「金正恩(キム・ジョンウン)委員長は2018~2019年に韓国との関係正常化のために前例のない措置を取り、多くの部分において韓国に手を差し出したが、彼が見せた善意は適切な反応を得られなかった」とし・・
駐北朝鮮ロシア大使
「米国が挑発を続ければ、北朝鮮の核実験強行もあり得る」
ロシアのアレクサンドル・マチェゴラ駐北朝鮮大使が「米国が朝鮮半島域内で挑発的な措置を続ければ、北朝鮮がさらなる核実験を敢行しうる」と警告した。
マチェゴラ大使は7日、ロシアのタス通信のインタビューで、「北朝鮮がさらに核実験を行うかどうかは、朝鮮半島の軍事・政治的状況がどのように展開されるかにかかっている」とし、「米国と韓国の核抑止力の拡大や北朝鮮に対する挑発的措置が続いた場合、北朝鮮の指導部は国防力を強化するために新たな核実験(の実施)を決めるかもしれない」と主張した。北朝鮮がさらに核実験を行うことになれば、7回目の核実験となる。北朝鮮の追加の核実験については2022年から「差し迫っている」という分析が続いてきた。
マチェゴラ大使はさらに、「北朝鮮は戦争を目指していない」としながらも、「今年が韓国にとって平和な年になるか、あるいは軍事的衝突が起きるかは、全面的に米国にかかっている」とし、米国に狙いを定めた発言を続けた。マチェゴラ大使は「朝鮮半島(の危機)状況は主に米国の冒険主義政策が原因で起きる」としたうえで、「イエメンのフーシ派を爆撃した米国が中東でおこなったことを考えると、極東で似たような攻撃をしないと誰が断言できるだろうか」として矛先を向けた。また、米大統領選挙の共和党予備選挙候補として出馬したニッキー・ヘイリー元国連大使がイラン指導者の暗殺を促し、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)コッズ部隊を率いたカセム・ソレイマニ司令官がドナルド・トランプ大統領時代に米軍によって殺害された点を取り上げ、「米国人が北朝鮮に対して似たような目標を持っていないと確信できるのか」と問い返した。北朝鮮に対する「挑発的措置」の例としては、米空軍の戦略爆撃機が朝鮮半島上空を飛行し続ける行為を挙げた。
注目が集まっているロシアのウラジーミル・プーチン大統領の北朝鮮訪問問題については、時期については言及せず、平壌(ピョンヤン)を訪問する際に署名する「相互観光活性化共同文書」などに関する準備作業が行われていると語った。先月、クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、プーチン大統領の答礼訪問がロシア大統領選挙(3月15~17日)後に行われると述べた。
さらに、マチェゴラ大使は、南北関係に対する北朝鮮の態度についても言及した。マチェゴラ大使は「金正恩(キム・ジョンウン)委員長は2018~2019年に韓国との関係正常化のために前例のない措置を取り、多くの部分において韓国に手を差し出したが、彼が見せた善意は適切な反応を得られなかった」とし、「時間がたってしまったことで、戻る道はない。少なくとも今、北朝鮮の友人たちはそう考えている」と述べた。タス通信はこれについて「マチェゴラ大使は『北朝鮮当局は韓国と統一を成し遂げられる時間が過ぎたと考えている』と語った」と分析した。マチェゴラ大使は、南北経済協力と関連した合意は、当時米国が反対し、韓国があえて異議を唱えることができなかったため実行されなかったと指摘した。
実際、金正恩委員長は2018~2019年、2回の南北首脳会談と3回の朝米首脳会談に応じた。しかし、2019年2月末にハノイで行われた2回目の朝米首脳会談で、北朝鮮の核開発の象徴である寧辺(ヨンビョン)の核施設を諦める代わりに、2016年から続く国連安全保障理事会の決議による制裁を解除しようとしたが、失敗に終わった。その後、朝米対話は事実上断絶しており、南北間でも意味ある意思疎通が行われていない。金委員長は先月15日、最高人民会議の施政方針演説を通じて南北関係を「敵対的な二国間関係」と規定するなど、韓国との完全な断絶を宣言した。