ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ザ・プロファイラー「ビビアン・リー」

2023-10-05 22:06:16 | テレビ番組

月末までに提出しなければならないカリグラフィーの仕事に取りかかっていると、もう夜。🌌

村上春樹は、今年もやはりノーベル文学賞受賞ならず……残念といっても、半ば予想していました。

それでも、世界中でこれだけ読まれている村上春樹にノーベル賞が来ないのは、おかしい、と思ってしまう私です。今回、受賞したノルウェーの劇作家も、高く評価されているそうだけれど、名前を聞いたことのない人。

人気作家には、与えないと決めてしまっているのかな?

そして、9時から見た「ザ・プロファイラー」。今日は、好きな女優の一人であるヴィヴィアン・リーが取り上げられていたので、楽しみに観ました。 

  

インドで生まれ、6歳でイギリスの修道院学校に入れられたことだとか、ローレンス・オリビエとの恋や、「風と共に去りぬ」のスカーレットを射止めた経緯、心の病、悲劇的な死等々の伝記的事実は知っていることばかりだったのですが、岡田准一さんや、立川志らくさんなどコメンテータの発言が面白かったです。

立川さんいわく、「女優としては評価するけど、こういう繊細でわがままな人は、そばにいて欲しくないタイプ」という言葉には、思わず同感。

「思いこみだけで生きている部分が大きい人」という評にも、「う~ん、そうだなあ」とうなずいてしまいます。

ビビアン・リーという女優は、情熱的で繊細で、破滅型という言葉を地でいっているようで、人から見て非常にわかりやすいキャラクターなんですね。そこに、誰にもないビビアン独特の魅力があったのでしょうが……。

彼女は、1967年、53歳で突然の死を迎えますが、岡田さんが「尖って生きていった人だけど、それが尖り切った先に、ほぐれて円熟味を増すまで、もっと彼女の先の人生を見てみたかった」という意味のことを言っていたのには、深くうなずいてしまいました。いいことを言ってるなあ。

翻訳家の鴻巣有希子さんも、名前だけは良く知っていて、訳書を読んだ記憶はないのですが、雰囲気ある外見やコメントの切り口に、ぜひぜひ読んでしまいたくなりました。

しかし、コメンテーターの中で、女優の大地真央さんの言葉や表情が一番表面的で、深みがないように感じてしまったのは、私だけでしょうか? 


村上春樹present白石加代子「雨月物語」

2023-10-01 16:15:35 | アート・文化

先月の28,29日と東京へ行ってきた。いつものように、銀座の「ホテルモントレ・ラ・スール銀座」に泊まる。

今回の目的は、新宿の大隈記念講堂で行われる村上春樹と白石加代子の朗読と対談会に出席するため。夜の19時から行われた朗読会に参加。

   

講堂正面に掲げられた看板が、これ。その名の通り、広い講堂内が、ほぼ満員。

「へ~」と思いながら、指定された座席に着席したのだけれど、今夜朗読されるのは、上田秋成の名作「雨月物語」から選ばれた短編

「吉備津の釜」。

 岡山の吉備津神社に今でもある「吉備津の釜」は吉兆を告げることで有名な釜。良きことを告げる時は激しくなり、凶事と予言する時は、そよとも鳴らないのだという。

この話では、浮気症の男と結婚することになった娘の親が、吉備津の釜で吉兆を占ったところ、釜はまるで鳴らなかった。それでも、結婚をごり押しし、娘は男と結婚するのだが、案の定、男は別の女と心安くなり、妻を欺き、彼女のお金まで奪って、逃げていく。

夫から裏切られた妻は、悪霊となり、夫の愛人を呪い殺し、夫にも魔の手が伸びる――と、こういう話。あまりにもオーソドックな怪異談だが、そこはさすが秋成。言い回しや、文章の古風な様が、ひたひたと肌に染み込むような、怖さを醸し出す――はずだったのだが……。

今回、目の前の舞台の椅子に座って、朗読してくれた白石加代子さんの熱演にもかかわらず、そう怖くない。というか、そう面白くない。それよりも、白石さんの白塗りのメイクや、真っ赤に塗られた唇💋、張り上げる声音や、扇子を手に持って振り回す様子などの方が、よっぽど妖怪じみて、怖かったです(-_-;)。

後で見ると、白石さんは、市川崑監督の横溝正史シリーズの映画の常連なのだそう(「悪魔のてまり歌」とかね)。もともと怪奇が得意な女優さんなんだわ……。納得。

そして、トークのために、舞台に出てきた村上春樹。神宮外苑の開発への反対や、白石さんの「百物語」へコメントしていたが、あまりのトークの面白くなさに、思わず脱力してしまった。高齢のためかもしれないけど、外見にもオーラや雰囲気が感じられないのだ。

実物の村上春樹って、こんな人だったのか……。昔、大江健三郎の講演会に出席した時、大江さんは朗々と喋っていたのに。

村上春樹は書くことは素晴らしいけど、トークの才能はないなあ

そして、これが印象に残っているのだが、私の隣の席に、ちょっと風変わりなおばあさんが座っていた。この人も、昔の卒業生なのかな、と思ったのだが、真っ白なザンバラ髪を後ろで一つにまとめ、布の袋のようなバッグを一つ持っている。

多分、東京の人で、散歩のついで、という感じで、このイベントに来られたのだろう。そのおばあさんは、朗読の最中、おもむろにバッグから、小さなビニールの袋を取り出した。

見ると、その中にはお菓子にふりかけるアラザンのような、丸い銀色の玉がぎっしり入っている。おばあさんは、その玉をいくつも手に取り、口の中に放りこんだ――それを見たとたん、「あっ、仁丹だ!」と心の中で、叫んでしまった私。

 

よく考えると、仁丹なんて、祖父母も身の回りに居た年配の人も、誰も服用していなかった。それにも関わらず、一発でそれが仁丹という代物であることを直感した私。

今では思い出せない、遠い記憶のひとひらのように、仁丹の玉から発せられる、漢方薬臭いような、そのくせ、ハッカの香りのする匂いまで、鼻先に感じられそうだったのだ。

何か、レトロでいいね。

   

上の写真は「松屋銀座」の「カフェ キャンティ」で食べたバジリコのパスタ。 バジルがたっぷり使われた緑!の色合いに感激! 美味しかったです!