ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

片付かない・・・

2016-07-24 22:26:13 | ある日の日記
片付かない……。
プレゼントを頂いた方に、お礼のカリグラフィーカードを作ろうと思ったり、本を読み終えなくては――と計画したりしているのだが、体や頭が言うことを聞いてくれない。

今日など、日中は数時間もうつらうつらと眠ってしまった。遠い過去のことが脳裏をよぎったり、砂の中に吸いこまれるようなけだるさを感じたり。やれやれ。自分ながら、情けないほど、スタミナがない。

この暑さが、思考力を奪ったしまうのかな? 暑い国の人々が、贅沢なまでにシエスタの時間を取るのが、なぜだかわかったような気がしまする。

三原順の世界

2016-07-22 22:02:27 | 本のレビュー

アマゾンで注文していた、三原順のマンガが今日届いた。といっても、彼女の未完の遺作である、この「ビリーの森 ジョディの樹」は若い頃持っていた。それがいつの間にかなくなっていたのだが、最近になって三原順が再読したくなって、また購入したわけ。

三原順―――この伝説的な少女漫画家を記憶している人は、今どれほどいるのだろう? 20年以上も前の平成7年、42歳の若さで世を去った。新聞記事の欄に、彼女の死を告げる小さな記事を見つけた時のショックを、今もはっきり覚えている。 なにせ、高校時代、クラスメートにかしてもらった「はみだしっこ」が強烈な印象を刻み込み、その時から天才漫画家の存在は、忘れることができなくなっていたのだから。


隅々まで細かく描かれた背景と、「これがマンガ?」と思うほど難解で長いセリフ。でも、三原順の作品を読むと、良質な外国の小説(彼女の作品は、みなアメリカが舞台)の世界に入り込んだようで、魅了されたもの。

研ぎ澄まされた感性と知性。それが、三原順の世界には感じられて、彼女を他の漫画家とは違う、唯一無二の存在にしていたと思う。「ビリーの森…」も届いたばかりで、パラパラとページを繰ってみたにすぎないのだけど、硬質な絵の線が、懐かしい記憶と共に、私を十代の日々に帰してくれるようにさえ思ってしまう。

大切に、読みたい。アメリカの森を思わせる、ベリーの香りのする紅茶を飲みながら。

夏の合宿

2016-07-22 21:48:51 | 児童文学

岡山児童文学会(松ぼっくり)の夏合宿に行ってきた。
自宅から、1時間半ほど車を運転して、海辺の国民宿舎まで――ここで、一泊二日の合評会が開かれるのだ。

私は、175枚の原稿を提出。これくらいだと、長編といっていいのかしら?  夜、食堂でご飯を食べている時、どんどん夕闇が迫ってきたのだが、水島の工業地帯がライトアップされて、綺麗!  何でも、夜のコンビナートを船の上から見て楽しむナイトクルーズもあるのだそう。 昼の工業地帯は、素っ気ないのに、この変貌はいかがしたことか?

夜の懇親会も楽しかった――私の作品(ミステリー調のファンタジー?)も、思ったより評判が良くてホッ……。

しかし、合宿までも1週間あまり忙しかったせいか、帰宅したとたん、疲れがドッと出たのであります。4,5日はぐったりして食欲もなかったけど、今日あたりからようやくものが考えられだしたよう。  夏バテに負けないよう、これからも頑張る、と誓う私でありました。

耳をすませば

2016-07-15 22:10:39 | 映画のレビュー

大好きなジブリ映画―――それなのに、この「耳をすませば」は一度も観ていませんでした。
このたび、初めてこの映画を観て、あんまり素敵な物語なのに、ドキドキ。う~ん、今まで知らなかったなんて、何てもったいないことしてしまったんでしょう。
ちょっと、後悔……初公開されたのは、20年前らしく、当時は私も若い女性だったのですが、宣伝用のポスターを見て、「これってジブリ的じゃない。何か少女マンガの青春モノみたいじゃない」と興味をひかれなかったのです。  ああ、馬鹿だったなあ。

ジブリアニメの中で、一番大好きなのは、「コクリコ坂から」と「思い出のマーニー」なのですが、この「耳をすませば」もあわせて我がベスト3になりそう!


さて、この映画。私が知らなかっただけで、多くの人々に愛されている名作なのだそう。ストーリーも、ファンタジックな香りがありながら、思春期の甘酸っぱい心情が心にくいまでに描かれているのです。 主人公の女の子、雫やバイオリン作りの職人を目指す聖司君のキャラが魅力的なこともさることながら、舞台となった多摩一帯の風景描写が素晴らしく、目が画面に釘付けになってしまいました。


高台の住宅地や豊かな木々、怖いほど急な階段の下には、緑に包まれた図書館があったり…と、町を描く映像の綺麗なこと! 絵の線、空の色、影の陰影――アニメでここまで繊細な表現ができるのは、さすがジブリならでは。
雫の家族が暮らすのは、低層アパートの一つ。コンクリートの建物や真ん中についた暗い階段、窓の外に干された洗濯物といったディテールは、昭和の終わりころまで良く見られた住宅です。私の子供時代のクラスメートが住んでいたのも、こんなアパートでしたっけ。
ちょっと陰気な照明や、狭い部屋。ゴタゴタ物が置かれた室内やお世辞にも綺麗とは言えないキッチン―――とっても生活感があふれていて、何だか郷愁を感じてしまいました(何と、雫は大学生の姉といまだに二段ベッドでねていたりするのです)。

物語は、本好きの少女雫が図書館で借りてくる本の後ろについている、図書カードに「天沢聖司」の名前を発見することから始まります。何冊もの本にはすでに、彼の名前があるのに興味を感じた雫。  そして、ある日、図書館で働いている父親にお弁当を持っていくために乗った電車で出会った不思議なネコをつい、追ってしまうことに。
行き着いたのは、「地球屋」と看板がある奇妙なお店――そこは、聖司の祖父が営んでいるお店で、バイオリンの楽器を作っていたのです。

どうですか? この魅力的なストーリー。 地球屋の建物から広がる眼下の街の風景、店内に置かれたバロンという猫の人形、バイオリンの楽器を作る聖司君。人が夢見る、ステキな物語のエッセンスがあちこちにあって、胸がいっぱいになってしまいそうなほど(ついでに言うなら、私はアナログな時代の人間なので、図書館で借りた本の裏に、図書カードが入っていて、今まで借りた人たちの名前が書いてある、というシーンに『そう、そうなのよ』と叫んでしまいたくなるのです)。

バイオリン作りの職人を目指す聖司君は、イタリアのクレモナへ留学することになり、作家を夢見る雫は物語を書くことに―――二人の物語は、まだこれから始まったばかり。
できたら、続編も観たいくらいですね。

ある日の日記

2016-07-12 08:44:02 | ある日の日記
40歳を目前にした頃から、「人生は短い」と感ずることが多くなりました。
そして、時間は一日24時間と決まっているはずなのに、やたら雑用が多くなり、若い時に比べて時間が足りないような……。

もう三日で45歳の誕生日を迎えるのですが、ここまでの歳月もあっという間に過ぎ去ってしまった感あり。半世紀近く生きてきたなんて、信じられません。
90代のお年寄りのことを「すごいなあ」と思っていたのですが、1世紀近く生きるのも、本人はそれほど長く感じていないのかもしれません。

そして考えてみると、キリストや古代ローマ帝国が存在していたB.Dの世紀もたかだか2000年ちょっと。50年だか、100年だかの時間も何十回か重ねれば、現代に行き着いてしまいます。   ああ、古代文明も、人の一生から見れば、遠い過去じゃないのかなあ?


そして、時を重ねれば重ねるほど、「人が生きてゆくって、大変なことなんだ」ということを実感します。人生、何が起こるか、わからない。泣きたくなってしまうようなことだって、必ずある。それが人生(セ・ラ・ヴィ)なのでありましょうが、お気楽な子供時代に帰りたいなあ、と時に思ってしまうのです。

すっかり読書気分

2016-07-08 20:30:16 | 本のレビュー

これ、家の書斎にあるのを見つけました。 何の文庫本かって?
と、私もそう思い、手に取ったところ、「岩波文庫」の解説目録であることを発見。 2013年度版とも、きちんと記してあります。

ページをめくったところ、日本文学はいうのおよばず、英国、アメリカ、フランス、ドイツなどの国々の名作がずら~り。 ああ、何てきらびやかなのかしら?

バルザックの作品がいくつも並んでいたり、サマセット・モームの本も数冊以上――モームは、若い頃好きで、「雨・赤毛」、「淵」、「環境の力」など南海ものと呼ばれる短編が深く心に残っているもの。  モームは、ここで南太平洋と呼ばれる場所を舞台に、人生に行き詰まった白人たちの生態を鮮やかに描いたのでした。
でも、岩波文庫版では、「アシェンデン」など、スパイ小説もどきの世界も楽しめるみたい。

ヴァージニア・ウルフの「灯台へ」もラインナップの中にあり、中学生の頃、父の本棚にこの本をはじめて見つけたことも懐かしく、思い出してしまいます。

でも、でも、知らなかった本がいっぱい! 名前だけは知っていて、以前から読みたいと思っていたイーヴリン・ウオーの「回想のブライズヘッド」、ギッシングの「ヘンリ・ライクロフトの手記」もあるというのは、うれしい驚き。ぜひ、読みたい!

ゴールズワージーの「りんごの木」はすでに持っていて、初めて読んだ高校1年生の時のみずみずしい印象も、記憶の中に。 ずっと後年になって、岩波文庫から、この本が出ているのを知り、買い求めたのですが、ともに収められている「人生の小春日和」という短編も余韻の残る佳作。

小説ではなく、一種の説明書なのに、たっぷり2時間もページを繰っていました。ああ、何だか良書を幾冊も読んだような面白さ! まるで、もう原書を読んでしまった気分なのであります。


          
そして、こちらは丸善で見つけたもの。 こちらも岩波文庫の本かと思ってしまいそうですが、さにあらず。表紙を英語のスペルで書いたノートなのです。漱石や太宰もあったのですが、これは芥川龍之介のもので「トロッコ・蜘蛛の巣」と書かれております。
目下、使う予定はないのですが、これも気の利いた文具ですね。

ノエルの別荘

2016-07-07 23:42:22 | ノエル

毎日、スゴーク暑いです。ノエルハーブガーデンも、まるで熱風の中のサバンナみたい。
というのは、もちろん嘘だけれど、酷暑の夏なのは間違いなし。

だから、ノエルもクーラーのきいた書斎で朝から夕暮れの散歩まで過ごしています。   ここが「えっ?」と不思議なのですが、ノエルもここ1年ほどで性格が変わったみたい。以前は、ワイルドというか自立心が発達しているというか、人間の思惑など関せずの、やんちゃな犬だったのに、今ではこちらにすりよって可愛がられるのが大好き。

やっぱり、年をとったのかな? 以前のような暴れん坊でなく、ようやく女の子らしくなったようです。
だから、クーラーの部屋で涼むのも大好き。 夕方の散歩の後も、家の中に入りたがり、自分の小屋に戻りたがりません。(まあ、結局、夜は裏庭で過ごしてもらうんですけど)

という訳で、ノエルの別荘はここです。 主のいなくなったガーデンには、真っ黒なカラスがやってきて、木の上から睥睨したりしている。このまま、カラスたちの遊び場になったらイヤだなあ。

ルチアさん

2016-07-07 23:00:33 | 本のレビュー


大好きな高楼方子(たかどの ほうこ)さんの本です。
買ったのは、ちょっと前なのですが、読んだのは三日前。つまり、しばらく置いていたままにしていた訳。

そして……読了した後、激しく後悔した私。こんなにステキな本には、少しでも早く巡り合いたかったって思うんだもの。表紙も、御覧の通り、洒落てます。
出久根育(でくね いく)さんの挿絵なのですが、夢のようでありながら、ちょっぴりミステリアスな女の子の表情とか、周りの装飾がとても好みなんです。


昔から高楼さんのファンなのですが、数多い作品の中でも、こうした小学校高学年以上向き――というべき少し大きくなった子供向けの児童作品は数少ないよう。正直言って、より小さい子供向けの作品は、私好みじゃないので、高楼さんの本も10冊読んでいるかいないか。
「リリコは眠れない」とか「緑の模様画」は、大好きですけど。


さて、この「ルチアさん」。高楼ワールドともいえるファンタジックな世界が広がります。正統派の欧米の児童文学を思わせながら、独特の繊細・優雅な表現が素晴らしい!
<たそがれ屋敷>と呼ばれる、不思議な館に住む二人の少女――スゥとルウルウ。二人のお父さんは、遠い異国への船旅に出てしまい、浮世離れした優雅なお母さまとお手伝いさんとだけの生活を送っています。
そんなある日、新しく雇われたお手伝いさんのルチアさん。青いコートをふっくり着こんだイースターエッグみたいなルチアさんは、とっても働き者なのですが、不思議なのはその体が光ってみえること。  ちょうど、姉妹がお父さんからもらった美しい青い石(宝石のようにも、果物の実のようにも見えるもの)のように――ルチアさんって、一体何者?
そして、どうしてスゥたちだけの目に光輝いて見えるのかしら?

こんなお話が、典雅な文体でつづられてゆくのですが、ある日、思い切った姉妹は、ルチアさんの後を追っていきます。ルチアさんの家まで、暗い道をずーっと通って…そしてたどり着いた家で、ルチアさんの娘ボビーと出会うのですが、ボビーは驚くべきことを言います。「あたしのお母さんは、真夜中の台所で、青い実のシロップづけの入った瓶を取りだして、それを食べているのよ」と。

実は、これはボビーのでまかせなのですが、三人が見守る前で、ルチアさんが取り出したのは、本当にキラキラ輝く青い実。不思議なことに、その美しい実のシロップづけは、姉妹のお父さんがくれた青い石にそっくりなのです。 この実と青い石は、ともにはるか遠い異国にしかないものでは?   ここからルウルウたちの空想が羽ばたくのですがーー。

ボビーに青い石をあずけるものの、間もなくルチアさんもボビーも引っ越してしまい、謎はそのままになってしまいました。そして、長い年月が流れるのですが、素晴らしいのは、この何十年も後の後日談。  これほどに余韻を感じさせ、鮮やかな幕引きが用意された物語は、そうありません。

遠い国のまばゆく光る青い石のように、心に秘めたものを持っている方たちに読んでほしい本!


東京ワークショップ

2016-07-04 20:49:50 | カリグラフィー+写本装飾

  カリグラフィー・ネットワークのワークショップのため、東京へ行ってきた。東京まで、おまけに泊まり込み(2泊3日)でワークショップを受けるのなんて、はじめて。

カリグラファーが白谷泉さんなので、どうしても受けたかったのだが、イタリックキャピタル体という、古典的なローマンキャピタルの面影を宿したイタリックの大文字は美しい!
文字を書くのも、久々なのだが、心がひきしまるようで楽しかった。

遠方からやってくるのなんて、私以外、ほとんどいないんじゃないかと思ったら、さにあらず。ネットワークの方で、宿舎を用意してくれたのだけど、15人の受講生の内、10人近く泊まったんじゃないかな?

     
そうして、ワークショップの会場となった場所が素晴らしいの、なんのって。なんと、代々木のオリンピック記念青少年センターなのだよ。 ここへ来るのが楽しみだった私――残念ながら、1964年当時の東京オリンピック当時の建物はなくて、新しい建物がいくつも並んでいるのだけど、ここはオリンピックの選手村だった場所。

そして、中に入ってみれば、予想にたがわず、好奇心をそそる場所。若者たち(ただし、運動をする人にかぎります)の合宿場所となっているらしいのだが、欧米人やその他、国際色あふれる空間!  あらゆる国の若人が、この代々木の地で青春の汗を流しているらしいのだ。
いいなあ。  たとえ、若かったとしても、私には無縁の場所であるのだけれど。

      


これが、D棟――私たちの泊まった宿舎。 写真を見てもわかるように、代々木の森の一角にあり、明治神宮も遠くないという、緑あふれるオアシス(ただし、散歩していたら、『デング熱にご注意下さい』という、不穏な注意書きがあったっけ。そうか、昨年、代々木公園で発生したと騒がれていたものね)。

最上階の9階には、新宿の摩天楼(この言い方、古いよ)が見えて、夜はすっごく綺麗! 会場の準備をしてくださったMさんには、とてもお世話になり、楽しい時間を過ごさせて頂きました―――色々と実りある、東京遠征(?)でありました。