ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

グラディエーター

2014-03-30 18:00:53 | 映画のレビュー
   

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古代ローマを舞台としたスペクタルロマン。老皇帝アウレリウスから、次の皇帝に、と名指しを受けた将軍マキシマス。 だが、父皇帝からうとまれ、帝位を拒否されたことにショックを受けるコモドゥスによって、妻子を殺され、グラディエーター(剣闘士)になるという激変の運命に。

古代ローマは、かくあったのかという壮大なスケールの物語はもちろん、衣装、時代風俗も見ごたえあり。 マキシマスを演じるケン・ラッセルの演技が人間臭くて、感情移入させる効果も。

でも、古代人って残酷だったんだなあ・・・剣闘士というものがあったことは知っていたけれど、戦争とかで戦士が戦うのではなく、競技として人間同士が戦い、それを市民がリクリエーションとして楽しみながら観戦するなんて。おまけに、戦う場所が、ローマの観光名所コロセウム(私も行きました)--舞台装置のように、地下からライオンがコロセウムに登場してきたりするのだ。 マキシマスは、グラディーエーターとしても、頭角を現し、ローマ市民の人気を博し、最後は皇帝となったコモドゥスと戦うことに・・・史実などではないとしても、エンターティメントとしての迫力は満点。

そして、個人的に面白かったのは、皇帝コモドゥスの屈折度--愛され、尊敬もされないことに苦悩し、実の姉ルキアに近視相姦的な愛情を抱いている(これは、実在した三代皇帝カリギュラとその姉、ドルシラの関係を思わせる)のだ。 この姉弟の、愛と裏切りの人間ドラマも凄く面白い! 近頃では珍しい、古代ドラマの傑作(ブラッド・ピット主演の「トロイ」も面白かったけれど)。


伝言版

2014-03-29 19:37:34 | アート・文化

  5月1日~3日に開く予定のギャラリー

出展作家

創作人形・・・・・・・神崎節子

ステンドグラス(ランプ)・・・・・・・三谷恭子

組み木の玩具・置き物・・・・・・仲達浩育 

他に、手作りのお菓子(Y`s  tableの小野靖子さんのもの)も販売する予定です。


鎌倉の休日2

2014-03-28 13:16:11 | 旅のこと

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鶴岡八幡宮近くの川喜多映画記念館前にて。 戦後間もなくから、洋画を沢山輸入し、日本映画も海外に広く紹介するなど、尽力された文化人川喜多夫妻の業績を記念に、建てられたものですが、ご覧の通り、平屋の木造の上品な建物です。中に入ってみると、一転してモダンな空間には、映写室や配給された当時の洋画のポスターが。 ルキノ・ヴィスコンティのファンなので、「ルードヴィヒ」や「家族の肖像」のポスターがあったのは、凄くうれしい。イタリア映画「木靴の樹」や「ドイツ 青ざめた母」などタイトルだけ知っていて、見たいと昔から思っていた映画のポスターも・・・。 映画を愛し、映像文化の普及に力を注いだ人々がいたのだなあ、としばし感慨にふけっていたのだけど、この館内には私一人。外の小町通りには、人があふれかえっているのに・・・。 でも、外には、鎌倉らしい風情ある日本庭園が広がり、木のざわめきも聞こえてきそう。

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こちらは、北鎌倉の円覚寺。名高い山門であります。夏目漱石が「門」の小説にも登場させ、若き日には、座禅にも通っていたという寺。 境内の中の思いもかけぬ広大さにもびっくりしましたが、文豪がノイローゼに苦しみながら、通っていたというエピソードもうなずける風格・・・よし、もう一度「門」を読もう。



鎌倉の休日

2014-03-28 09:47:21 | 旅のこと

鎌倉へ、旅行に行ってきました。 学生時代は、何度も行ったけれど、二十年ぶりの再訪。

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泊まった場所は、大正ロマン漂うリーズナブルなホテル。素泊まりなのですが、館内には、このように昔の情緒が感じられる、上げ下げ窓や山小屋を思わせる木造りのスペースも。

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その昔、大正の終わり、かの芥川龍之介と女流作家岡本かの子が、このホテルで顔を合わせたのだそう。 なかなか由緒深き場所なのであります。

あっ、文学的なことを言えば、小町通りの喫茶店、「イワタコーヒー」。

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ここでは、こんなスペシャルなホットケーキを出すのです。二十分以上もかけて、焼かれるホットケーキは、かりっと表面が焼けて、ボリュームのある美味しさ! こんなおいしいホットケーキが食べれるなんて!(コーヒーも、香ばしく、「ほんもの」の味がします) 絵本「ぐりとぐら「に出てくるホットケーキも、こんな味だったのでは? 

かの川端康成も、この喫茶店の常連だったそう。鶴のように痩せた、神秘的な雰囲気のする文豪がホットケーキを食べている姿を想像すると、何だかミスマッチで面白いな。

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そして、こちらは江ノ電乗り場で見た看板。この「鎌倉ものがたり」は、愛する漫画であります。ユーモラスな絵と、ほのぼのとした物語が魅力で、長年読み続けています。 ここに登場する鎌倉は現実ではないけれど、ひょいっと裏通りに滑り込んだら、こんな奇想天外なもう一つの鎌倉が、本当にあるかもしれないと思わせてくれるのです。

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あまり言われていない(?)ことですが、鎌倉はご飯がすごーく美味しい! 夜、小町通りの綺麗なうどん屋で頂いた、釜うどんと野菜の天婦羅。 天かすや小口ねぎ、しょうがのすりおろしなどが、一つの盆に丁寧に盛られ、それをつゆに入れながら、うどんを食します。そして、この天婦羅が絶品なのであります。鎌倉野菜って、よく言われるけれど、こんなにとろけるような味わいで、甘みが感じられるなんて・・・。 翌日、食べたしらすご飯というセットでも、春から解禁になるしらすの魚をごはんの上にふんわり盛ったのが、えも言われず美味しかったのが幸せでした。 鎌倉って、歴史、海と山の自然にあわせて、グルメの町でもあったのですね。

大きな一枚硝子窓ごしに、暮れなずむ通りを見やりながら、おいしい時間を過ごしました。


本のしおり

2014-03-24 13:48:27 | カリグラフィー+写本装飾

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こないだ作った栞(しおり)です。パピルスが残っているので、それを名刺の大きさに切って、縁は古代エジプト風の飾りにし、「MY BOOK」と書かれた下には、ヒエログリフで私の名前「MAYUKO」と描きました。

本の栞は幾つも持っているのですが、いつも2、3冊同時進行で読んでいる上、気づくと名刺をページにはさんでいることが多いので、この大きさで作ってみたんですが・・・でも、何だかカリグラフィーらしくない?


花便り

2014-03-24 09:25:25 | ガーデニング

昨日の夕方、ノエルの散歩をしていた時、川のたもとに、ほんのり桃色がさしこむ白い花が咲き乱れる樹があって、「桜かしら? いや違う」とのぞきこんで、桃の花だと判明しました。桜のように、研ぎ澄まされた儚げな美しさはないけれど、丸みをおびたふんわりした花弁・・・春の便りが舞い込んできたような嬉しさでした。  桃といえば、あの鼻孔をくすぐる香りとともに、赤ちゃんの頬を思わせる色が思い出されますが、白い花にも、あの桃色はしのばせられているのですね。

今朝は、上のノエルハーブガーデンで、足元の地面にカモミールの赤ちゃんたちがいっぱい顔を出しているのを見て、ほっこりした気分に。母が毎日、草取りをしているので、小さなカモミールの繊細な緑がよく見えます。これから、ぐんぐん大きくなって、カモミールの褥が広がるんですね! なんだか嬉しい。

ずっと昔、裏庭には、チューリップが咲いていて、柔らかな土の上に咲く花に触れてみるのが大好きでした。 チューリップは赤いのに、その中を覗き込んでみると下の部分は黄色くて、おしべが真っ黒なのが不思議で、わくわくしたもの。  春こそ、花から便りが次々届く季節。わたしも散歩に出かけて、花たちの便りを受け取ってこようと思います。


「住む」

2014-03-22 21:04:59 | アート・文化

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季刊雑誌「住む」(発行所 泰文館 1200円)が発売されました。「アトリエ・ドゥ・ノエル」も掲載されています。8ページにわたって、離れと温室、母屋の一部の写真と説明文があり、その丁寧な編集ぶりは、「わあ」と歓声をあげてしまいそうなほど。

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取材に来られた時、まだ冬のまっただなかでしたが、一日がかりで何枚も何枚も写真を撮られ、プロの方ってこうなんだ、とこちらにも熱意が伝わるお仕事ぶりでした。 書かれた文章も、ハートが感じられる細やかさで、「家」というものは、愛情をかけて育てていくものだなあ、ということを実感させられました。

こんなにブロマイド(?)を撮られ、賛美の言葉をもらったりして、春の光の中、家も晴れがましそうな顔をしているよう。


夕暮れの水仙

2014-03-19 18:31:38 | ガーデニング

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春の足音がようやくしはじめて、ガーデンにも少しずつ花が咲き始めました。 上の写真は、夕刻のガーデンに咲く水仙。 珍しい花ではありませんが、この匂い立つようなレモンイエローの色、とても綺麗です。

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冬が終わり、春の訪れが感じられはじめる頃の、夕暮れの色--とても好きです。白壁の色さえ、ほんのり紅に染まっているかのような、ひととき。

ムスカリの紫のキャンディーのような花弁や、クリスマスローズの群生も咲き始め、これからノエルハーブガーデンは、生き返ります。

そして、おまけ。ベンチに立ちはだかるノエル。庭を駆け回り、花たちを痛めつけないでね。

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金泥とアカンサス

2014-03-16 18:33:09 | カリグラフィー+写本装飾

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この小皿に入っているのが、金泥。 金色のガッシュをメーカーごとの微妙な違いを見るため、作った「色の見本帳」の一番上に、金泥も仲間入り。 塗った金泥を、左のメノウ棒(バーニッシャー)で磨いて、輝きを出すのであります。 でも、金箔に比べて、ずいぶんシブイというか華やかさはないね。

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そして、こちらはアカンサスを色々、彩色してみたもの。アカンサスというのは、古代ギリシアの昔から、柱頭や神殿のレリーフに使われた、ヨーロッパではなじみ深い植物。 カリグラフィーの世界でも、中世の写本などに頻繁に使われている。 アザミ科なのだそうで、確かに写真を見る限り、薊に似てる。(ノエルハーブガーデンの薊はお元気かしら? 今年も会える?)

そして、アカンサスにはなかなか素敵な逸話が、ギリシア神話として伝わっている。 若くして死んでしまった娘の墓の上に、その乳母が供物として籠を置いたそう。すると、下から生え出たアカンサスが、籠を上へ上へ押し上げるように成長したそう。 アカンサスの葉の上に、まるで船の中にそっと置かれるように、籠があるのを見て、感動した建築家が、神殿にモチィーフとして用いたそうな。

ギリシア神話って、惚れっぽくて自分勝手な神様たちが、人間の娘を追っかけたり、何かに変身させるとかいう話ばっかりかと思ってたけど、こんなしんみりしたエピソードもあるのね。


色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年

2014-03-15 21:10:25 | 本のレビュー

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昨年の春、社会現象にまでなった話題作である。 書店という書店からすぐ消えてしまうといわれたほど飛ぶように売れた小説。 でも、私が手にとったのはつい先週。皆が読む時に、駆けつけて読むというのが格好悪い気もしたし。凝りすぎた、長たらしい題名も気に入らなかったのかもしれない。

十代の頃、熱狂的に村上春樹が好きだったのだが、彼が世界的人気作家になり、日本を代表するスーパースターになってからというもの、その作品を読まなくなってしまった。でも、久々に読んでみて、思わず愕然。

ストーリーも抜群に面白いのだが、その文章の素晴らしさを何と言えばよいのだろう? 世界的なピアニストが超絶的技巧を駆使した、華麗な演奏を披露するように、言葉の一つ一つが煌めき、読む者の心を揺り動かすような力を備えているのだ。 近年の村上春樹フィーバーをちょっと批判的な目で見ていたのだが、この量感あふれ、類稀な輝きを放つ小説世界を読むと、他の第一線にいる作家たちが色あせて見える。

世界の読者をとりこにしたのも、むべなるかな。ハラショー! 今年こそ、村上春樹がノーベル文学賞を取りますように!