アングルやら光の当て具合など、すごく吟味されている! 上の写真は、その模様を写させていただいたもの。 仕事って、大変なんだ・・・。

MUNIさんのHPは、www.muni.co.jp/

倉敷にも、古い蔵を使った素晴らしい本店があるのだけれど、東京の南青山、自由が丘にも、お店があります。 中国の文様を使ったカーペットは、エキゾチックで豪奢でありながら、現代の生活にもマッチするモダンさがあるのが、魅力。 本当に良質なものは、時代や文化を超えるのだなあ。

知り合いの方がMUNIさんの自由が丘のお店に行かれた時、どこかで見たような家の写真がアルバムに貼ってあって、それがうちだったというエピソードも・・・。世の中、狭いですね。

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おまけ--今日の花。レモンイエローの色をした小ぶりなヒマワリ。 最近は、向日葵も野性的でなくなったなあ・・・。 でも、このキュートなヒマワリは好きであります。

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43回目のバースディー

2014-07-15 13:38:31 | ある日の日記

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今日は、わたしの誕生日。 それで、ケーキなど買ってきて(クリスマスでさえ、買わない時もあるのに)、ささやかながらティータイム。

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う~ん、数えてみれば、生まれてから43回目もの夏を迎えているなんて・・・。ついこの間、成人したばかりのような気がするのに。

梅雨も終わりかけ、ようやく盛夏らしいムードに。この夏は、ずーっと行ってなかった夏祭りに行くのも、いいかな? 皆さまもよい夏を。

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