ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

物語のティータイム

2017-07-30 18:46:47 | 本のレビュー
    
 「物語のティータイム」(お菓子と暮らしとイギリス児童文学) 北野佐久子 著  岩波書店


 今月の19日に発売されたばかりの新刊。 副題にもあるようにイギリス児童文学の名作とされる作品に出てくるお菓子の紹介と舞台となった土地を旅するエッセイが一緒になったとても贅沢な一冊。

ここ数年、児童文学を「勉強」(ああ、あんまり好きな響きの言葉じゃないなあ)するようになって、ある程度の本を知ったというものの、この本にはまだ読んだことのない作品がいくつも出てくる。
でも、「ライオンと魔女」、「秘密の花園」、「クマのプーさん」「ピーターラビットの絵本」「くまのパディントン」、「時の旅人」「りんご畑のマーティン・ピピン」などなど歴史に残る名作がずらりと並んでいる上、お菓子研究家でもある筆者の作るお菓子のおいしそうなこと!

プラムケーキ、ハニーバナナマフィン、シードケーキ、マーマレード、アップルクランブル、ターキーデイライトなどなど、とっても綺麗な写真とレシピまでついているお菓子は、見ていると生つばがわいてきそうなのだ。

もちろん、作中の舞台も魅力的に紹介されていて、名作を生みだした背景が想像だけでなく、現実のイギリスの大地に根差していることがよくわかった。

イギリスといえば、誰もが認める児童文学の宝庫ともいうべき土地柄。そして、我が身をかえりみても、思うのだけれど、子供の頃読んだ本はその話の面白さもさることながら、登場する食べものやお菓子にも惹きつけられたもの。 そこに登場する食べものは、たとえ身近にあって、よく知っているものとしても、本に描かれると、夢の国に出てくる信じられないほどおいしいものに見えた。
それが、シードケーキとかヨークシャープディングといった、異国的な響きのする知らないものだったら、「ああ、食べてみたいなあ」とどんなに憧れたことでありましょう?


読んで、見て、心の中で旅して、食べて、と幾通りにも楽しめるガイドブックというべきもの。私も久しぶりにバナナブレッド(これって、スゴーク簡単にできるの)くらい作ってみようかな。

ある日の日記

2017-07-24 22:01:53 | ある日の日記
毎日、暑い。外出すると、溶けてしまいそうなので用事以外は家で過ごしてます。

ノエルも、書斎で避暑生活――でも、数日前突然、血尿が出たのでびっくりして獣医に連れていくと「膀胱炎」であることが判明。ぶっとい注射をして(でも、てんで平気)抗生物質を6日分もらって帰宅。でも、とっても元気だし、血尿もすぐ出なくなりましたです。


私は自分の部屋で「アガサ・クリスティを訪ねる旅」という本を読んだり、「名探偵コナン」のマンガの最新刊を読んだりして、クーラー生活。
近所のBさんが、横浜の娘さんのところへ行ってきた、と言って「崎陽軒シウマイ」を下さったのですが、お元気だなあ……。確か、80歳も大分過ぎておられるのに。

夏は、旅に出るスタミナはないなあ

怪物はささやく

2017-07-24 21:37:39 | 映画のレビュー

封切りされたばかりの「怪物はささやく」を観に行く。
ダークファンタジーというふれこみで、英国の児童文学の映画化なのだそうだけど、誰の原作なんだろう? きちんと調べて観にいけばよかった。

だが、この映画とーっても、面白い! 2時間の上映時間の間、一度も退屈することなく惹きつけられて観てしまうのだ。ほんわかとしたストーリーもいいけれど、本来こうした残酷さを感じさせる物語の方が、人の心に深く食い入ってくるのではないかと思う。

さて、ストーリー。同級生からもいじめの対象になっている、空想にふけりがちの孤独な少年、コナー。彼は、難病を抱えた母親と二人で暮らしている。コナーは夜ごと悪夢にうなされていたのだが、決まって夜中の12時7分にあらわれる怪物は彼にこう告げる「これから三つの物語を話す。それが終わったら、お前が代わりに真実の物語を話す番だ」と。

コナー演じる子役ルイス・マクドーガルの繊細で神経質な表情が、怪物を呼び寄せてしまう孤独な心情をリアイリティたっぷりに感じさせるし、怪物がとっても独創的!
コナーと母親が住む教会の裏庭にそびえる大木が化身したような、樹木の悪霊みたいなのである。


怪物が語って聞かせる物語は、決して口当たりのいいおとぎ話などではない。善が実は悪であり、悪と見えたのが、罪を犯してなどいない――という裏返しのストーリー。これにコナーはとまどい、反発するのだが、こうしたビターな結末こそ、「世の真実だ」と説き聞かせる怪物。ここで語られる3つの物語は、幻想的で美しいアニメ―ションで表現され、素晴らしく美しい。

少年が、自分の魂と対話を重ねてゆくかたわら、最愛の母は「死」へとおもむこうとしている。母の死を食い止めたい少年。だが、彼が語りたがらない第4の物語こそ、「母の死」をめぐる真実であったのだ――。

濃密な時間を過ごせた映画。「ハリーポッター」よりも、こういう方が好みである。

アトリエ・ドゥ・ノエルのクリスマス

2017-07-19 13:11:47 | ガーデニング
ちょっと、パソコンに保存している写真をいじっていたら、こんな懐かしいものが……。
2013年のクリスマスの日付があるから、もう数年も前のものなのだが、こんなことをして遊んでいたのか。ああ、あの頃ままだ若かった……(思わず、遠くを見る目)。
               

   


                
 今は、猛暑の夏だけど、こんな冬の夜のイルミネーションを見てみるのも楽しいな。  あっ、写真の舞台となったロケーションはノエル葡萄小屋であります。
 窓のところに、それにちなんで葡萄の房の形をした明かり💡がともっているのがご愛敬。家族が友人からもらったものらしい。


   
 おまけに、その夜、自分の小屋のベランダにいたノエルの写真を。今より、可愛いかも?

インドへの道

2017-07-18 22:47:11 | 映画のレビュー

映画のDVDを買うことはほとんどないのだが、デヴィッド・リーン監督の「インドへの道」はこの度Amazonで購入した。(一緒に買ったのは、これも中学三年生の時観て、強く心に残った「ホワイトナイツ(白夜)」。バレエダンサー、ミハイル・バリシニコフ主演のバレエ映画である)

この「インドへの道」――中二の時、初めて観て以来、深く深く、心に残っている作品。リーン監督独特の壮大なスケールと、格調がありながら息もつかさぬ面白さを兼ね備えた作品である。「アラビアのロレンス」、「ドクトルジバゴ」、「ライアンの娘」……好きなリーン作品は、いくつもあるけれど、これが一番思い出深い。

植民地時代のインドを舞台に、英国人とインド人のアイデンティティと文化の相克を描いているのだが、映像の美しさは、優雅な英国文化と灼熱のインドをくっきり際立たせる。互いに分かり合えないものとして。
と、難しく書いたけれど、このドラマ、たいがいのリーン作品がそうであるようにメロドラマ的な要素を多く持ち、その人間臭い葛藤がとても面白いのである。私は、E・M・フォースターの原作も読んだけれど、やっぱり映画版の方が面白かった。

 英国娘アデラ・ケステッドは、未来の義母(これを、英国の名女優、ペギー・アシュクロフトが演じている)モア夫人に連れられて、はるばる海を渡ってインドにやってきた。この地で判事として働く婚約者ロニーに会うため。(このロニーをすらりとした鹿のような美青年ナイジェル・ヘイバースが演じていて、久方ぶりに彼に会えるのもうれしかった)
内省的で、うちに激しいものを秘めたアデラ。彼女は、与えられた若妻の役割に落ちつくかと見えたが、ある日自転車で遠乗りした時、ジャングルの合い間に朽ちかけた遺跡を見てしまう。
それは、古代インド人たちの性の交歓を描いた彫像で、それはアデラの心にカルチャーショックを与える。現地で知り合いになった英国人の教授フィールディングやインド人の哲学者など個性的な人々との出会いの中で、知り合った親英派のインド人医師アジズ。彼の案内で、アデラとモア夫人は、景勝地マラバー洞窟を訪ねることとなった。

ふいに、他の人々と離れ、一つの洞窟に入っていったアデラ。彼女の姿が見えないのを心配したアジズが、洞窟の中をのぞきこんでいった時、暗闇の中から現れたのは半狂乱になったアデラだった。
彼女は、植物のいばらで服が裂け、傷つくのもかまわず斜面を転げ落ち、逃げてゆく――そして、彼女が語ったのが、「自分はアジズに乱暴された」という衝撃的な言葉。
果たして、この事件は本当にあったことなのか? 慣れぬ異国で心のバランスを崩しかけた若い女性の妄想なのか――アデラの告発をめぐって、在インドのイギリス社会と、英国人への憎しみに燃えるインド人の対立は深まってゆく。


おおまかなストーリーは以上のようなものだが、何といっても、アデラ演じる女優ジュディ・デイビスが出色! 東洋の異国の風土の中で、自らの性的幻想のために、周囲を振り回し、自らも破滅してしまう女性の姿を、実に生き生きと浮かびがらせているのだ。
もちろん、アデラのような女性がいたら、迷惑なばかりだし、アジズや婚約者ロニーなど周囲の人々を深く傷つけてしまうのは、間違いない。
しかし、この映画が深い余韻を残すのは、エピソードの何とも言えぬ深みのせいだ。
英国側とインド側を巻き込んだ裁判で、アデラは自分の過ちを認める。だが、アジズの心は容易に修復されず、慕っていたフィールディングにも告げることなく身を隠してしまう。そうして、時をへた後、フィールディングと再会したアジズは、ようやく「英国的なるもの」を許す気持ちになり、アデラに手紙を書くこととなった。
「フィールデング夫妻に会いました……しかし、二度と彼らと会うことはないでしょう。あなたが、あの時、どれだけ勇気が必要だったかやっとわかりました」
あの時――裁判で、自分の過ちを認め、英国人たちの冷たい軽蔑を受けることを選んだアデラ。私は、今もはっきり覚えているのだが、裁判所の椅子に座った彼女が、上を向いた時天窓に雨が降り落ち、窓の汚れを洗い流していくシーンがあった。あの時こそ、アデラの心のうちが浄化された瞬間、として深い印象に残ったもの。
 そして、ラスト――アジズの手紙を受けとり、読むアデラ。彼女が、さっと窓を開けると、そこにも雨が降っていて、彼女の表情をゆっくり覆い隠していく。人の人生や和解、というものをふかく感じさせてくれた、心に残る名シーン!

松ぼっくり2017合宿

2017-07-18 18:53:48 | 児童文学
所属している児童文学サークル「松ぼっくり」の毎年夏恒例の合宿。

今年は、「サンロード吉備路」で開かれました。14名の参加。車で、くねるような山道を走ってゆくと、五重塔や古墳が見える風光明媚な平野が開けます。古代吉備の国があったと伝えられ、「こうもり塚」とかいろいろ興味深い遺跡が点在し、とっても魅力あるロケーション!

午後1時に集合して、間10分の休みを挟んで、5時間にわたる合評会……決してほめ言葉など出ない、かなり辛口の批評が会員の口から次々出るのですが、これこそが醍醐味なのであります。翌朝も朝の8時半からお昼まで、上記のような合評があるわけですが、とっても充実感があって面白い!

国民宿舎とはいっても、施設も比較的新しく、夜も会食しながら、長くおしゃべり。年上の方が多いので、「こういう人生経験を経たからこそ、この作品が生まれたのだな」と思いを巡らせるのも、交流会あってのものでせう。

朝ごはんを食べた後、宿舎の上で飼育されているタンチョウヅル(丹頂鶴)を見に行ったのですが、世界でも約三千羽しかいない、絶滅危惧種なのだとか。頭の上に真っ赤なベレー帽のような赤い羽毛があり、お尻のところが黒く、とても美しい鳥です。 今年5月の生まれたばかり、というヒナも二羽いて、とても可愛かったなあ。