現実と理想はコインの裏表のようなものだ。統一がますます難しくなっている現実に積極的に対応しつつも、朝鮮半島問題の究極の志向としての統一という価値をしっかりととらえていくための工夫が必要だ。

2023-07-27 21:58:26 | 南北は一つ
 

「北朝鮮は統一を保留する姿勢…

『事実上のツーコリア』へと向かう可能性高い」

登録:2023-07-25 08:31 修正:2023-07-27 10:30
 
キム・ヨジョンの相次ぐ「大韓民国」発言の意味 

4年前から国対国へと転換 
金正恩は南北交流は先代の誤りとの考え 

「統一志向の特殊関係」にしがみつくことが 
逆に南北関係改善の障害になるのを懸念 
「国家構図」の中の過程の平和追求を 

相互評価を追求する「事実上のツーコリア」 
軍備規制・北朝鮮の人権改善を導く可能性も 

北朝鮮を利用した韓国の政争化は危険水位 
共存平和が定着すれば韓国内での対立も緩和

 このところ北朝鮮のキム・ヨジョン労働党副部長が「大韓民国」という表現を相次いで用いている。北朝鮮が公式談話で「南朝鮮」や「南側」ではなく、正式な国号である「大韓民国」を使用したのは非常に異例のことだ。これは何を意味するのか。専門家たちの意見を聞いた。北韓大学院大学のキム・ソンギョン教授と統一研究院北韓研究室のホン・ミン室長の書面回答を一問一答形式にした。

 
 
                                ホン・ミン統一研究院北韓研究室長=本人提供//ハンギョレ新聞社

-北朝鮮は事実上、統一をあきらめて「ツーコリア」政策へと向かっているのか。

ホン・ミン:金正恩(キム・ジョンウン)政権は2019年以降、「国対国」構図へと南北関係を転換しようとしてきた。同年10月の金委員長による金剛山(クムガンサン)観光地区での現地指導で、すでに南北関係に関するガイドラインは設定されていると思う。彼は過去の南北交流協力のことを、国力が微弱だった時期に先代の誤った判断によって行われたものと強く批判した。南北関係を根本的に再設定するという意志を表明したのだ。その後は開城(ケソン)共同連絡事務所の爆破、対南部署の廃止および縮小、「労働新聞」の対南紙面の廃止、韓国による北朝鮮に対する提案の無視戦略と、一貫している。2021年からは「我が民族同士」、「民族」、「統一」という用語はほとんど使っておらず、さらに第8回党大会で採択された改正党規約の序文に至っては「統一」、「南朝鮮革命の強化」などの対南関連部分をなくした。また2021年からは戦術核を強調しはじめたが、同じ民族に対する戦術核使用の可能性に言及したことは、北朝鮮がこれまで維持してきた「我が民族同士」および統一戦線の論理と衝突する。これは2018年になされた南北・朝米合意が履行されていないこと、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後に一層悪化した情勢と無関係ではない。キム・ヨジョン副部長の談話も、このようなことの連続線上で把握する必要がある。

キム・ソンギョン:キム副部長が「大韓民国」という表現を使ったのには、明らかに理由があるだろう。党規約で統一について変化した立場を表明したこと、尹錫悦政権の大胆な構想を非難し、互いに意識しないようにしようと述べたことも、同じ流れの中にあると思う。「ツーコリア」の方向性だと断定することは難しいが、少なくとも統一を国家目標と絶対的理想にすることに対して保留する立場を取っている。

 
 
                          北韓大学院大学のキム・ソンギョン教授=本人提供//ハンギョレ新聞社

-国内・南北・国際状況をすべて考慮すると、「統一志向の特殊関係」の維持は望ましいものなのか。

キム・ソンギョン:統一は朝鮮半島内外の様々な問題の解決にとって依然として有効な目標だと思う。分断以来、南北双方のいびつな社会の根幹には分断が存在するためだ。しかし、統一に至る道がかなり長く、かつ様々な現実的制約がある中で「統一志向的な特殊関係」というものにしがみつくことは、むしろ南北関係改善の障害にもなりうる。現在の国際情勢や韓国内の政治の両極化などを考慮すれば、「普遍的国家関係」としての南北関係を本格的に考えてみる必要がある。「普遍的関係」でアプローチすれば、むしろ南北の関係の特殊性が重要になる契機が作られるだろう。

ホン・ミン:「統一志向的特殊関係」と「国対国の関係」は選択の問題だと考えるのは困難だ。究極的に統一は目指すものの、現実と理想との乖離(かいり)を解決していく過程では事実上の「国対国」構図を利用することが必要だ。重要なのは統一志向性に合った「過程的平和」のよりきめ細かな設計と管理にある。「統一志向的特殊関係」と言いながら、内容的には力による圧倒に埋没してしまえば、「過程的平和」が不在のまま統一志向性からより遠ざかってしまう恐れがある。「過程的平和」を通じて敵対的関係を友好的関係へと変化させるとともに、それが究極的に統一という過程へと自然に転換しうるようにする知恵が必要だ。

-ツーコリアへの方向転換は南北対話の議題となり得るか。

ホン・ミン:対話の議題とするためには、南北がツーコリアへの転換を公式に認めなければならないが、不可能に近い。分断以降、南北は「統一志向性」を体制の正当性の観点から規定してきた。これを転換するためには、両体制ともに政治的合理化に向けた内部作業をしなければならないが、そこから派生する対立は乗り越えがたいと思う。したがって「公式のツーコリア」ではなく「事実上のツーコリア」へと向かう可能性が高い。「事実上のツーコリア」には2つの様相がある。一つは今のように軍事安保的なにらみ合いと敵対にもとづく現状維持の中で「統一志向」の原則だけがあり、事実上誰も統一を期待しない様相だ。もう一つは、朝鮮半島のすべての構成員が平和に暮らす権利の観点に立ち、可能なことから相互脅威の緩和に手を付けていくことだ。それに向けて「国対国」の観点からの軍備規制アプローチも考えうる。

キム・ソンギョン:南北が解決すべき議題の中には、南北関係の特殊性のせいでまともに議論すらできないものも多くある。南北の気候環境や感染症などの問題を「政治化」することなく、実質的な改善を目的として対話を始めることはできる。政権によっては「特殊関係」を掲げ極度に政治化される北朝鮮の人権問題も、国際社会に準ずるよう求めるくらいの主張を韓国がすることで、北朝鮮住民の人権の実質的な改善は引き出せる。留意すべきは、韓国が統一すると主張するほど、北朝鮮はそれを脅威と感じる可能性が高いということだ。南北がかなり長い期間にわたって共存することが必須不可欠な中では、せめて「普遍的関係」を作ってまず平和共存することから始めなければならない。

-特殊関係から一般関係への転換の模索は、韓国内での対立にどのような影響を及ぼすと考えるか。

ホン・ミン:国対国の外交的対象になったとしても、南南対立(韓国内での理念的な対立)そのものが直ちに消えると考えるのは難しい。「民族」から「隣り合う敵対的国家」へという形式の変化だけでは、北朝鮮という敵対的他者性、歴史性、血縁的想像を脱することは難しいだろう。国対国という形式だけでなく、内容的に関係の友好性を作り出すことができなければ、北朝鮮は絶えず外交的・軍事的対立の素材かつ「親北」と「反北」という二分法的対象として残ることになるだろう。ただし、長期的に人口社会学的な世代が変化し、国対国という外交的対象化と一定の共存的平和が定着すれば、南南対立の構図もかなり薄まる可能性はある。

キム・ソンギョン:北朝鮮という他者を利用した韓国の政治勢力の政争化は、すでに危険水位を超えている。このような脈絡から、北朝鮮との関係の転換は冷戦によって構築された政治地形の素顔をあらわにし、労働・経済の両極化・福祉・地方消滅・環境・ジェンダーなどの韓国社会の重要な議題を浮上させる効果を作り出しうる。ある意味、市民の意識と生活はすでに北朝鮮を主要変数として考慮していないのに、政治勢力だけが極端化した支持勢力を結集させるために北朝鮮問題を利用しているのかもしれない。現実と理想はコインの裏表のようなものだ。統一がますます難しくなっている現実に積極的に対応しつつも、朝鮮半島問題の究極の志向としての統一という価値をしっかりととらえていくための工夫が必要だ。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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防衛省はこれまで陸自オスプレイについて「万が一、この現象が起きても安全に運用できる。操作手順は確立しており、教育・訓練を重ねてきた」として飛行を続けてきました。

2023-07-26 17:44:10 | アメリカの対応

2023年7月26日(水)

陸自オスプレイ 立川への飛来ノー

国に宮本徹・吉良・山添氏ら

写真

(写真)防衛省の担当者から聞き取る(正面前列左から)吉良、宮本、山添、坂井、尾崎の各氏=25日、東京都立川市

 日本共産党の宮本徹衆院議員・東京比例予定候補、吉良よし子、山添拓両参院議員、坂井和歌子吉良・山添事務所長(衆院東京比例予定候補)、尾崎あや子都議は25日、陸上自衛隊立川飛行場(立川市)を視察し、陸自のV22オスプレイの飛来・訓練や所属ヘリコプターによる体験搭乗(遊覧飛行)について、防衛省をただしました。周辺各市議も参加しました。

 米海兵隊は21日、昨年6月に起きたオスプレイ墜落事故の調査報告書で「ハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)」と呼ばれるクラッチの不具合が事故の原因で、操縦者が事故の発生を予知・防止するために「できることはなかった」としました。

 防衛省はこれまで陸自オスプレイについて「万が一、この現象が起きても安全に運用できる。操作手順は確立しており、教育・訓練を重ねてきた」として飛行を続けてきました。

 参加者はこの間の同省の対応を厳しく批判し、「HCEの根本的原因が分かっていない。自動車で言えば、いつ故障が起きるか分からない状態だ」と指摘。人口密集地の立川市周辺で飛ぶのは危険だとして、飛行中止を求めました。

 また、体験搭乗が騒音被害を起こしていることについて、土・日曜日も行われていると指摘。宮本氏が国会で取り上げた2018年以降、土日の体験搭乗が減ったものの、22年度はまた増えているとして、周辺自治体が必要最小限にとどめるよう防衛省に要請していると示し、体験搭乗をやめるよう求めました。

 防衛省は「体験搭乗の回数を低減する努力を引き続き行う」としました。

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ウクライナの反転攻勢は、数カ月の準備の末、先月始まった。西側としてはウクライナが現在ロシアが占領中の南部と東部の領土をより早く取り戻すことを望んだが、成果は微々たる状況だ。

2023-07-25 17:44:10 | アメリカの対応
 

ウクライナ反転攻勢、このまま終わるのか…

「泥濘期まで3カ月しかない」

登録:2023-07-24 06:00 修正:2023-07-24 06:42
 
ゼレンスキー大統領「速度を上げる」
 
 
                  ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領=大統領室提供/聯合ニュース

 先月初めに本格化したウクライナ軍の反転攻勢が予想より遅れて進んでおり、意味のある成果を出せないまま終わりかねないという暗い見通しが出てきた。

 米国CNBCは21日(現地時間)、西側の軍事専門家の間から、ウクライナ軍がロシアの防衛ラインを突破して領土を回復できる「機会の窓がもうすぐ閉じられるかもしれない」という警告が出ているとして、このように報じた。

 ウクライナの反転攻勢は、数カ月の準備の末、先月始まった。西側としてはウクライナが現在ロシアが占領中の南部と東部の領土をより早く取り戻すことを望んだが、成果は微々たる状況だ。ウクライナは昨年の冬を通じて反転攻勢を計画し、西側の追加の軍事支援を待った。その間、ロシア軍は徹底した防衛ラインを構築した。ウクライナ北東部のハルキウ・ルハンスクの国境から南部のヘルソンまで続く約900キロメートルの戦線に沿って陣地を強化したのだ。

 軍事アナリストは、現在反転攻勢中のウクライナ軍は、ロシアの地雷や対戦車障害物をはじめ、ドローンや砲、ヘリコプターなどが援護する広範囲な塹壕、掩体(バンカー)で構成された「厚い防衛ライン」と向き合っていると指摘する。そうしたなか、最大の問題は、なにより「時間」だ。重要な進展を達成できる夏は数カ月しか残っていない。国防アナリストで英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・クラーク元所長は、ウクライナの反転攻勢は、ロシアの防衛状態を調べて弱点を把握する第1段階と、大規模な兵力を投入する第2段階で構成されているが、第1段階に非常に長い時間が費やされていると述べた。クラーク元所長は「第1段階があまりに長く続けば、第2段階を開始するまでの時間が足りなくなる」としたうえで、場合によってはウクライナが時間的圧力を感じ、第2段階で用いる兵力を計画よりはやく配置することが起こりうると述べた。実際に意味のある反撃を行う際、兵力が足りなくなる可能性があるという指摘だ。

 「天候」も問題だ。土地が泥沼に変わりぬかるむ秋になれば、攻撃は「事実上不可能」になるほど難しくなるためだ。軍事専門家でロチャン・コンサルティング会長のコンラッド・ムジカ氏は「天候が常にカギ」だとしたうえで、「ウクライナが砲弾と銃を使い尽くす前まで、そして、地面がふたたび非常にぬかるむことになるまで、3カ月しか残っていないと言っても過言ではない」と予想した。ムジカ会長は、ウクライナ軍は今後前進を続け、ゆっくりと塹壕を一つずつ修復し、同時に北側からのロシアの戦力が低下するよう願うしかないとしたうえで、「それがどれだけ成功するかは分からない」と述べた。ムジカ会長によると、今後2、3カ月の間に「動きのない消耗戦」が行われるものとみられる。

 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「戦線での状況は、まもなく変わるだろう」と主張した。ゼレンスキー大統領は21日、「アスペン安全保障フォーラム」にリモートで参加し、ウクライナからロシア軍を押し出すためのこの数週間の努力が、実際には望んでいたより遅れて始まった点を認めながらも、「我々はすでに一部の地雷地域を通過しており、地雷を除去しているので、関連の(反転攻勢の)措置に速度を上げることができる瞬間に近づいている」と述べた。ゼレンスキー大統領は、これまで弾薬や兵器、適切な訓練を受けた旅団が不足していて、そのためロシアが地雷を敷き防衛ラインを構築する時間を稼いだとして、西側に最新鋭の戦闘機と長距離ミサイルをさらに供給するよう再度要請した。

 そうしたなか、22日、ロシアが占領しているクリミア半島では、17日と19日に続きふたたび爆発が発生した。ロシア当局が任命したクリミア自治共和国のセルゲイ・アクショーノフ首長は、テレグラムの公式チャンネルを通じて、クリミア半島のクラスノフバルジースキー地区のある弾薬庫で、ウクライナのドローン攻撃によって爆発が発生したとして、半径5キロメートル内にいる住民を避難させ、鉄道の運行を中断させたと明らかにした。これについてウクライナは、自国軍がクリミア半島の中部地域の石油貯蔵庫とロシア軍の倉庫を破壊したことを認めた。ウクライナは17日、ロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋をドローンで攻撃し、19日にもクリミア半島内の地域の軍事訓練場を攻撃して爆発・火災が発生した。

ベルリン/ノ・ジウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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行進の冒頭あいさつでは、ドイツ連邦議会のバス議長が「自由で多様性のある社会をつくるには、すべての人が立ち上がらなければいけない」と訴えました。

2023-07-24 08:45:06 | 真の解決目指して

2023年7月24日(月)

独ベルリン プライド行進

全ての人が暮らしやすい社会へ

写真

(写真)22日、ベルリンで行われた「プライド行進」(吉本博美撮影)

 【ベルリン=吉本博美】ドイツの首都ベルリンで22日、欧州最大規模の「プライド行進」が行われました。ベルリンでは6月末からの「プライド月間」で、多様性やLGBTQなど性的少数者に関する啓発企画が連日行われ、22日の行進が締めくくりでした。主催者によると約50万人が参加しました。

 行進の冒頭あいさつでは、ドイツ連邦議会のバス議長が「自由で多様性のある社会をつくるには、すべての人が立ち上がらなければいけない」と訴えました。

 ベルリンのウェグナー市長は性的少数者への差別事件が近年増加していると懸念を表明。性別や性的指向、人種、出身、信仰、政治的見解などを理由にした差別を禁じたドイツ基本法第3条について、性自認も含める改正を求めると述べました。

 多くの参加者が虹色の旗やグッズを身に着け、笑顔で市内を歩きました。宣伝カーが音楽とともに「誰もが平等に生きる権利がある」「自分を愛そう」とのメッセージを響き渡らせました。

 市内在住の看護学生ソフィー・クレシュラーさん(23)は「全ての人が本当に暮らしやすい社会をつくるために市民と政治家にはもっとできることがある」と述べ、行進への参加は行動の一つだと話しました。

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小学校教員15年目のKさん(42)は21日、瑞草区(ソチョグ)の小学校前でハンギョレの取材に応じ、「ほとんど育児に該当することを(教員に)求める保護者が多い」とし、・・・

2023-07-23 08:45:06 | 韓国を知ろう
 

「小学校教員は365日『苦情ブラックホール』…

不合理にも防御手段なし」=韓国

登録:2023-07-22 00:29 修正:2023-07-22 09:21
 
瑞草区の教員の死に同僚教員たちの怒り 
「ほぼ育児を求める保護者が多い」 
教育界「校内に公式の請願窓口を作るべき」
 
 
1年生の担任教員が校内で自殺する事件が起きたソウル瑞草区のある小学校の校門に、多くの市民による故人を追悼するステッカーと造花が並んでいる=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 「(児童の親が)週末にも電話をかけてきて、『(子どもに)自転車を危険な場所で乗らないように言ってほしい』と何度も言われた」

 小学校教員15年目のKさん(42)は21日、瑞草区(ソチョグ)の小学校前でハンギョレの取材に応じ、「ほとんど育児に該当することを(教員に)求める保護者が多い」とし、昨年言われた保護者の苦情について語った。Kさんは「ささいな苦情のような連絡が多すぎるため、他の子どもたちを教えることに気が回らず、保護者の要求ばかりを聞かなければならない状況になった」、「一度でも変なことを言ったら児童虐待として問題が拡大することもあるし、『なぜ干渉するのか』と言われたりもする」と語った。

 ソウル瑞草区のある小学校の1年生の担任教員が保護者との葛藤の末に自殺したという疑惑が持ちあがったことに伴い、多くの現職の教員が「学校で保護されずにいる」と訴えている。特に教員たちは、メッセンジャーなどの登場でコミュニケーションが便利になったことで、保護者たちが直に、かつ頻繁に苦情を訴えてきている一方で、学校や教育庁ではなく現場の教員がそれら全てに対応しなければならないようになっていることが問題だと指摘する。

 校内暴力を担当した経験のある中学校教員2年目のAさんは「苦情が1年365日、24時間くる。連絡は(個人の電話ではなく)学校の電話だけにしてほしいと言うと『保護者に抗議』したことになる」、「たまに教頭が苦情に対応してくれたりもするが、善意に頼らなければならない」と話した。そして「告訴も2件された。教育庁に教権担当の弁護士がいるが、できることはあまりないという。教員は現在のところ防御手段がない」と指摘した。

 子どもが幼く、親も保護者としての経験がまだ浅い小学校は「苦情のブラックホール」だと吐露する教員は多い。「ネイバーのバンド(ネイバーの提供するオンライン・コミュニティー・サービス)を作って子どもたちの写真を載せてほしい」と、一挙一動を報告しろというような要求も多いという。ソウル江西区(カンソグ)のある小学校の教員Bさん(30)は、「小学校教員は苦情窓口だ」、「担任が電話に出なければ職員室が出てつながれてしまうため、(保護者の苦情を)避けられる環境ではない。ひどい時は、学校の外で起きた事件も担任に解決してほしいと言ってくる」と語った。

 学校や市・道教育庁が保護者の味方ばかりしているという不満も多かった。京畿道で国語の教員として15年目になるLさん(45)は、「同僚の教員がトラブルメーカーの子どもをかばい続けていたら、その子が窃盗まで犯したので結局怒ったところ、保護者に言葉の暴力教師だとして通報された。明らかにその子には過ちがあったのに、教員の言動だけが問題になったため、結局その後は担任ができなかった」、「保護者の話に耳を傾けるべきなのは当然だ。しかし不合理な主張を展開されても、問題が大きくなることを望まないため、教員たちに一方的に『忍耐』を要求する雰囲気がある」と話した。

 教育界からは、保護者が教員個人に直に問題を提起するというやり方は改善すべきだとの声があがっている。市民団体「良い教師運動」は「校内に公式の苦情窓口を作り、教育活動に問題があった場合に意見を開陳する窓口を一元化することが望ましい」と述べた。

 しつけの過程でふくらむ児童虐待批判を減らすために「行動調整官」制度の導入が必要だという声もある。米国では教員に児童を隔離する権限を付与しており、直接的なしつけ権は教員とは別の「行動調整官」が行使する。光州教育大学のパク・ナムギ教授は「正当な生活指導をしているにもかかわらず、教員が児童虐待で告訴されるケースは多い」とし、「この制度は教員が直接の訓戒などの言動をとる過程で発生しうる児童虐待、あるいは暴力行使の可能性を予防する」と指摘した。

 教育政策デザイン研究所と「真の教育のための全国保護者会」は、この日発表した声明で「各学校に紛争調停の専門家を配置するほか、法的紛争が生じれば学校次元で顧問弁護士が積極的に対応するシステムなどを構築すべきだ」と提案した。

クァク・チンサン、パク・コウン記者、パク・シウン|教育研修生 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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