ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

アロマテラピー

2021-02-27 21:48:11 | ある日の日記

疲れやすいため、アロマテラピーをしてみることに。

  

夜、アロマランプを灯し、精油の香りを味わっていると、リラクゼーションになります。

    

アロマテラピーは、三十代初めの頃、少し凝っていたことがあるのですが、当時とは段違いに体力が落ちている今。掃除や家事をした後、ぐったりしてしまいます。――だから、精油の力を借りて、リフレッシュしたくなったのですが……。それにしても、精油の世界も奥が深い!

フランキンセンス、ティートーリー、スイートオレンジ、レモングラス……精油の様々なプロフィールを勉強中のわたしです。


海外特派員

2021-02-23 09:06:20 | 映画のレビュー

 

この間に続いて、ヒッチコックの「海外特派員」を観る。第二次大戦前夜の欧州を舞台にしたスリラー。

行動力が売り物の新聞記者ジョニーは、今ヨーロッパで何が起こっているかを探るため、アメリカから「海外特派員」としてロンドンに派遣される。

彼がそこで見たのは、平和への鍵を握るオランダの政治家ヴァン・メア暗殺事件。しかし、本当はメアは暗殺された訳ではなく、調印された条約の中身を自白させるために、陰謀グループの手によって監禁されていたのだった。

その陰謀グループの首領というのが、表向きは反戦を唱える協会の会長にして、富豪のフイッシャー。だが、ジョニーは、フイッシャーの娘キャロルと愛し合うことになってしまう(彼女は、父親の正体を知らない)。

さすが、スリラー映画の本家本元のヒッチコックと感嘆させられるのは、ジョニーが暗殺犯人を捕らえるため、彼らの車を追跡してゆく場面。手に汗を握るシーンで、画面から目を離せないのだが、犯人グループが姿を消すのは、風車の並ぶ一帯。

オランダらしい風景と言えば言えるのだが、モノクロームの画面に、羽のすりきれた古い風車がいくつも並ぶシーンは、何とも言えず不気味。ちょうど、海を漂う幽霊船を観るような気味悪さを醸し出しているのだ。

風車の中も、古い原始的な木組みの装置が並び、その間を狭い木の階段が上に向かっている。私は風車なんてものの中に入ったことはないのだが、こんな風になっているのか……本当に、怖い。

ただ、惜しむらくは、軽快にテンポよく進んでいた物語が後半、ドタバタ気味になってしまったこと。一時的にジョニーと仲たがいしたキャロルはアメリカへ逃げようとする父親について、飛行機に乗る(実はその飛行機に、ジョニーも乗っているのだ)。

すでに開戦の火ぶたは切られており、敵機に襲撃された飛行機は海に不時着陸する。フイッシャーは海の藻屑と消え、ジョニーとキャロルは再びお互いの愛を確かめ合う。

――というのが、この映画を乱暴に要約したもの。この海難シーンの退屈ささえなければ、十分傑作と言える映画なのになあ、と少し残念に思ってしまった。

それでも、驚くべきは、この映画が作られたのが1940年だということ。まさに、戦争が始まったばかりの時期ではないか。そんな不穏な時期に、いち早く、世界情勢を逆手に取り、自分の映画の素材として取り上げたヒッチコック……凄い!


汚名

2021-02-21 14:30:26 | 映画のレビュー

 

ヒッチコックの「汚名」を観る。実は、この世評高い名作を観るのははじめて――あのイングリッド・バーグマンが彼女をミューズのように崇めていたヒッチコック作品に出ているというのに。

そして、初めて観た「汚名」。素晴らしく、面白かった!! バーグマンがとても若くて美しいし、相手役がケーリー・グラントっていうのもべストの配役。

さて、どんな話で、何が面白いのかというと、これは実はスパイスリラーに属する話。

イングリッド紛するアリシアは、ドイツ出身の父がナチスのスパイであったため、周囲から色眼鏡で見られ、自暴自棄な生活を送っていた。この美しいアリシアに接近したのが、ケーリー・グラント扮する諜報部員デヴリン。彼は、彼女をアメリカ側のスパイに仕立て上げ、ブラジルに潜むナチの残党の秘密を暴こうとする。

二人が、飛行機に乗り、南米に向かう所から、物語がどんどん面白くなる。二人が乗馬場で会ったアリシアの父の友人セバスチャンは、ナチ党員だが、彼女に恋していた。彼を利用して、ナチ党員の秘密を探ろうとするデヴリン。

デヴリンは上司の言う通り、アリシアをセバスチャンに接近させようとするのだが、それに対し困惑し、激しく怒るアリシア。このへんの絡みは、ちょっと「?」の感じ。確かに、アリシアの言う通り、デヴリンの応対は冷たく、素っ気なさすぎる。このシーンを見ただけで、観客は彼に感情移入するのが嫌になってしまうそうな気がする。(後で、彼がアリシアを救うために、体を張って、敵地へ赴くとしても)

セバスチャンは、アリシアに夢中になり、早速結婚を申し込む。アメリカの諜報部員たちはアリシアに、そのプロポーズを飲むように言う。そんなわけで、彼女はセバスチャン夫人として、お屋敷で暮すのだが、あやしいのはワインのボトル。セバスチャンの仲間が、ワインボトルに異様な反応を示したのを怪しんだアリシアは、デブリンと謀って、ワインセラーに忍びこむ。

そこで二人が見つけたのは、砂のようなものが入ったボトル――実は、この中にはウラン鉱石が入っていたのだ。

ワインセラーに潜入するため、夫の持っている鍵を盗んだアリシア。セバスチャンは、鍵が紛失しているのに気づく。何くわぬ顔で、夫の鍵束に鍵を戻すアリシアだが、そのことから妻がワインセラーに忍びこんだ犯人であることにセバスチャンは気づく。彼女がアメリカのスパイであることにも。

       

このこと知られれば、自分がナチ党員の仲間たちから殺される。そう直感し、恐慌をきたした彼は、母親に相談。二人は、アリシアの飲むコーヒーに毒を入れ、少しずつ彼女を弱らせ、殺すことにある――というのが大体のストーリー。

どうです? 面白そうでしょう。

自分の正体がばれ、母子に殺されそうになっていることに気づくアリシアに、表面だけ心配気に寄ってくる二人。その時、セバスチャン母子の影が屋敷の壁に黒く、長く伸びているのが怖い。こういった古典的な薄気味悪さを演出するのにかけて、ヒッチコックは本当にうまい!

最後、アリシアを救い出したデヴリンの車が出て行った後、取り残されたセバスチャン。彼を屋敷の中で待っている仲間たち。彼らも、すでに事情を察するのですね。その仲間のもとに、足どりも重く、戻ってゆくセバスチャン。彼の背後で屋敷の扉が閉められたところでエンドロール。

う~ん、これもうまい! この後、セバスチャンが仲間たちから粛清されることをされることを予感させる結末。

スリリングで、カタルシスを感じさせ、しかも残酷さのある映画。映画の面白さのエッセンスが詰まった、ヒッチコックの隠れた代表作!


荒野の古本屋

2021-02-11 15:48:51 | 本のレビュー

「荒野の古本屋」を読了。(森岡督行 著  小学館文庫 2021年)

とっても、面白かったです。今まで知らなかった世界が、ふんだんに紹介されており目からウロコ。読み終わった時、ほんとに本のページの間に、コンタクトレンズみたいな、透明なウロコが落ちてました――というのは、冗談ですが、神保町の古書店街や、新しい古本屋のあり方などが書かれており、本好きの方は、一読の価値があります。

まず、著者の森岡さんは、「ただ読書と散歩が大好きなあまり」大学卒業後も、就職せず、古本屋めぐりを楽しんでおりました。中野にある昭和初期の風情を残す「中野ハウス」に住み、読書と喫茶店めぐりをしているのですが、この「中野ハウス」がとても興味深い!

昭和初期の建築で、かの同潤会アパートを彷彿とさせる古いアパート。天井は高く、二階には昔の石炭置き場だった不可思議なスペースまであるそうな。う~ん、どんなところなんだろう? 私も古い建物が好きなので、こんな所に住んでみたいのですが、きっと原宿の同潤会アパートが消滅したように、今はもうないでしょうね。

そして、彼が紹介する古書街「神保町」の魅力的なこと! 実は神保町というのは、世界一の古本屋街で、パリにもロンドンにも、こんな場所はないのだそう。おまけに、百年以上の長い歴史がある。 寡聞にして、そんなことも知りませんでした……森岡さんは、「こんな場所があること自体、東京が素晴らしい文化都市であることを示す」と言っておられるのですが、本当にそうですね。

かく言う私は古本屋というものにほとんど縁がなく、神保町も数えるほどしか行ったことがありません。やたら、専門的な古本屋さんがいっぱい並んでいて、敷居が高く感じてしまったのですが、森岡さんの筆にかかると、ディズニーランドそこのけの楽しい場所のようで、ワクワクします。

神保町の老舗で修行した後、自分の古本屋を立ち上げた森岡さん。彼は、自分の好きな写真集をメインに展示するため、パリとプラハへ買い付けに行くのですが、この箇所がとってもスリリング。 同業の人から、プラハでは珍しい古書が安く買えると聞き、単身旅立つのですが、目的とする古本屋がある街へのバスが来ないなどハプニング続き。言葉も通じない異国で、こんなことになったら怖いな……事実、森岡さんも夜のプラハの淋しい街路を歩いていたりして、後で日本人女性に「そこは、川の洪水の時、被害があった地域で、恐ろしい事件も起きている。決して、近づいては駄目よ」と真顔で忠告され、ひやりとしたりしています。

最も印象的だったのは、カレル橋近くの古本屋へ行くところ。そこの女性が、森岡さんを店の奥のドアの向こうにある部屋に案内してくれます。そこは、選ばれた賓客しか通されない場所――ヨーロッパの店って、こんな仕掛けになっているのか。知らなかった……。

そこには、ヨーロッパじゅうから集められた古書が溢れかえり、森岡さんは戦前に発行された美しい花の写真集を見つけるのですが、「腰が抜けそうなほどの値段」なのにもかかわらず、購入。どんな美しい写真集なんだろう……私も、その花の写真集が見たくなってしまいました。戦前だけど、カラー印刷なのかな?

以前、プラハを訪れた時、アンティークショップに行ったこともフッと思い出しました。市街のどこにあったのだか、もうすっかり忘れてしまいましたが、とても広いお店で、光るように美しい家具や、装飾品があったっけ。マホガニー製の家具が、しっとりとした雰囲気を放っていたことも、記憶に残っています。

森岡さんが立ち上げたのは、写真集をメインとする古書店とギャラリーが一体となった「森岡書店」。大好きな昭和初期のムードを残す建物に、作りだされた古書空間。どんなお店なんだろう? ぜひ、訪れてみたい気持がふつふつと湧いてきました。

TVでも、神保町は古い喫茶店とおいしいカレーが楽しめる場所と紹介されていて、ますます行きたくなってしまった私。想像したこともなかったけど、本とカレーライスは友達だったのか……。


小川洋子の世界展

2021-02-03 17:02:11 | アート・文化

寒い……しかし、今日、吉備路文学館へ「‘密やかな‘小川洋子の世界展」へ行ってきました。

吉備路文学館は、知る人ぞ知る小さな文化施設で、私も何度か行ったことがあるきり。しかし、和風の建物のガラス窓からは池が見渡せ、品のある佇まいを見せています。

駐車スペースも小さく、愛車のPOLOをとめた時も、他に二台ほど車があるだけで、もういっぱい。館内に入ると、人気はなく、小川洋子の展覧会がある部屋に入っても、私の他誰もいない……けれど、一人きりで展示室にいたことで、いっそう「密やかな」ムードが楽しめました。

この静謐さは、小川作品に通じるかも。

展示されていたのは、小川洋子さんの幼年期の写真や、小学生時代の作文など。高校時代の詩について書かれた作文の真摯なこと――後年のストイックさはすでに、この頃からあらわれているのか……。

「数式を愛した博士」のワープロ原稿も展示されていましたが、驚くべきは、20×20字という四百字詰め原稿用紙の様式で執筆されていること。これだと、今原稿何枚目に来ているかが、ダイレクトにわかりますね(もちろん、枚数はかさむけれど)。これも、興味深い事実でありました。

静かな、冬の午後。