ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

江戸川乱歩

2015-07-31 17:45:51 | テレビ番組
昨夜、NHKプレミアムの「妖しい文学館」で江戸川乱歩の特集をしていた。
最愛の作家と言っていい、江戸川乱歩。だから、もちろん観たよ。

作家綾辻行人、高橋源一郎などが乱歩の初期作品「D坂の殺人」、「二銭銅貨」などを取り上げながら、それぞれの乱歩論を語るのだが、自分達を「中年探偵団」と言っているのが笑える。 やっぱり、この人達も「少年探偵団」に熱をあげた子供時代を過ごしてきたんだね。

画面に、東京は池袋、立教大学近くの乱歩邸が出てきて、くだんの中年探偵団がそこの応接間で語り合っているのを見て、「う~ん」と嘆声が。ああ、この乱歩邸! 大学時代、どんなに憧れたことか!
乱歩の小説によく出てくるような、世田谷とか武蔵野(注:昭和初期の話です)の外れの淋しい原っぱにある赤レンガの洋館とは趣が異なっているものの、やはり大正頃の浪漫を感じさせるような古い洋館。明智小五郎や二十面相が、歩き回っていてもおかしくはない雰囲気があるし、暖炉やランプなどの調度品も作品世界をほうふつさせるのである。

そして、邸内にある土蔵。ここには、二万冊にものぼる乱歩の蔵書がおさめられており、英語やドイツ語の原書も大量にあるなど、乱歩の語学力、博識ぶりを物語っている。薄暗く、ひんやりした土蔵内に、幾多の探偵関係の書物が整然と並んでいるのを見ると、うっとりしとし、この世ならぬ夢幻の空間に運び込まれたよう。 事実、乱歩伝説の一つに、真夜中、この土蔵の中で蝋燭の火をともしながら人知れず小説を書いているというものもあったのだ(もちろん、根も葉もない作り話であるけれど)

わたくしの学生時代と言えば、乱歩の御子息の平井隆太郎氏は御存命で、立教大学の教授をされていたのではないかと思う。だから、この洋館や土蔵もまだ現役(?)であったはずで、遠くからでも拝見させて頂きたい、と1990年代の、とある日曜日、池袋駅に降りたったわたくしは、乱歩邸をあちこち探したのですが、見つかりませんでした…・。

その日以来、砂漠の彼方の蜃気楼のように憧れとなった、洋館にTVで再会して感無量。
それにしても、この時代、欧米の探偵小説を渉猟し、深い語学力も持つ一方、変態的・耽美的小説を多く発表し、さらには、子供たちへの贈り物として「少年探偵団」シリーズを書き残した江戸川乱歩とは何者だったのか?

そのあまりのスケールの大きさ、千変万化する表現世界からしむるに、乱歩こそ怪人二十面相だったと思えてならない。

乱歩の世界にふれると、今は遠くなってしまった大学時代の無聊が懐かしい。帰らぬ青春の灯という訳?

動物のお医者さん

2015-07-29 22:50:56 | ノエル
毎日、暑いですね。このままではさしものノエルも弱ってしまうと思って、今日とうとうクーラーのきいた室内で午後を過ごしてもらうことに。 ノエル、大人しく部屋に入り、とても気持ちよさそう。こんなことなら、もっと早く入れてやればよかったですね。

ふと思い立って、門の横の小屋に入り、「動物のお医者さん」のマンガを運んできました。全12巻。この前、読んだのはいつのことだったか…?

高校生の時、少女漫画雑誌「花とゆめ」に連載されていた時から大ファンで、主人公ハムテルとその親友二階堂がH大学獣医学部を舞台に繰り広げる、動物たちの世界に没頭していたものだっけ。描かれる、動物の絵がとっても生き生きして可愛いんだもの!

そして、ハムテルが飼っているシベリアン・ハスキーのチョビ。当時うちにも、シベリアン・ハスキーのなっちゃんがいたせいもあって、すごーく思い入れがありました。 アフリカファンで、アフリカの衣装や化粧もしたりする変人漆原教授のキャラも面白かったし、ページを開くだけで、多感な時期がよみがえってきそうであります。

この夏、冷房のきいた部屋で、ノエル傍らに「動物のお医者さん」をもう一度、読み返すのも楽しみ。チョビに、ハムテルにもう一度会いたい!

やっぱり違います

2015-07-29 22:33:19 | アート・文化
先週礼状をお出ししたばかりの、Sさんから届いたお手紙。
開けてみると、こんな綺麗な絵が! 木に実っているさくらんぼの色の鮮やかなこと、葉っぱの緑のニュアンスの何ともいえない奥ゆかしさ――しみじみ見とれてしまいました。

Sさんが創作の外、絵をよくされているというのは、お聞きしていたのですが、本当に綺麗な絵です。何より、「原画」の持つ色や線の美しさには格別の繊細さがありますね。絵やデザインが得意という方でも、本物をくれることはほとんどなく、印刷ばかりなのを考えると、こんな貴重なものを下さったことに感動してしまいました。
本当にありがとうございます。

テディベアが抱っこしていると、まるでクマの子供が受けとった山からの手紙のように見えるかな?

夏の日のお茶

2015-07-27 11:55:42 | ある日の日記

この間、素敵なお紅茶をいただきました。それも、ティーポット、お茶の葉を入れる匙つきで。

最初、頂いた箱を開けた時、思わず「わ~」と歓声がでてしまったほど。そうなのです、この「マリアージュ・フレール」の紅茶、とても美味しくお値段も、それなりにするもの。「マルコ・ポーロ」の銘柄のお茶を早速淹れてみましたらば、遥か東洋のエキゾチックな花と果物の芳香が立ち上るよう。ひとしずく、ひとしずくが、まるやかで高貴なお茶なのであります。

ああ~、やっぱりスーパーの紙パックの紅茶とは違うなあ。このところ、ずっと珈琲党になってしまっていて、紅茶といえば黄色い紙ラベルとかのやつをポンとカップに入れて、お湯を注ぐだけになってしまってました。紅茶の美味しさを長いこと忘れてたワタシ…。このマリアージュ・フレールだって、二十代の頃は大好きで、「モンターニュドール」(黄金の頂を持つ山、という意味らしいです)、とか「ファラオン」(これは、古代エジプトの王様)などがお気に入りだったっけ。

「マリアージュフレール」はフランスの紅茶ブランドですが、ブランドマークがまた素敵。熱帯地方を思わせるかのような植物や異国の風物が描かれた絵が、19世紀頃のヨーロッパのエキゾキズムを体現するかのようです。

そして、またまた美味しいクッキーの頂きものがあって、今日は至福のティータイムになりそうであります。

鹿の王

2015-07-27 11:37:09 | 本のレビュー
やっとの思いで完読した、上橋菜穂子の「鹿の王」。
読後感は、と言うと……。

結論からいうと、この作家の書くものは好みじゃないかも、ということ。狼に噛まれたことから発病する恐怖の病だなんて、私好みの題材のはずなのに、おどろおどろしい運びになるどころか、ホッサルなどという若造の医師が出てきて、医学論がとうとうと弁じられてゆく。それが、異世界を舞台にしたファンタジーのはずなのに、現代人が知ってる現代医学そのものなのである。免疫と抗体の関係、人間の体は免疫細胞という小さな兵士からなる、ひとつの国であるという事など――ちっとも異世界に旅してる気になれなくてしらけてしまった。

文体も、骨太でスケールが大きいといえばいえるけれど、この作者という人は基本的にすごくまっとうで健康的なのではないだろうか? 「獣の守り人」の本も、闘蛇という、人間をのせて戦う大蛇のような生物がテーマで、「こんな気味の悪いの好き」と思っていたのに、途中からミツバチの生態についてすごくまっとうな説明がえんえんと続いてて、読むのをやめてしまったことも。

でも、この「鹿の王」はダントツのベストセラーで、帯によると「世界レベルの面白さ」なのだそう。主人公のヴァンという戦士のキャラクターには魅力を感じたけれど、もう一人の主人公のホッサルにいたっては、アニメのキャラみたいな浅さを感じたし、高度なレベルのファンタジーとしてよりも、あくまでエンターティンメントレベルの作品ではと思う。

今、世間ではダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」人気が再燃しているというけれど、高校の時読んだ時、「話に無理がある」と少しも面白くなかった覚えが。やっぱり、万人受けする本は、私の好みじゃないようです。

ノエル便り

2015-07-24 20:37:08 | ノエル
毎日、お暑うござんすね。でも、私は日中もノエルハーブガーデンの木蔭にいるわ。たまに、すごく暑い日は部屋にいれてもらうこともあったけど、部屋に閉じこめられる感じがして好きじゃないの。
それに、木の間を風が吹き抜けてゆくから、まあ大丈夫なのよ。

ここまでは、ノエルからのお言葉(?)でしたが、これを見て下さいませ。

ノエルが過ごすケヤキの木の下の地面に空いている穴――まるで地下ふか~くへ誘い込むトンネルみたい。これを作ったのは、何者ぞや、と思っていたのですが、多分、蝉だろうと近頃見当をつけました。いきなり足元の地面にポコッと穴があいて、蝉が姿を現した時のノエルのびっくり顔を見てみたいと思ったのですが、「あれっ」と腰を抜かすことはなさそう。
実は、ノエル、木の幹にとまった蝉をぱくっと食べてしまう、すごいハンター犬なのであります。でも、どう見ても美味しくなさそうなんですけど……。(今まで、飼った犬達にも、こんな悪食のコはいなかったです)

夏の庭

2015-07-21 09:56:17 | ガーデニング
ノエル葡萄小屋にも、葡萄がたわわに実りはじめています。黄昏の光がふりそそぐ温室内は、何だか好きです。夏の植物が旺盛な生命力で繁茂するガーデンは、このよう。草を取る気力なんて、なくなってしまいますね。その一方で、秋に咲くコスモスたちが、着々育ちつつあります。

ノエル通信

2015-07-21 09:44:48 | ノエル
お久しぶりのノエルです。
御覧のように、大好きなサッカーボールを持って、ガーデン中を遊ぶのであります
数日前、ご近所の御一家が小さな女の子や赤ちゃんを連れて、ガーデン外を歩いていて、それに話しかけていると、ケヤキの木につながれていたノエル、怒って吠える! そして、そばにあったホウキをぶんぶんふりまわして「こちらを見ろ、こちらを見ろ」と熱烈アピール。
やっぱり、やきもちを焼くのでしょうか? 自分より、赤ちゃんたちの方がかわゆく、注目を浴びるのが。そして、これは、タライで水浴びするノエル。どう見ても、タライが小さすぎるよ。でも、売っているやつで、これ以上大きいのはないんです。
前のノエルの時は、大きなビニールのプールを買ってやっていましたが、どこいったかわからなくなってしまいました…。
夏の夕暮れ、庭で涼むワンコでありました。

ある日の日記

2015-07-19 21:22:25 | ある日の日記
台風が通りすぎたとたん、カッと夏の日差しが照りつける暑い日になりました。
風が家を揺らしていったせいで、小さな煤みたいなものが落ちていたりするようなので、お座敷や廊下に掃除機をかけてまわります。でも、クーラーのきいてないところを、夏の日に掃除するのは、なかなかしんどいものです。

それが終わって、両親を連れて兄の家に。この間生まれた女の子の顔を見に行くためですが、やっぱり新しい命を見るというのは、いいなあ、としみじみ。 でも、この赤ちゃんから見ると、44歳にもなってしまった私など、祖母に近いかもしれません。

家に帰って、母の友人の方の写真をプリンターで印刷。この方は、93歳になられるのですが、この間、自宅に来られた時など、モーヴというのか、ライラック色というのか、紫の帽子にドレスをあわせて、とてもお美しい! まるで、アガサ・クリスティーの物語に出てくる、昔の老貴婦人のようでありました。 サマーグリーティングのカリグラフィーカードもつけることにし、他にお世話になった方5人分ほども、あわせて作り、短い手紙も中に書きました。 簡単なことでも、手作りって時間がかかるのですね…。終わったら、夏の長い日が金色に変わっていました。すわ、ノエルの散歩に行かねば!

ハーブガーデンに行くと、ノエルはすでに放してもらっていて、ガーデンを走り回っていました。大きなタライで水浴びもさせてもらっているし。 「おいで」と呼ぶと、うれしそうに駆け寄ってきましたが、犬というのは、世話をしてもらうと、本当に幸せそうな表情になるところが、可愛い! 動物園で、飼育されるゾウや馬が、飼育員さんに甘えて、鼻を背中にくっけたり、可愛い鳴き声を出すというのを以前読んだことがありましたが、動物がうれしそうにしているのを見ると、人間は無条件に幸せな気分になるのでは?

日がゆっくりと、西の山に沈む頃、ノエルの散歩に出発いたしました。

岡山児童文学会合宿

2015-07-17 10:36:59 | 児童文学
先週の週末、岡山児童文学会の合宿に行ってきました。
海辺の国民宿舎で、参加者14名の原稿を皆で、批評しあうというもの。一日目は、お昼の1時半から6時半まで。二日目は、朝8時半から12時まで。その後解散というスケジュールでした。夕食の後、部屋に集まって語り合ったり、4人部屋で眠るというのも、まるで学生の合宿みたいで楽しい!

畳敷きの和室で、合評しあうというスタイルも新鮮で、「こんな世界があったのか!」と目からうろこが出た思い。
私の作品は、心配したほど叩かれなかったのですが、皆さん熱心です。会員の方も、20年、30年続けているというベテランの方ばかりで、この5月に入会したばかりの私なんて、ほんとにひょっこ。

でも、ふと思ったのですが、わたし、創作をしたり、この「ノエルのブログ」をやってたりしていても、果たして文章を書くのが好きなんだろうか? 文章を書いたり、物語を紡ぐのは、面白い半面、苦痛でもあります。 脳の深いところも刺激する必要があるのか、結構疲れますし…。

それに比べると、カリグラフィーなどは、昔のヨーロッパから伝えられてきたという「手本」があるし、本当の意味でのオリジナルということはありえません。作品に使うデザインだって、そうです。言い方は悪いのですが、もっと脳の表面的な部分を使って作業するので、文章より「軽い感じで楽しめる」のです。

でも、頭の中に浮かぶアイデアを、文章の形で「目に見えるもの」にしたいという願いは、持っているので、これからもがんばっていこう!