ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

いわさきちひろさんの夢

2014-07-30 20:05:21 | アート・文化

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いわさきちひろ作品展に行って参りました。 多くの方と同様、わたしもいわさきちひろさんのファンなのです。

会場には、優しくにじむような水彩に彩られた世界が広がっていて、あの有名な愛らしい子供たちの姿が・・・。 才能ある画家は沢山いますが、いわさきちひろさんの絵が、没後40年たった今も、こんなに多くの人を惹きつけるのは、描かれた子供が、可愛いだけでなく、きりっとした意志の強さを感じさせ、何ともいえない気品を漂わせているせいだと思うのです。

わたしの幼年時代にも、いわさきちひろさんが挿絵を描かれた絵本が、幾冊も家にあって、アンデルセンの「赤い靴」は、幻想的な絵と美しく残酷なストーリーが一冊の本の中に見事に溶けあっていて、幼心にも強い印象を抱かされたもの。

あの独特なにじみが、色彩が優しいハーモニーを奏でる「こどもの国」を作りだしていて、いわさきちひろさんが亡くなったのは、わたしが生まれた頃に近いせいか、懐かしさを感じるのです。 その絵を見ていると、ずーっと昔の自分を見ているような気がしたり・・・。注:わたしは、幼児の頃、なかなか可愛らしかったのであります(笑っちゃうわね)。

そして、忘れられないエピソードが一つ。大学生の頃、いわさきちひろ美術館の近くに下宿していたことがあるのです。 静かな住宅街の奥のくぼみにひっそりと存在していた小さな美術館。 白い上品な洋館風の建物は、生前いわさきちひろさんが住んでいた家をそのまま使ったもので、不規則に曲がりくねった廊下や、中庭に茂っていた緑濃い木々などが、独特の魅力的な雰囲気を醸し出していました。  その静けさと雰囲気が好きで、時々訪れていたもの。 喫茶室で、冷たいココアとケーキ(よく覚えていないのですが、チーズケーキかアップルパイだったと思います)を食しながら、昼下がりを過ごしたのも、遠い青春の一ページ。

かなり時がたって、再び「いわさきちひろ美術館」を訪れた時、そこは立派な近代的な建物に。これはこれで素敵で、ティールームで頂いたランチセットも美味しかったのですが、やっぱりいわさきちひろさんの息遣いが感じられるかのような、あの住宅街の中に突然泉のように出現する古い美術館が懐かしい。