「今、日本の政治に求められているのは、岸田首相が東アジアの平和と安全に関するビジョンをしっかり持ち、それに基づいてバイデン大統領と習主席双方を説得する度量と能力を持つこと」だと指摘した。

2022-01-26 08:39:29 | これが岸田・元安倍内閣の本質
 

日本、専守防衛の原則破りついに

「敵基地攻撃能力」を手に入れるか(2)

登録:2022-01-25 06:44 修正:2022-01-25 09:5
 
 
       日本陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾=日本陸上自衛隊提供//ハンギョレ新聞社

(1から続く)

 この立場に本格的な修正を加え始めたのが安倍晋三首相(当時)だった。中国の浮上と北朝鮮の核開発で日本に対する脅威がますます高まっている状況で、決断を下さなければならないと判断したのだ。日本はこのため2018年の防衛計画大綱に敵の攻撃範囲外からミサイルを発射できる「スタンド・オフ(stand-off)防御能力」を確保すると明記した。これに伴い、米ロッキードマーティン社の「長射程合同空対地ミサイル」(JASSM-ER)と「長距離対艦ミサイル」(LRASM)の導入を決定した。日本の戦闘機に同ミサイルを搭載して発射スイッチを押せば、九州や沖縄で北朝鮮と中国の内陸を攻撃できるようになる。このミサイルの導入で、日本は表向きには曖昧さを維持しながらも、「事実上」敵基地攻撃能力保有の線を越えた。

 その後、安倍首相は、日本がこれまで維持してきた曖昧さから脱し、本格的に敵基地攻撃能力を持つことを決心する。自民党政策調整審議会傘下に設置されたミサイル防衛検討チームは2020年8月4日、「相手領域(領土)内でも弾道ミサイル等を阻止する能力を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みが必要だ」として、「敵基地攻撃能力」を政府に提言した。だが、安倍首相の健康問題が足を引っ張った。持病の潰瘍性大腸炎が再発した安倍首相は退陣直前の2020年9月、異例にも個人談話を発表し、「(ミサイル)迎撃能力を向上させるだけで、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか」と問いかけた。防御だけでなく攻撃手段を検討する時が来たと主張したのだ。

 誰も予想できなかった安倍首相の退陣で「敵基地攻撃能力」論議が宙に浮いた後、安倍政権の後を継いだ菅義偉首相は、新型コロナウイルス感染症の対応に追われ、内容をこれ以上進展させることができなかった。この議論を引き継いだのが岸田現首相だ。岸田首相は昨年10月の自民党総裁選挙で「敵基地攻撃能力保有を含め、抑止力として用意しておくことは考えられる」と述べた。

 日本は敵基地攻撃能力を確保できる主要手段として「12式地対艦誘導弾」の改造に力を入れている。日本政府は現在200キロメートルの射程を5倍長い1000キロメートル以上に増やし、地上、艦艇、戦闘機に搭載して2020年代後半までに実戦配備する計画だ。開発費だけで総額1000億円が計上されている。また自衛隊の主力戦闘機F-15に、すでに導入を決めた「長射程空対地ミサイル(JASSM-ER)」を搭載し、ステルス能力を備えたF-35には合同打撃ミサイル(JSM)を搭載する計画だ。

 しかし、このような動きには懸念の声も高まっている。日本総合研究所国際戦略研究所の田中均理事長は最近、毎日新聞への寄稿で、「敵基地攻撃能力」について、互いに強硬策に走りそれが衝突につながる可能性があると警告した。さらに「台湾を巡る衝突の可能性が高まり、日米と中国の関係が決定的対立に至るといったことは排除されない」としたうえで、「あまり『台湾有事』を軽々に語るのではなく、台湾有事を避ける静かな外交を展開していくべき」だと強調した。山崎拓元自民党副総裁も同紙への寄稿で「今、日本の政治に求められているのは、岸田首相が東アジアの平和と安全に関するビジョンをしっかり持ち、それに基づいてバイデン大統領と習主席双方を説得する度量と能力を持つこと」だと指摘した。

 このような懸念の声にもかかわらず、日本の敵基地攻撃能力保有の流れは止められない状況になっている。日本政府は26日、国家安保戦略の改正や敵基地攻撃能力などを議論するため、初の専門家会議を開く予定だ。

東京/キム・ソヨン特派員`(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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