ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ラ・ラ・ランド

2018-01-26 22:20:15 | 映画のレビュー
  
映画「ラ・ラ・ランド」を観ました! 言うまでもなく、アカデミー賞・ゴールデングローブの各賞を総なめにしたヒット作であります。

最初、ミュージカル映画と聞いて、「どうだろう?」と思ってしまった私。というのは、ミュージカル映画は面白いのは面白いのですが(今は昔の「ウェストサイド物語」などとか)、オードリー・ヘプバーンの「マイフェアレディ」みたいにゴージャスな大作でも「これ、ちょっと私好みではないな」と思ってしまう作品も多いのです。

でも、近年のディズニーのアニメも「アナと雪の女王」みたいに、思いっきりミュージカルしてるって感じも強いですしね。

だけど、そんな心配は無用!  やっぱり、とても素敵な映画でした。 主演のエマ・ストーンがとっても魅力的!  童顔に大きな青い瞳、そして体の線が華奢で色白な肌も透き通るような美しさ

そして、映像がとても美しいのです。夜の街、海辺の夕陽、エマ演じるミアが友人たちと住むアパートメントのカラフルな調度品――これはもう、現実の色彩というより、昔のハリウッドのテクニカラーのように、夢の世界の美しさだわ……。  ミアが着る服も、黄色やパステルピンクなど、キャンディカラーのような鮮やかさで、夢のようなムードをかもしだしています。

魔法のような映像の美しさが、何よりも目を射たのですが、これはあくまでも夢を追い続ける男女の恋愛と別れの物語。

女優志望のミアは幾度もオーディションを受け続け、失敗の連続。そんな彼女が出会ったのは、やはり伝統的なジャズを愛し、それを演奏する店を持つ夢を追う青年セブ。彼らは恋に落ちますが、やがて互いに「自分のしたいこと」を優先するあまりに、少し溝ができてきます。そんな時、ミアの目の前に、将来を賭けるべきチャンスが訪れた時二人が下した決断は――というもの。

圧倒的な面白さで、画面から目を離すことができなかったのですが、正直言って、最後のエピローグは嫌いです。「どうして、こうなるの? 何だか納得できない」というのが、本当のところ。
ミアとセブの素敵な恋人たちに待ち構えている結末は、どうだったのか?――というのは、この映画を観てからのお楽しみというわけなのですが、私としては、やはり二人には結ばれて欲しかったですね。

ファッションや画面の美しさで、十分観客を魅了する映画でありますが、ジャズに造詣が深い方なら、一層楽しめるはず!

ポーの一族

2018-01-26 07:30:59 | 本のレビュー
  
ああ、うっとり  これが、ずーっと欲しかったの。
          
背表紙も素敵!  この美しいイラスト……香気漂う、別の世界への扉を開いてくれるに十分な典雅さであります。

実は、長年、丸善の文房具売り場で買い物を続けていたせいで、そのポイント分がこのほど、丸善での買い物券として帰ってきた! だから、自分へのクリスマスプレゼントとして、憧れの萩尾望都の「ポ―の一族」の愛蔵版セットを購入したのです。

この少女漫画には、深~く、長い思い入れがあり、今でも心に残る少女マンガベスト1と言っていいほど。
あれは、はるか昔(もう、そう言っていい年齢になってしまいました)、私が中学一年生だった頃のこと――駅近くに今なら「マンガ喫茶」とでも言えるほど、マンガは棚いっぱいに並べられた喫茶店がありました。
といっても、そこはマンガが壁にずら~りと並んでいることをのぞいては、スパゲッティーやグラタンなどもオーダーできる、ちゃんとした喫茶店だったのですが。

その棚の一角にあった、「ポーの一族」……長い時を生きるバンパネラ(吸血鬼)の少年エドガーとアラン、永遠の少女というべきエドガーの妹メリーベル。彼らの年齢は、13,4歳と当時の私とピタリと重なっていたのですが、そこに繰り広げられる、妖しくも美しい物語、少年の姿のままで生き続けなければならない孤独や悲しみが、切々と心をうったもの。

昔からの少女マンガの、名作としか知らなかったのですが、このほど上記の愛蔵版を購入して、この漫画が昭和47年から連載が始まっていたことを知りました。
ということは――私が生まれた翌年だわ。 そんな昔なのに、物語の面白さ、みずみずしさ、エドガー達の心情のリアルさはいささかも古びていません。
う~ん、これってやっぱり永遠の名作だわ
 

 二回繰り返して読み、十代の心に戻ってうっとり。昔、この漫画を持っていたはずなのに、いつの間にか手元からなくなってしまっていたし……だから、当時のままの単行本の装丁もうれしかったですね。


 そして、何と、この漫画、40年以上もたった現在、新作が出ているのであります。それが、これ。
 実は、書店で見かけても、なかなか買う気にはなれませんでした。というのは、あまりにも素晴らしい「ポーの一族」のことが頭にあったため、そのイメージが壊れてしまうのは怖かったから。 少女マンガ界の伝説と言われる萩尾望都さんだって、さすが年齢を経て、かつての繊細なタッチの絵は消えて、より骨太なものになってしまっていますし。
それに「これ続編? だって、エドガーとアランは最後死んじゃってしまっているはずなのに」と思ったら、舞台は第二次大戦中の英国の田舎。
まだ、十分に彼らが生きていた頃の物語です。
そして、やっぱり面白かった!  ああ、萩尾望都さんって、やっぱり凄いなあ。


とにかく、「ポーの一族」の魅力は、想像力あふれる物語のみならず、人の心にひたひたと沁みこんでくる文章、言い回しの文学的な香り。それが、かくも長く、人々の心を惹きつけるのでしょう。

  
そんな訳で、宝塚まで「ポーの一族」の舞台も見に行ってきましたよ。
でも、マンガの素晴らしさを、舞台でも再現するのは無理だったようで……でも、宝塚の劇場って、歩くだけでも面白い  スミレのジェラートというここのイチオシのスイーツを楽しんできました。

 

ある日の日記

2018-01-17 21:01:51 | ある日の日記
このところ、毎日雑用があり外出する日々。 
外出すると、疲れる。  それで、家に帰るとしばらくぼんやりしているのだが、ふと窓の外に目をやると、屋根の上に茶と黒のぶちの猫が一匹ゆうゆうと歩いている。

いつのころからか、うちの屋根の上に住んでいるらしい猫である。廊下を歩いていたら、中庭にいたり、キッチンで朝食を食べていたら、窓の外の坪庭にある木を突然、彼女(もしくは、彼?)が下りてきてびっくりしたこともある。

裏庭の小屋が開いていて、そこにあるノエルのご飯やおやつの袋が破られていて、猫が食べた形跡もあったり――お腹すいているんだろうなあ。かわいそうに。

といっても、野良猫はどんな感染症を持っているかわからないし、飼うことは無理。

でも、猫が気になる……と思っていたら、今街の映画館で、トルコのイスタンブールで、野良猫たちが近くの住民に愛されて、生き生きと生活しているさまをドキュメンタリーで撮った映画を公開しているのだそう。 ああ、見たいなあ。
以前行った、イスタンブールのエキゾチックで魅力的な街なみをもう一度、スクリーンで見ることができるし。

それにしても、あちらの人は、日本人より野良猫とのつきあいが上手‼ 昔、ローマの遺跡に猫がたくさんいるのにびっくりしたのだが、そばの絵ハガキスタンドでは、可愛らしい猫が遺跡のあちこちで、ポーズ(?)をとっているポストカードが色々売られていたもの。

ウィルスとか感染症の心配さえなかったら、いいのにねと思いつつ、猫を見ています。

ハナムプトラ

2018-01-17 20:47:48 | 映画のレビュー
  以前、話題になった古代エジプトを舞台にしたハリウッド映画。
といっても、この場合、現実のエジプトではなく、時空を超えた摩訶不思議な古代ファンタジーというべき世界が出現している。


時代考証がちょっとね……というわけかどうか知らないのだが、見ごたえのある物語というよりB級の作品といっていい。
1920年代だか、30年代を舞台に、発掘ブームが盛んだった頃、ひょんなことから伝説の古代エジプトの都市ハナムプトラへの鍵を開いた主人公たち。
古代エジプトにいた前世に、ファラオの側室のアクナムスンと恋に落ちたため、呪いと共に葬られた神官――彼が、現生によみがえり、永遠の恋人アクナムスンを再生させようと
する――というストーリー。

思いっきりドラマチックな設定といい、私好みの物語のはずなのだけど、時代考証や美術考証が?な上に、ストーリー作りにも粗さが目立つので、一応続編も見たけれど、どうして人気映画なのかわからないなぁ


  でも、観客に壮大な物語を見せようという心意気、さすがはハリウッド! と思わされた作品。

青い花――瀬戸内寂聴少女小説集

2018-01-12 19:43:10 | 本のレビュー

「青い花」 瀬戸内寂聴 作 小学館


 思いっきり、レトロな装丁に「少女小説」というタイトルが、昔むかしの物語を連想させる本であります。
実は、この本、母の年上の友人の方から、かしていただいたもの。 「寂聴さんから本を送っていただいたのだけど、今ちょっと本が読みづらいから、おたくのお嬢さんに先に読んでもらえたらいいと思って」とおっしゃったというのですが、ありがたく読ませていただくことに。
もちろん、これは寂聴さんが現在書かれたものでなく、ごく若い頃、書かれた初期のもの。

タイトルの「青い花」がとても素晴らしかった!のです。ああ、いにしえの(戦前とか戦後まもなくとか)女学生って、こんなに夢見る乙女然としていたんだなあ。
美しい女の先生への憧れとか、親友の女の子とのちょっと同性愛めいた感情(これって、当時はSとか言っていたらしいのだけれど)……私が小学校のころ、図書館で借りた昔の少女小説も、こんな風に美しいロマンチックな雰囲気だったもの。懐かしいです。


本をかしてくださった方は、寂聴さんとは女子大学時代の親友で、以来ずっと親しい関係が続いているというのですが、よく考えたら今95歳として――80年近くも友情が続いてきたことになるのですね。 これも、凄いなあ……。

後年は、よく知られているように、華やかな文体で、様々な歴史上の女性の伝記小説などを数多く書かれている瀬戸内寂聴さんですが、ここには、まだ原石のみずみずしさが感じられるのであります。私も、ひととき、昔のロマンチックな女学生の世界にワープ!  この頃の時代のムードって、あまりにも変化が速く、人の情感もドライになりつつある現代から見ると、別世界の趣で、憧憬さえ感じてしまいそう