ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ダンサー セルゲイ・ポルーニン

2017-10-17 22:42:30 | 映画のレビュー
   
楽しみにしていた映画「ダンサー セルゲイ・ポルーニン」を観に行く。 ルドルフ・ヌレエフの再来と呼ばれる若き天才バレエダンサーを描いたドキュメンタリー映画である。
旧ソ連のウクライナに生まれたセルゲイは、幼少の頃から頭角を現し、英国ロイヤルバレエ団に入団した後、史上最年少の19歳で、プリンシパルに選ばれたという逸話の持ち主。

ここで初めて知ったのだけど、男性のダンサーにとって、「野獣のような」というのは、最高のほめ言葉なのだとか。そして、かのニジンスキーと比較されることも。

その言葉を裏付けるように、スクリーン上で繰り広げられるセルゲイの踊りは、もう圧巻という言葉では足らないくらい。ただひたすら美しく、目を釘付けにされてしまう。ああ、こんな風に神の化身のごとく舞うことができる人が本当にいたんだわ……。 
といっても、この映画は、ただ彼の踊るシーンを撮って、その肉声を語らせたというだけのものではなく、有り余る才能ゆえに、バレエ界に嫌気がさし、時に自堕落になって行くさまをはっきり描いている。

あまりにも若くして、バレエ界の頂上に立ってしまったセルゲイは、心身共に消耗してしまい、22歳にしてロイヤルバレエ団を退団してしまう。その後、ロシアへ行き、伝統的バレエを試みたり―ーとさまようことになる。

そして、ハワイでダンスシーンを撮ることによって、ようやくダンサーとしての再生が芽生えるというわけなのだが、ここの白い部屋の白い空間で踊る場面は、あまりにも素晴らしく、その飛翔するがごとき踊りを、永遠に見続けたくなってしまうほど。

昔、「白夜/ホワイトナイツ」で、ミハイル・バリシニコフのチャーミングさにうっとりし、彼がロシアで踊る場面などもくっきり覚えているし、「愛と哀しみのボレロ」でジョルジュ・ドンがボレロを舞う圧巻のシーンも脳裏に焼き付いているのだけど、それでもセルゲイの舞は、さらなる高みに達しているのじゃないかな?


しなやかに、流れるように跳躍する体……この映画を観て思ったのだが、セルゲイは体の線自体もとても綺麗! 一流ダンサーといっても、スタイルの良くない人もいるし。

以前、来日したシルヴィ・ギエムの「ボレロ」の舞台を観て感動したことも思い出し、やっぱり「バレエって、最高の芸術よねえ」と何回生まれ変わっても、バレエダンサーになどなれそうもない、運動神経ゼロの私は思うのであります。
コメント

カズオ・イシグロ 

2017-10-06 11:17:22 | 本のレビュー
昨夜、発表されたノーベル文学賞の受賞者は、カズオ・イシグロ――それを聞いた途端、興奮してしまいました。

昔、「日の名残り」を読んだ時から、いつかこの日が来るであろうことを予感していました。昨年発表された10年ぶりの新作、「忘れられた巨人」も素晴らしかったし。
とりわけ、私が強烈なインパクトを受けたのは、「私を離さないで」。ここに描かれた夢魔のような印象を感じさせる学園と、臓器提供のために育てられる子供たち、という異様な物語世界はいうにおよばず、全編に流れる心をかきみだすような切なさと痛みが、読後も長く尾をひいたもの。

本当に素晴らしい作家です。同じく、候補者にあげられていたカナダのマーガレット・アトウッドも、なのですけど。
カズオ・イシグロをもう一度、読もう。
コメント

西村弥生さんのワークショップ

2017-10-04 21:35:12 | カリグラフィー+写本装飾
   
カリグラファーズ・ギルドのワークショップで大阪まで行ってきました。
何と、この日のテーマは、「紋章」! 私の大好きなヨーロッパの紋章です。

ワークショップと言っても、講義形式で、紋章のルールなどを教えていただいたり、紋章には「この色しか使ってはいけないんだよ~」ということを頭に入れるための塗り絵をしてみたりいたしました。

以前、京都のMGスクールでも、少し習ったのですが、やっぱり格調が高くて、そのくせモダンでさえもある不思議な紋章というデザイン。

そして、このワークショップを受けようと思ったのは、先生があの西村弥生さんだったから。
はじめてお会いできたのですが、若くキュートで、想像以上にステキな方でした(すっかり、ファンになってしまった私)。

    
国際的にも活躍しておられ、フランス国立図書館(パリ)の写本研究室でも、写本を研究しておられるのだとか……。

先生が製作された代表的な紋章とその説明が美しいカリグラフィーで描かれたアコーディン式の大作も、展示されていましたが、これだけ作るには技術はもちろん、根気と時間もかかっただろうなあ、とため息。

美しいものを作るには、高度な技術と時間も必要なのですね。
コメント