ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ダロウェイ夫人

2019-03-31 10:10:45 | 本のレビュー
 
「ダロウェイ夫人」を読む。言わずと知れた、英国の天才女流作家ヴァージニア・ウルフの代表作である。
実いえば、これを買ったのは1998年と裏にも記してある通り、二十年以上も前。それなのに、その時読みきることができなかったのだ――。

ヴァージニア・ウルフは、とても興味のある作家で、その生涯から何からよく知っているのに、なぜか今まで、その作品を「きちんと全部」読めたことがない。
難解だが、繊細な文章。登場人物の心理描写を細かにする作風、何よりも全盛時代の英国のムードがひしひしと伝わってくる内容といい、100%私の好みなのにもかかわらず……。

うまく言えないけど、思わず踊りだしたくなるようなステキな音楽が♪かかっているのに、どうしてもリズムに合わせて踊れない、というような感じで、作品の中に入っていけなかった。

 それが、この度、楽しんで読むことができたのだ! ずーっと昔、「灯台へ」や「波」を読んだ時も、字面だけ追っていて、中身がさっぱり頭に入っていかなかったのに……。この年になって、初めてウルフが理解できた! そのことが、とってもうれしいのであります。

内容は、自分でまとめるのも面倒くさいので、裏のカバーに書かれた文章をそのままここに。
「ロンドンの6月は、緑のなかにさまざまな花々が咲き乱れる美しい季節だ。そして人々は10時ごろまで暮れない長く美しい一日を思う存分、楽しむ。
ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』は、そのような6月のロンドンを舞台にした、その季節と同じくらい美しい小説と言っていい。
時は1923年6月13日。その日はちょうど、主人公のクラリッサ・ダロウェイが保守党の政治家の夫人として、自宅でパーティを開くことになっている――『ダロウェイ夫人』は、ジョイスの『ユリシーズ』同様、朝に始まり、深夜に終わる一日の物語なのである」
というもの。

あくまで、人物の心理描写や回想が主となっており、ストーリーがどうこうという小説ではない。この本を買った当時、バネッサ・レッドグレーブ主演の同名の映画も公開されていて、それは面白かった。

そして、その頃、映画「めぐりあう時間たち」も公開されていた。
 
これは、ヴァージニア・ウルフの物語と、現代のニューヨークの女性編集者、1950年代のロサンゼルスの主婦という三人の女性の物語を、それぞれ別個に描きながら、最後には一つの大団円となる壮大な物語――少し難しいけれど、とっても面白かった!

        
ウルフをニコール・キッドマンがが、素晴らしい存在感で演じていたし、NYの女性編集者のメリル・ストリープのファッションや雰囲気も見ごたえあり。
天才でありながら、精神の病の発作に生涯苦しめられていたウルフ――伝記映画としては、とても興味のある題材に違いない。

ノエル通信

2019-03-30 11:29:05 | ノエル

ガーデンにいるノエル。自分のテリトリー近くにある木をかじっている図。このコは、子供の頃からずーっと木をかじるのが大好きなのだ(前のノエルもそうだったなあ、としばし遠い目になる私です)。

  ついでにもう一枚。
   
でも、大型犬の世話もなかなか大変です。朝夕の日に二度の散歩以外、夜トイレのために外に連れ出しているのですが、こちらはもうお風呂にも入ってしまい、疲れ切って眠気がしていることも。
それでも、裏庭でノエルが待っていると思うと放っておけない。裏口から出てゆくと、あ~っやっぱり、こっちを見ている! 夜のノエル邸(本当いうと、ただの小屋にデッキがついているだけ)には灯りがともり、その灯に照らされた犬の姿が……。
ようやっと、トイレから帰ってくると、決まって、「タタッ」と小屋の中に走ってゆき、なぜかサッカーボールをくわえて出て来る。そして、デッキの上に転がると、「さあ🎶あんた、ワタシの体を撫でて行きなさい」と無言の強制をするのであります。
こっちは、早く家の中に入りたいんですけど――。仕方なく、木枠の間から手を差し込み、体を撫でてやるのですが、いかにもうれしそうなのに、つい長いこと撫でてやることになってしまうことがしばしば。ヤレヤレ💦

  
ノエルガーデンに、この春からくわわったスナフキンのガーデンライト。太陽エネルギーを集めて、自然に点灯するはずなのに、なぜか夜になっても灯らない。あ~、説明書を見直さなくちゃ……でも、それもちょっと面倒くさいな。

 おまけ。この間行ったカフェで出されたティーカップ。
      
英国のアンティークものだというのですが、好みのものだったので、ついパチリとしてしまいました。

家見学ツアー(?)

2019-03-23 16:12:39 | アート・文化
建築家の方が引率される建築愛好家さん達のツアーが、家を見学に来られました。家を何軒か見回られるらしいです。

    
わっ、思ったよりたくさんの方! 25人くらいおられるよう。
 
玄関前にて。 家の内側から写すと、こんな風に陰影にとんでいるのですね。


    
座敷や、縁側にて、建築家の方の説明を皆さん、熱心に聞いておられました。昨年も、京都からこうしたツアーの方達が家見学に来られたのですが、昔の家とか古民家を改装したものなどに、興味を持って訪れる愛好家の方達もおられるんだ……(世の中、広いね)。

あいにく雨もよいの空でしたが、家にひとときにぎやかな空気が通りすぎてゆきました。

伝言板

2019-03-22 15:55:00 | カリグラフィー+写本装飾
<
まだまだ早いのですが、この間DMを頂いたので、告知しま~す。
   
   「写本装飾の世界へ」展
    
    日時 2019年5月23日(木)~28日(火) 11:00~19:00(最終日は15:00まで)
    場所 芝田町画廊  大阪市北区芝田2-9-19 イノイ第2ビル1F


 中世ヨーロッパの写本は、ヨーロッパの美意識が凝縮された書物の宝石とも呼ぶべきもの。
 その文字と細密画からなる写本を、丁寧に模写したものが中心の展覧会です。
 とても美しい世界ですので、興味のある方は、ぜひ中世へ!(私も、末席ながら参加しま
 す。あまりにも美しい他の方達の作品の中に紛れこむのは、ちょっとあせってしまうのですが…)
 

ローマ帝国の滅亡

2019-03-19 17:47:31 | 映画のレビュー

アメリカ映画「ローマ帝国の滅亡」を観る。 スゴ~ク面白かった!
最初観た時は、少しくたびれ気味もあって、途中でウトウトしてしまったので、ちょっと筋がわからなくなってしまったので、今日の午後もう一度鑑賞することに。
永遠のローマとまで言われた古代ローマがなぜ、いかに滅びたかは今まで散々議論されてきたことだけど、ここでは歴史スペクタル映画らしく、ダイナミックに描いてみせている――たとえ、かなり史実とは違っているシーンがあるにせよ。

五賢帝のフィナーレを飾るマルクス・アウレリウスは病のため、余命いくばくもない身。この皇帝を英国の名優アレック・ギネスが、気品あふれる佇まいで演じているのだが、アウレリウスは自分の死後のローマを才覚のあるリヴィウスに託そうとする。
リヴィウスは、皇帝の娘であるルシア(ソフィア・ローレンがとびっきりの名演!)と愛し合っている。実いえば、アウレリウス帝には息子コモンドゥスがいるのだが、暗愚な息子ではなく、賢明なリヴィウスを後継者に選んだのだった。

ところが、この決断を喜ばない臣下達が、皇帝に毒を盛って暗殺したものだから大変なことに! 結局、出来の悪いコモンドゥスに帝位が回ってきてしまい、そこから大帝国の凋落が始まるというのが、全体のストーリー。

もともと古代ローマが好きなので、建物だとか、ルシアの衣装だとか、ローマの軍団のいでたちだとか、見ているだけで楽しいものがいっぱい💛
愛するリヴィウスとの仲を引き裂かれ、弟コモンドゥス暗殺を謀るルシアにしろ、いかにも、こんな女性は古代ローマにはたくさんいただろうなあ、と思わせられてしまうのだ。
壮大なセットは、本当に眼前に古代ローマが立ち現れたかのようで、これが一番見ごたえあるものかも。

昼下がりのティータイム

2019-03-13 17:36:57 | ある日の日記
 今日突然、届けられたYさんからの手作りケーキのプレゼント――この寒いのに、わざわざ家まで届けてくれるなんて、申し訳ないです。
「今回は、和風です」とのコメントつきだったのだけど、開けてみると、立派なイチゴ🍓ショート! イチゴが綺麗に飾られているだけでなくて、絞られているクリームが側面にも、ズラ~リと並んで、とっても綺麗! すごく、丁寧な手仕事がうかがわれるケーキであります。

「そうだ。今日はお昼もきちんと食べていないことだし、早速このステキなケーキと一緒にお茶にしよう」といそいそと紅茶を淹れて、縁側でティータイム☕
 切り分けた断面を見れば、
こういう感じでした。綺麗に層になったスポンジの間に、抹茶味らしきグリーンの層が見え、赤いイチゴと共に、春の雰囲気を盛り上げています。
フォークで、ぱくっと口に入れたケーキ――スゴーク美味しい!  一緒にティータイムをしていた母も「これ、とっても美味しい。おまけに手がこんでいるわね」とコメント。 手が込んでいるという言葉のついでに、よくのぞきこんでみたらば、グリーンの層の下に、さらに餡のペーストが重ねてある!

ケーキが作れるって、楽しいだろうなあ……しかし、それを人にプレゼントできるレベルになるのは、なかなか(私も、若い頃、友人に自分で作ったシュークリームとかクッキーを配ったことがありますが、今思い出すと、赤面してしまうような味でした)。

美味しいケーキと紅茶二杯で、ここだけ小さな温室みたいな縁側で、まったりと幸せなティータイムを過ごしました。
「それにしても、クリスマスにもノエルケーキを頂いたのに、わるいなあ」と思いをめぐらした私……しかし、次の瞬間「あっ、そうか!」
今日は、3月13日――バレンタインのお返しのホワイトデーだったのですね。

ある男

2019-03-12 20:51:44 | 本のレビュー
 
平野啓一郎の「ある男」を読む。四日間かかって、昨日読了したのだけど、その余韻はまだまだ消えてくれそうにない。
平野啓一郎と言えば華々しいデビュー作、「日蝕」で知られる純文学作家。だから、こんなミステリー調の小説を書くこと自体に驚かされたのだが、プロフィールを見ると、随分多岐にわたる作品を発表している。

幼い子供を病気で失い、夫とも離婚した女性は、一人だけ残った息子を連れて故郷へ戻ってきた。そこで出会った林業伐採の仕事に携わる男性と再婚し、とても幸福な日々が訪れるのだが、ある日、突然夫は、倒木の下敷きになって死んでしまう。
だが、死後の手続きに訪れた夫の兄は、「これは弟ではない」と断言した。何と、夫は他人の名前とその人生を奪い、自分のものとしていたのだ。
では、夫だと思った男は、果たして誰だったのか――?
残された妻は、かつて、自分が前夫と離婚する時、大きな力となってくれた弁護士の城戸に解明を依頼する。
そして、城戸の調査がはじまる。というのが、全体のストーリーなのだが、こうサビをふっただけで、面白そうでしょう?


中年にさしかかりかけた弁護士の城戸は、一見恵まれた境遇に生きている。しかし、幼い息子のいる家庭生活が軋みはじめていることや、在日三世という立場に鬱屈をかかえてさえいる人物でもある。彼が半ば同情心から、かつての依頼者である女性の頼みを引き受け、彼女の夫「X」の捜査に乗り出すというわけ。しかし、自分も彼と同じように、別の人間として生きたいという願望にかられたり、と城戸自身の心も微妙に揺れ動いている(これは、中年という後戻りのできない年齢になってしまったせいもあるだろう)。

やがて、Xは別の人と戸籍を交換したということがわかるのだが、ここからⅹの悲しい生い立ちがわかってゆく――。

これ以上書くとネタバレになりそうなので、端折っておくけれど、物語の構成が息を飲むほど、素晴らしい。ストーリー自体も、よく練られていて面白いのだが、私の見るところ、それ以上に素晴らしいのが、主人公である城戸の人物造形。
知的で、穏やかでありながら、死刑制度や司法の立場に断固とした考えを持つ男。そして、ⅹの立場に心から同情し、その人生に心を添わせてゆく様に、深い人間味を感じさせさえする。
本の帯に「静かな感動を与えてくれる作品」と銘打ってあるが、長い物語を最後までたどりついた私の心に、舞い降りてきたのも、そうとしか言いようのないものだった。
人間が人間に出会う物語。懸命に生きる人間達を照らす、恩寵のような希望。さすが平野啓一郎だなあ、とうならされながら読んだのだけど、この量感は、一流の作家にしか作り出せないものですね。

日々のこと

2019-03-10 19:15:09 | ある日の日記
  
当に、久方ぶりにパスポートを更新に行ってまいりました。 古いものは、とっくに破棄してしまっていたので、新しく申請に行ったのだけれど、写真スタジオで撮った写真が、ひど~い出来ではないか💦 
仕方なく、路上に置いてある写真スタンドで撮ったら、「まあまあ」というところでした。最初から、こっちに行っておけば良かったじゃないか!

一週間かかって、出来上がったパスポートを見ながら、二十歳の時初めて、パスポートを作った時のことをしみじみ思いだしていました。あの時、新宿のモノリスビルに、手続きに行ったんだっけ――。
上の写真は、パスポートを受け取った帰り、寄ったカフェにかかっていた大きな写真パネル。ああ、ずっと昔、私もパリでこのガラスのピラミッドとルーブル宮殿の夜景を見たことあったっけ。コーヒーをすすりながら、つい遠い追憶にふける私……。
 
今日作った夕ご飯は、ビーフストロガノフとポテトサラダ。付け合わせのライスは、バターとパセリのみじん切りを混ぜた簡単バターライスです。
焙じ茶を入れた湯呑が、はっきり言ってヤボとしかいいようがない。


自分に贅沢を許して、Amazonで映画のDVDを二枚購入。 往年のハリウッドの二枚目ロバート・テイラーとエリノア・パーカー共演の「王家の谷」と2009年制作のフィンランドの隠れた名作「ヤコブへの手紙」です。
「王家の谷」などという、クラシックな冒険アドベンチャーがあることなど夢にも知らなかったのですが(何せ、1950年代の映画。古いわ)、考古学者の娘であるエリノアが、エジプトにやって来て、ファラオの墓をめぐる謎に巻き込まれるというストーリー自体、好みのツボにはまっていて、つい買ってしまいました。
ハリウッド黄金期のセット美術も、見るべきものがありそうで……。
「ヤコブへの手紙」の方は、以前一度見たことがあるのですが、かなり重く、シリアスな映画。しかし、人間存在の素晴らしさを歌いあげてくれる物語には、きっと誰もが共感するはず。久しぶりに思い出し、Amazonで検索してみたところ、やはり、あらゆる賞を総なめにし、多くの人に感動を与えた傑作として評価されているようですね。
私も、とても忘れがたい印象を持っているし……見たら、ここに評を書こう。