ジョー・バイデン米大統領が即時報復攻撃を誓い、米国など西欧とタリバンおよびイスラム主義武装グループの間で複雑で微妙な葛藤と力関係が揺れ動くものとみられる。

2021-08-29 06:27:54 | アメリカの対応

「イスラム内部の敵」ISホラサン州のテロ…

タリバン統治、初めて試される

登録:2021-08-28 09:40 修正:2021-08-28 14:59
 
[イスラム国アフガン支部のホラサン州(IS-K)カブールテロ]
 
 
   イスラム国ホラサン州(IS-K)がインターネット宣伝メディアに掲載した写真//ハンギョレ新聞社

2015年、イスラム国アフガン支部として結成

 アフガニスタンを再度掌握したタリバンの統治に対する最初の挑戦は、西側などの外部ではなく彼らが成長したイスラム主義勢力の内部から出た。

 イスラム国(IS)アフガン支部の「イスラム国ホラサン州」(IS-K、以下「ISホラサン州」)は26日(現地時間)、全世界の関心が集中した混乱のカブールのハーミド・カルザイ国際空港近くで2回にわたる自爆テロを行い、政局を安定させようとするタリバンに一撃を加えた。ジョー・バイデン米大統領が即時報復攻撃を誓い、米国など西欧とタリバンおよびイスラム主義武装グループの間で複雑で微妙な葛藤と力関係が揺れ動くものとみられる。

タリバンを離脱した過激隊員が主軸

 「ISホラサン州」はイスラム主義勢力内でタリバンの最大のライバル勢力であり敵対勢力だ。イラクとシリアでカリフ国家を僭称した最大イスラム主義武装勢力「イスラム国」(IS)が猛威を振るった2015年、アフガンの支部として結成された。ISホラサン州は主にタリバンから離脱した過激な隊員で充員され、アフガンでも最も極端で暴力的なテロ武装集団として言及される。西側当局ではイスラム国を以前の名称である「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS)と呼んでおり、西側ではISホラサン州も「ISIS-K」という略称を使う。

 当初からアフガン内のタリバンのライバル勢力として発足したISホラサン州は、タリバンがカタールのドーハで米国との平和交渉を推進すると、強く非難した。タリバンが「華麗なホテル」で敵と内通し、ジハード(聖戦)を放棄しているという主張だった。彼らはここ数年間、女子学校や病院を攻撃し、さらに産婦人科病棟まで攻撃して妊婦や看護師を殺した。2019年8月、カブールの結婚式場で自爆テロを行い、63人の命を奪い、昨年11月、カブール大学でも銃撃テロを加えて20人あまりを死亡させた。

米国と交渉したタリバンも敵視

 ISホラサン州の根拠地はアフガン東部のパキスタン国境地帯のナンガルハールで、同地域の麻薬密売と関係がある。全盛期だった2016年には武装隊員が3000人にまで達したが、米国とアフガン政府軍の掃討作戦が始まるとともに、タリバンと衝突したことで、現在は500~1000人程度と推算される。

 しかし、ISホラサン州は既存のタリバン隊員の中でも経験豊富な武装隊員で構成されているうえに、非妥協的なジハードを追求する人々だ。国連の報告書によると、2020年6月に新しい指導者としてシャハブ・ムハジルが就任したことで、米国と平和交渉を推進したタリバンの穏健路線への旋回に不満を抱いた隊員の引き抜きがさらに加速したと評価している。

 タリバンとISホラサン州はアフガン東部で直接衝突したが、両勢力の間の連携性が完全に遮断されたわけではない。タリバン内の一分派である「ハッカーニ・ネットワーク」がそのつなぎ目として知られている。ハッカーニ・ネットワークは、タリバン内でも国際的なテロネットワークが強い勢力であり、早くからアルカイダとも緊密な関係を結んでいた。ハッカーニ・ネットワークはタリバンとISホラサン州との間のグレーゾーンとも分析される。

 アジア太平洋財団のテロ分析家サジャン・ゴヘル博士はBBCに対し、「2019年と2021年の間に行われたテロ攻撃の一部はISホラサン州、タリバンのハッカーニ・ネットワーク、パキスタンに基盤を置く他のテロ組織間の協力があった」と指摘した。現在カブールの治安は、ハッカーニ・ネットワークの首長であるハリル・ハッカーニ師が担っている。米国は、懸賞金500万ドルをかけてハッカーニ師を国際テロ分子として指名手配中だ。タリバンがカブールに進攻する過程で、プルチャルキ刑務所から多くの収監者が釈放されたが、その中にはISホラサン州とアルカイダの隊員もいた。

 
 
   イスラム国ホラサン州(IS-K)がインターネット宣伝メディアに掲載した写真//ハンギョレ新聞社

タリバン、IS-K掃討時は内外で対立

 米国はすでに数日前からISホラサン州のテロ攻撃を警告してきた。外国人とアフガン協力者の疎開をめぐってタリバンと米国など西側が対立している状況であるうえ、カブール空港周辺の阿鼻叫喚の状況自体がテロ攻撃に踏み切るには最適の条件だからだ。

 今回のテロ攻撃後、タリバンにとっては直ちにイスラム主義武装勢力を統制することが急務として浮上した。タリバンは米国とのドーハ平和協定で「アフガンをアルカイダなど国際テロ組織のテロ発進基地として利用できないようにする」と合意した。米軍撤退を引き出した核心である同事案は、タリバンが正常な国家の政権と認められ、戦後の再建に必要な国際社会の支援を引き出す上でもカギとなる。しかし、タリバンがISホラサン州の掃討作戦を強化すれば、内部のハッカーニ・ネットワークやアルカイダなどとの関係にも影響を及ぼすことは明らかだ。これはタリバンの内外で大きな反発と軋轢へとつながる可能性がある。

「報復誓う」米国との協力のきっかけになる可能性

 性急な撤退決定でタリバンのカブール掌握を早めたという国内外の批判に直面したバイデン政権も、四面楚歌の状態に追い込まれている。共和党のケビン・マッカーシー下院院内代表は、アフガンからすべての米国人が撤収するまで軍撤退を延期する立法を求め、同党のベン・サース上院議員は米軍がカブール空港周辺の外にまで統制権を拡大するか、バグラム基地を再回復すべきだと主張している。

 しかし、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、今月31日の軍撤退期限を固守すると繰り返し明らかにした。撤退期限を延期することはカブールの混乱を持続させ、テロの条件をさらに強化することであり、米国もタリバンも現在としては受け入れがたい状況だ。バイデン政権はそれまでに疎開作戦を無事に完了する一方、今回のテロに対する報復も示さなければならないという「ジレンマ」状況に置かれている。

 ただし、こうした状況がむしろ米国とタリバンの間に「共通分母」を見出す契機として作用するという評価も出ている。バイデン大統領が誓った報復はタリバンの協力なしには不可能であり、タリバンもこの機にアルカイダなどとの関係を遮断する大義名分にするという分析だ。これはタリバン指導部の穏健化をさらに促進し、西側との協力の輪を作る契機になり得るという、かなり楽観的な見通しだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする