毎年末になると、新聞や文芸誌などで、「今年度ベスト10」とか、「私が押すベスト本」とかいったタイトルで、本の批評をしているのを見かける。
そんな訳で、私も、ここで批評の真似事をしてみようか、と思う。
まず、今年度最大の話題作で、社会現象にまでなった又吉直樹の「火花」。お笑い芸人が、初めての小説で、かくも高度な小説を書いたということ、芥川賞までものしたということで、皆、我も我も、と手に取った本―ー私ももちろん、読んだのだけれ、確かに面白かった。 でも、もう一度読みたいとか、又吉氏のファンになるとかいうほどではなかった・・・。
そこはかとない、笑いや哀愁の感じられる小説で、果たして、多くの人が面白いとか、感動するとかいう広範な読者層をつかめる作品とは、思えないのだが、この大ブームはどうしたことだろうか? よく、わからん。
そして、国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子の「鹿の王」。これも、大ベストセラーになったけれど、こちらの方は、あまり面白いと思えなかった。主人公のヴァンが縁あって、親子としての絆を持つ幼い少女、ユナのしゃべり言葉が、わざとらしく、うっとうしいような気もしたし、現代医学の免疫と抗体のメカニズムを、異世界ファンタジーに持ち込んで、論じてみせるのも、違和感があるような・・・。 うまく言えないのだが、欧米が伝統的にお家芸としてきた、異世界ファンタジーの世界に、日本的な情緒を持ち込んだところに、不協和音が感じられる気がする。
作者が、文化人類学を研究してきた学者でもあることは、少数民族の生活様式を詳細に描写してみせる筆力にも十分うかがわれ、これが上橋ファンタジーの根幹でもあるのだろう。
こんな事を言ったら、ひねくれた読者かもしれないのだが、ベストセラーとか、よく売れる本とか読んでも、それほど面白いと思わないことが多い。私って、すごくまっとうな文学趣味をしていると思っていたのだが、世の大多数の人と感覚が違うのだろうか?
それでも、時というふるいにかけられて、長く残ってきた名作というのは、やはり違うのは確か。 いぶし銀のようなきらめきが、ページのそこかしこに感じられ、文体の格調や、読後感の余韻が素晴らしい。
それでも、書店に行くと、派手に売り出されている小説や、「今週のベスト5」などと紹介された本に、つい目が行ってしまうのは、人のさが(?)というものか?
あっ、例外もありまする。古本屋を舞台にしたライトミステリー「栞子さんの探偵手帖」は、とっても、面白いでごわす。あれで、今まで大嫌いだった、古本屋の世界というものが、面白く、魅力的に感じられるようになったのだ。 でも、現実の古本屋へ行ったって、若くて、美人の店主なんてお目にかかれそうもないのだけど。
そんな訳で、私も、ここで批評の真似事をしてみようか、と思う。
まず、今年度最大の話題作で、社会現象にまでなった又吉直樹の「火花」。お笑い芸人が、初めての小説で、かくも高度な小説を書いたということ、芥川賞までものしたということで、皆、我も我も、と手に取った本―ー私ももちろん、読んだのだけれ、確かに面白かった。 でも、もう一度読みたいとか、又吉氏のファンになるとかいうほどではなかった・・・。
そこはかとない、笑いや哀愁の感じられる小説で、果たして、多くの人が面白いとか、感動するとかいう広範な読者層をつかめる作品とは、思えないのだが、この大ブームはどうしたことだろうか? よく、わからん。
そして、国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子の「鹿の王」。これも、大ベストセラーになったけれど、こちらの方は、あまり面白いと思えなかった。主人公のヴァンが縁あって、親子としての絆を持つ幼い少女、ユナのしゃべり言葉が、わざとらしく、うっとうしいような気もしたし、現代医学の免疫と抗体のメカニズムを、異世界ファンタジーに持ち込んで、論じてみせるのも、違和感があるような・・・。 うまく言えないのだが、欧米が伝統的にお家芸としてきた、異世界ファンタジーの世界に、日本的な情緒を持ち込んだところに、不協和音が感じられる気がする。
作者が、文化人類学を研究してきた学者でもあることは、少数民族の生活様式を詳細に描写してみせる筆力にも十分うかがわれ、これが上橋ファンタジーの根幹でもあるのだろう。
こんな事を言ったら、ひねくれた読者かもしれないのだが、ベストセラーとか、よく売れる本とか読んでも、それほど面白いと思わないことが多い。私って、すごくまっとうな文学趣味をしていると思っていたのだが、世の大多数の人と感覚が違うのだろうか?
それでも、時というふるいにかけられて、長く残ってきた名作というのは、やはり違うのは確か。 いぶし銀のようなきらめきが、ページのそこかしこに感じられ、文体の格調や、読後感の余韻が素晴らしい。
それでも、書店に行くと、派手に売り出されている小説や、「今週のベスト5」などと紹介された本に、つい目が行ってしまうのは、人のさが(?)というものか?
あっ、例外もありまする。古本屋を舞台にしたライトミステリー「栞子さんの探偵手帖」は、とっても、面白いでごわす。あれで、今まで大嫌いだった、古本屋の世界というものが、面白く、魅力的に感じられるようになったのだ。 でも、現実の古本屋へ行ったって、若くて、美人の店主なんてお目にかかれそうもないのだけど。