空想映画でしか見られない氷河のない地球が現実化するのではないかと心配される。

2021-07-18 16:32:16 | 温暖化現象が原因、脱炭素目指して
 

猛暑、台風、豪雨の「トリプル異常気象」…今後は毎夏やって来る

登録:2021-07-17 03:04 修正:2021-07-17 08:24
 
これまで経験したことのないこの暑さ、程度が異なるだけで、すでに経験 
「一方ではヒートドーム、もう一方では集中豪雨」など、今後は日常化 
朝鮮半島でこの100年間、階段式の「気温上昇」持続…「カーボンニュートラルは必然」
 
 
梅雨の影響で集中豪雨に襲われた3日、三陟市の臨院港の一部が浸水した=三陟市提供//ハンギョレ新聞社

 数万年前の氷河期は、46億年の地球の歴史上、最も寒かった時期に属するという。人類が地球の支配者となった今はその時代よりずっと暖かいが、それでも寒い時期に属するというのは同じだ。2021年6月からロシアのモスクワでは摂氏30度を超える高温が、カナダ西部のブリティッシュコロンビアでは摂氏50度近い猛暑が続き、まるで地球に火がついたように水銀柱が上がっているが、いったいどうなっているのかと問う人がいることだろう。真夏でもエアコンをつけずに暮らせる地域で熱の爆弾が爆発したのだから、そのような疑問がわいてもおかしくはない。しかし、気象観測データは嘘をつかない。

気象観測データは嘘をつかない

 産業革命後、二酸化炭素などの温室効果ガスが大気中に多く排出され、その結果、温暖化が進んでいる。地球温暖化は、従来とは異なるかたちの緯度間のエネルギー不均衡を生むため、大気における熱の流れのあり方と強さを変え、必然的に気候変動を引き起こす。川に積もった大きな石の塊によって水流やそ速さが変わり、水流の弱まった所に砂や土が積もって流れをさらに遅くするように、温室効果ガスが増加することで、地球大気にも同じ現象が引き起こされる。大気の流れが弱まった地域では、現在の北米の西の地域で見られるように、ブロッキング(大気の停滞)による「ヒートドーム現象」が引き起こされる。ブロッキングの一方では、集中豪雨が引き起こされたり、台風が強く発達したりする可能性がある。

 ここ数年の韓国の夏の気候を思い出してみよう。2018年には大気の停滞によりヒートドーム現象が起きた。夏の平均気温、猛暑の日数、熱帯夜の日数は1994年の記録を更新し、過去最高となった。夏に涼しい場所として知られる江原道洪川(ホンチョン)の気温は41度に達した。2019年には1904年の気象観測開始以来もっとも多い7つの台風が韓国に影響を及ぼした。多くの場合、韓国に接近する台風は5つ、上陸するのは2つであることを考えると異例の多さだった。

 2020年の梅雨は8月15日に終わり、史上最も遅い梅雨明けと記録される。気候的に梅雨が明ける時期である7月25日頃に始まった集中豪雨は、梅雨が明けるまでの約20日間、全国に水爆弾をもたらした。蟾津江(ソムジンガン)が氾濫し、全羅南道求礼(クレ)が水に浸かり、隣の慶尚南道河東(ハドン)でも似たような洪水が発生した。

 しかし、この災害は異常気象だけでなく、管理ミスという要因も大きく作用したようだ。2020年の夏に見られた集中豪雨のあり方が例年と大きく変わっているわけではないからだ。韓国の梅雨の降水分布を時間ごとに見てみると、早朝と夕方に集中するようだ。午前にのみ雨が集中する年がある一方、午前と午後の両方で雨が集中する年もある。洪水被害の大半は、午前と午後に集中豪雨が発生する年に引き起こされる。2020年がまさにそのようなケースだった。単に降水量が多く、地方自治体と治水担当機関による効率的な水管理が行われなかったため、被害が大きくなったのだ。

 
 
ソウルの夏の気温。青の実線は観測データ。オレンジの点線は気候モデルによる予測(縦軸:温度、横軸:年度)//ハンギョレ新聞社

2100年の地球の平均温度は18度?

 2018年の夏の暑さは、大気の停滞や北太平洋高気圧の張り出しなどの面で1994年と似ていた。台風の多数上陸も、1959年と1991年にすでに経験している。このようにこの3年間に起きた夏の異常気象は厳しかったものの、かつてなかったことが起きていたわけではない。猛暑、台風、そして集中豪雨が連続して発生したため特異に感じられるのだ。

 世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が1988年に設立した「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、過去30年あまりの間に気候変動に関する報告書を5回出版している。これらの報告書で大気科学者たちは一貫して、温室効果ガスを大きく減らさなければ、今世紀中に深刻な地球温暖化が引き起こされ、人類の生存に致命的な影響を及ぼす気候変動は避けられなくなると警告している。米国のスミソニアン博物館に記録されている最近5億年の地球の気温の変化を示すデータによると、北極と南極の氷河の存在の有無の基準点となる温度は摂氏18度ほど。現在の地球の平均気温は15度だから、まだ3度の余裕があるわけだ。しかし、子孫が生きるべき2100年の気温は? 今の趨勢が続いて気温が高まれば18度に達すると予想される。空想映画でしか見られない氷河のない地球が現実化するのではないかと心配される。

 韓国で旧韓末から観測されている気象データを眺めていると、面白い現象が発見できる。夏と冬の気温が線形的には高まっておらず、階段を上るように急に高まり、その状態がしばらく続くのだ(図参照)。季節や地域によって差はあるが、ここ100年あまりの間に1段または2段の階段を上がってきたようだ。階段を上がるたびに、以前の時期には高いとされていた気温が平均となった。そのため階段を2段上がると、最高気温が平均となった。IPCCの気候モデル展望によると、今から20年後の2040年頃にはソウルの気温が一段上がるという。2018年に経験した夏の蒸し暑さが日常化するのだ。

 地球温暖化とこれに伴う気候変動を防ぐ方法はあるのだろうか。このところ政府が野心的に推進している2050年のカーボンニュートラル達成、すなわち炭素排出ゼロを実現すれば可能なのではないか?米国や中国などの温室効果ガス排出の主要国もカーボンニュートラルプログラムに積極的に参加し、現実化すれば可能なのではないか? 全国民の希望に冷水を浴びせる話だが、それでも気候変動は止まらない。現在、大気中に排出されている二酸化炭素が2100年以降も大気中に残るからだ。さらに衝撃的なことは、世界で最も強い偏西風帯にある韓国には気候変動の影響が強く現れるとの見通しだ。

最善は、うまく予測して被害を最小化すること

 産業革命当時、大気中の二酸化炭素量は280ppmv(空気を構成する分子100万個当たりの二酸化炭素分子の個数が280個)だった。現在は420ppmvで、この250年で50%も増加している。化石燃料の使用を大きく減らさない限り、二酸化炭素は毎年1%ずつ増加し、2050年には550ppmvを超えるだろう。2050年にカーボンニュートラルを達成しても、これまでに積もり、今後の約30年間でさらに積もる温室効果ガスの影響で、気候変動は必然的に起こらざるを得ない。

 では、私たちには何ができるのだろうか。夏になると繰り返される猛暑と台風、そして集中豪雨の発生をうまく予測し、その被害を最小限に抑えるために備えることが最善ではないかと思う。

ホ・チャンフェ|ソウル大学地球環境科学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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