ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

騎士団長殺し

2017-04-26 10:14:15 | 本のレビュー

村上春樹の「騎士団長殺し」を読了。 読み終わったとたん、う~んと思わず感嘆のため息が……。
やはり、スゴイ。この圧倒的なスケールと緻密にはりめぐらされた構成。それでいて、第一級のエンターティメント作品としての「読む者を楽しませる」サービス精神が感じられ、久々に「ハルキ節」を堪能した。

まず題名が刺激的である。もともと音楽にうといので、「騎士団長殺し」と言われても、「それ、何?」というリアクションだったのだけど、これはクラシックファンならすぐわかるようにモーツァルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」の登場人物から取ったもの。

妻に去られた肖像画家が、友人の紹介で彼の父親である、高名な日本画家の山荘に住むことになったことから、現実と幻想が入り混じる物語が幕を広げる。主人公が、山荘の屋根裏から見つけた、一枚の絵――それは「騎士団長殺し」とタイトルはつけられていたものの、絵に描かれているのは飛鳥時代の衣装を身に着けた人物たち。絵のできも素晴らしく、異様な迫力が感じられる。だが、日本画家は、なぜこの絵を封印せねばならなかったのか? 絵に描かれた殺人の場面は何を暗示するのか?

これは、(今は、すっかり年老いて、認知症にかかり老人施設にいる)日本画家が、大戦当時ウィーンにいて、体験したことが基になっていると思われるのだが、それを解くべく手立てはない。そして、夜中に近くの祠の穴から、不思議な鈴の音が鳴り、免色(めんしき)という謎めいた隣人までが、主人公の人生に登場してくる――。

このように、謎が謎を呼び、読者を惹きつけて離さないストーリーなのだが、私が一番興味をひかれたのは、谷をへだてた豪邸に住む、免色という人物。真っ白な髪をなびかせた、この中年男性は、以前IT関係の仕事についていたとかで、富裕な生活をしている。だが、広い屋敷に一人で暮らし、掃除・洗濯などをこなし、孤独に生活している。
彼は、自分の娘ではないかと思われる、十三歳の美少女「まりえ」を双眼鏡で観察するため、わざわざ、この辺鄙な場所の屋敷にやってきたのだが、この人物の造形がとても魅力的。

淡々としているようでいながら、内側にとてつもないブラックホールを抱えている人物――基本的には「善」な人物でありながら、黒い「悪」の部分がいつ噴き出すかわからないマグマのように、免色の中に存在している。
この「悪」は、主人公に「あなたが、祠の穴に入っていたとしてら、僕はそれを見殺しにするかもしれません」と言ったり、自分の屋敷にしのびこんだまりえが隠れる洋服ダンスを、彼女がそこにいると知っていながら、わざと開けないという行動に現れているのだが、このミステリアスさがとても面白い!

何人もの方が指摘していたけれど、この免色という人物は、村上春樹の大の愛読書であるフィッツジェラルドの「華麗なるギャッビー」の主人公、ギャッビーを彷彿とさせる。巨万の富を得ながら、広大な屋敷に孤独に暮らす謎の男。彼の目的は、湖の対岸に住む、かつての恋人を手に入れることだった――このアメリカの名作が、こんな風に変奏されたかというと、文学ファンの心をくすぐること間違いなし。
そして、免色という人物は、ギャッビーと比べても、遜色ない魅力的な人物に造形されているのだ。

ただ、いくつかのエピソードが解決されずに終わっていることが気がかり。「でも、まだわからないことが……」と読み終えた私の目に飛び込んだ来たのは、「完結」ではなく、「第二部終わり」の結び。 ぜひ、第三部がありますように!
コメント (3)

ハッピーバースデー!

2017-04-26 10:04:54 | ある日の日記

姪の2歳の誕生日のお祝いを、少しはやめに開きました。離れのテーブルで、ごはんを食べたり、お茶を飲んで過ごすというわけですが、2歳ともなると……大きくなるもんだ。

以前は、子供というものにあんまり関心がなかったのですが、幼児とか子供というのは、しぐさやしゃべる言葉がとってもピュアで、可愛らしい!のです。
う~ん、大人になるにしたがって、いろんなものに毒されて、段々型にはまった考え方しかできなくなるような気がします。

姪を見ていると、私も遠い日の自分を思い出しで、幸せな気持ちに。

それにしても、小さな服、遊ぶおもちゃ、TVの子供番組――といい、幼児の世界って、とっても楽しそう!
コメント

写本装飾教室にて

2017-04-26 09:51:48 | カリグラフィー+写本装飾

芦屋の写本装飾教室に行く日――朝、近くのバス停で、駅まで行くバスを待っていたら、一台の車がスーッとこちらへ近づいてきました。
「あれ?」と思ったら、ご近所のRさん。「どこまで行くの? あっ、駅なの。じゃあ、そこまで送ってあげる」とおっしゃってくださって、ありがたく駅まで送っていただきました。 Rさんも、近ごろ姿をお見かけしないと思ったら、やはり忙しい日々を送っているよう。
でも、こんな風に、朝から親切にしてもらうと、うれしいなあ~。

今日のレッスンでは、前回の続き。上の写真の通りに彩色をすすめたのでありますが、やっぱり透明水彩の扱いがよくわからないのです。この上に、今度はガッシュで彩色してゆくこととなるのだと思うのですが、うまく仕上がればいいな……。
教室も、新しい方が2名入られ(カリグラフィーをやっている方ではなく、細密画というものがお好きなようなのですが)、活気が出てきました。
コメント (3)

大山崎山荘美術館を訪ねて

2017-04-12 22:11:27 | 旅のこと
  
先週も京都を訪れたのに、昨日もまた行ってきた。

あの大山崎山荘美術館を訪ねるため。 

行ってみて、その素晴らしさにびっくり。本当に感動してしまった!  
大正の頃の実業家、加賀正太郎氏が、別荘として自分で設計したというのだけど、この英国風の山荘は、一度訪れたら、決して忘れられないほど美しい建物なのである。
(専門的にいうなら、チューダー様式のハーフテインバー建築というらしい)
応接間である部分は、白い石造りのサンルーム(その昔は、加賀正太郎氏が、蘭のコレクションの鉢をたくさん並べていたらしい)だし、居間にある大きな暖炉には、後漢時代の装飾に使われた石がはめこまれているといった具合。

おりしも、最晩年に加賀氏と会ったという文豪夏目漱石の書簡が、展示されていたのだけど、その展示室に行くのもサンルームを思わせるガラス張りの通路――そこからは、美しい庭園や池が見え、あまりの美しさにため息がでるほど。この通路――今は懐かしの大正ロマンを感じさせるしつらえなのだが、実業家としての活躍の反面、蘭の栽培に情熱を燃やしていた(なんと、この時代にインドネシアまで赴いて、蘭を採集したりなどしたという)加賀氏が、蘭を栽培する大温室につながっていたのだそう――う~ん、こんな風流な趣味人は今の時代には、見当たらないなあ……。
何やら、古代エジプト発掘に熱中していた英国貴族たちの生活を思い出してしまいそう。

  
二階の階段へつづく吹きぬけの天井の木の嵌めこみ模様、ステンドグラスや窓ガラスの優美さ――どれもこれも本当にため息がでそう。
以前、東京の白金台にある庭園美術館を訪れたことがあるけれど、旧朝香宮邸を使った、このアール・デコの名建築より、だんぜん、素晴らしいと私には感じられましたです。
品格、優雅さ、重厚さ、洗練された美意識……すべてが混然と一体化して、この香り高い建物を作り上げているのだろうな。

二階のカフェで、広々とした庭園を見ながら、ティータイムをしたのだけど、この一日旅行に同行してくれた母が、面白いエピソードを後で教えてくれた。
私達の隣りの席にすわっていた老婦人の二人が、こんな会話をかわしていたのだそう。
「ええなあ。やっぱり、『貧富の差』というものは、なきゃいけないよ。 今みたいに、みんな同じような生活してたら、こんなすごい建物なんかできっこないわ。
 わたしゃ、どっちかというとヒンの方じゃけど、こんな『富』を見るだけでも、楽しいわあ」

この話を聞いて、思わず気持ちがほぐれて笑ってしまった。う~ん、この老婦人、なかなかいい人生観を持って生きてるんだなあ。

残念ながら、アクセスがしにくいため、さほど多くの人に知られていないらしいこの美術館(だからこそ、この気品ある雰囲気が保たれているといえるのだけど)。入り口の「ろうかん洞」という心にくい名前(イタリアのカプリ島の青い洞窟が、昔はこんな名前で呼ばれていたもの)のトンネルをくぐりぬけてからも、小高い丘を登っていかなきゃならないのだけど、日常とは隔絶された別世界が待っていることをお約束します。

興味のある方は、ぜひ!
コメント

美味しいパンと 素敵なワンちゃん

2017-04-08 20:37:26 | ある日の日記
   
昨年末、ローストチキンを教えて頂いたKさんのお宅で、母と共にとびきり美味しいパンをごちそうして頂きました。

パンの種類の名前は忘れてしまったのですが、フランスパンを柔らかく、しっとりさせたような感じで、ごま(セサミ)とチーズを練り込んであります。
お伺いした時、ちょうどオーブンに入れられたのですが、十数分で焼きあがる頃には、とんでもなく香ばしい匂いが……。う~ん、焼きたてのパンぐらい、ステキな香りはそうそうないような気がします。

Kさんはもう25年以上も、パンを作り続けておられ、たくさんの生徒さんたちにも教えてこられたキャリアの持ち主なのでした。「これは、作りはじめて、2時間くらいでできるの。だから、お電話を頂いた後、すぐ取りかかって、間に合ったの」とおっしゃっていましたが、さぞかし、頭の中には、たくさんのパンのレシピが入っているのだろうなあ。
こんな風に、パンが焼けたら、誰からも喜ばれるし、自慢できる特技になるはずですね。うらやましい……。

とっても美味しいパンと紅茶で至福タイムだったのですが、もう一つ素晴らしいことが――。前回伺った時、まだ子犬だったゴールデンレトリバーのジェイク君。今回も生後半年の少年に成長した彼を見ることができたのだけど、「うう~ん」という感嘆詞がもれるほどの上品・優雅な美少年ぶりでありました。お孫さんと、息のあった仲良しコンビです。

体つきも華奢で、ほっそりとし、性格もおとなしく、とてもいい子。  子供の頃から、ため息がでるほど、ずんぐりむっくりで乱暴者だったノエルとは大違いであります。

お土産に頂いたパンを皿に盛ったのが、上の写真というわけですが、このふんわりと上品な茶色は、ジェイク君そっくり。また、会いたいな。
コメント

京都パワースポットめぐり

2017-04-06 03:53:23 | 旅のこと
日帰りバス旅行で、京都へ行ってきた。
「パワースポット巡り」と銘打った、こちらのツアーでは、いくつもの神社へ参るのだけど、以前からずっと行きたかった伏見稲荷や上賀茂神社へ行くというので、早速申し込んだのだ。
朝早く、五時半ごろ目を覚まして、出発。

まずは、伏見稲荷へ――。
    
          
あまりに有名な千本鳥居。実を言うと、この神社はアクセスが不便で、狭苦しい参道を通ってたどり着くのだけど、両側には屋台が並び、ブームを反映してたくさんの観光客がごったがえす有様(欧米人客の姿も、多く見られた)。 千本鳥居の中も、多くの人が行き交っていて、神秘的ムードは損なわれてるかも。

しかし、件のお稲荷さんこと狐のシンボルはあちこちに見られ、とても可愛い!のであります。
   
  何か、くわえてこちらを睥睨している稲荷さんの姿。
        
稲穂を口にくわえている姿も…。
  
朱色の箱に安置されている姿も、いかにも神像という威厳にみちている。

 そして、こちらは平安神宮。来るのは、六~七年ぶりかな。 京都でも指折りの文教ゾーンである岡崎周辺にあるので、近くには美術館、動物園などもあり散策に楽しめるスポット。やはり、境内は広大で、建物に使われている朱色は、日本独特の美しい色。

  
 この奥ゆかしい佇まいは、梨木神社。 小さな神社なのだが、その分、観光荒れしていなくて、気品に満ちた雰囲気が、心に残るのだ。好きな作家の梨木香歩も、多分、この神社からペンネームを取ったのではないか、と深読みする私。
境内には、葉がハートの形をしていることから「愛の木」と呼ばれる木があり、恋愛成就のシンボルともなっているというけれど、何だか、ロマンチックな風情のないひねこびた木でありました。

 
 そして、こちらが最後に行った護王神社。今まで知らなかったのだが、「足腰の守護神」ともいえる神社であるらしく、足や腰に悩みを抱える高齢者や、スポーツ選手が熱心にお参るすることで知られているのだとか……。でも、その足が良くなるという伝説に出てくるイノシシ🐗が、この神社のシンボルなのであります。
だから、こま犬ならぬ、こまイノシシの石像が置かれ、御覧の通り、キュート!
実を言うと、私も亥年の生まれ。こういうと、「いかにもそんな感じ。猪突猛進だもんね」と失礼(?)なことを言われるのですが、その分、この神社には親愛の情がわくのも事実。
亥年生まれの人には、守護神ともなる神社であるらしい(ホント?)

神社めぐり――予想以上に楽しかった! 今、御朱印帳がスゴクはやっているらしいのでありますが、この日、私もはじめて、お札を貼りましたでせう。 神社名が書かれた達筆の毛筆、朱色の印の鮮やかさ……これぞ、日本の美! パラパラ、御朱印帳をめくってみるのも、楽しいよ。
コメント

リハビリに行く

2017-04-06 03:30:25 | 健康・病気
整形外科に予約していたので、行く。

二年近く前から、長く歩いた後など右足が痛むようになり、膝も痛むので、医者にかかったところ「変形性膝関節症」になっていることが判明。

それで、週一回、リハビリに通うことになった訳だけど、リハビリルームにはたくさんの人が……でも、ほとんどは六十代後半~七十代の方かな? という感じで私でさえ一番若いくらいみたい。 膝にレーザーをあてたり、電気治療をしたり――でも、理学療法士の方がやってくれる、足を伸ばしたり、刺激してもらったりするリハビリがとっても気持ちいい!

でも、プラスチックのかごにバッグを入れて、あちらの台からこちらへ移動なんて、やっていると、すっかりシニアになった気分だな。介護施設も兼ねている整形外科では、入所している方の姿もちらほら見える。三十代初めのころ、祖父の身の回りのものを持って、老人ホームへ通院していたことも思い出され、あの頃は「まったく、自分とはかかわりのない世界」という感じだったのに、今では「自分も、いずれこうなるのだろうな」という感慨が……。

いずれ年を取り、体の自由もそうきかなくなるということが、身にしみて感じられる年齢になったのでありましょう――もともと体がスゴーク固いたちで、ヨガもストレッチもしたことがないくらいなのだけど、お風呂上りに、簡単な体操をしなくてはいけないことになりました。 気長に頑張るべし。
コメント

村上春樹の新作

2017-04-02 21:06:42 | 本のレビュー
   
2月に、七年ぶりかに発売された村上春樹の新作「騎士団長殺し」。  でも、他に読んでいる本があったり、図書館から借りてきた(私は、結構、図書館で本を借ります)本が幾冊もあるわ、でいまだに読んでいません。

我が家では、母の方がさっさと読んでしまい、「すごく面白かった! やっぱり村上春樹は最高。文章に魔力があるわ」などと興奮してコメントしていましたが……。

でも、他のことも一段落したようなので、今晩から読みはじめることにいたします。ベッドに横たわって、まぶたが下りてくるまで、好きな作家の本を読む。なんて、幸福な時間!
コメント

赤い服

2017-04-02 21:01:30 | コスメ・ファッション

気がつくと、この冬じゅう黒やグレーの服ばかり着ていました。

落ちついては見えるけれど、もっと元気がもらえるような色の服もたまには、着てみたい!

ということで、赤い春用のジャケットを購入しました。 ウエストのところに、緑の糸でトリミングが施されているのが、アクセントになっています。

これを着たら、「頑張ろう」という活力が湧いてきたらいいな、と思ってます。
コメント

ムスカリが好き

2017-04-02 20:54:11 | ガーデニング
  
 ムスカリがガーデンのあちこちで咲いています。上手に撮れなかったんですけど、まるでお菓子のように可愛らしい形が好きな花。
             
アネモネも……。

 
         
クリスマスローズも、咲いてます。 

    
 これから、春たけなわになればいいな
コメント