「介護や看病をする女性がいなければ私たちの社会は止まってしまうだろう」
COVID-19が現した介護と看護の価値
ドイツの男女賃金格差は21%
毎年3月8日は世界女性の日
午後3時24分ストライキ・沈黙デモ
ドイツメディア、COVID-19以後
看護・介護人材の重要性を浮き彫りに
政府、介護人材支援法を施行
「看護師はメディアでまともに扱われない。だから、看護師が単に医者を補助する役割ではなく、専門的な多くの責任を負う医療従事者だということを、人々はよく知らない。インスタグラムを通じて看護師の実際の業務と医療従事者が病院で直面する困難を伝えようと思う」
最近、オーストリアのある看護師がインスタグラム(@frauschwester_)のアカウントを作り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生以後に病院で経験する困難について伝えている。オーストリア全域で看護人材の不足により全ての病院が困難を負っており、看護師が超過勤務に苦しんでいると彼女は伝えた。保護装備と消毒剤が配送途中で盗難に遭い、医療従事者の手袋とマスクの交替回数が減ることも発生した。
幼い時から看護師を天職と考えた彼女は、他の職業に悩むことなくすぐに看護師の職業訓練を始めたが、初日から厳酷な現実に向い合わなければならなかった。人手不足の医療現場で患者30人を1人で世話したり、病室の床や医療設備、ベッドの掃除など看護外業務を引き受けたりした。体を触れられたり悪口や性的侮辱を聞くのは日常で、認知症患者を世話している間に殴打されて大怪我をしたりした。このような問題を病院側に話したが変化はなかった。何事もなかったかのように全てのことを受け入れ、毎日あふれ出る仕事をこなさなければならなかった。彼女の投稿は、看護業務に対する重要性を認識してより良い労働条件を保証せねばならないと力をこめて語っている。
「善良な仕事」だが生活の手に余る
欧州も韓国と同様に看護・介護労働者の大多数が女性だ。ドイツ連邦雇用庁の資料によると、看護師・看病人(看護助手)の80%、高齢者介護従事者の84%、保育園で働く保育教師の94%が女性だ。
看護・介護領域の労働環境の改善は「女性ストライキ」(Frauen Streik)の主要テーマでもある。世界女性の日の3月8日、世界約50カ国で女性たちは午後3時24分から職場を離れる。男性と全く同じように働いても賃金が少ない「性別賃金格差」により女性が無報酬で働く時間を基準にストライキをするのだ。1991年の性別賃金格差が18.3%であるスイスで最初の女性ストライキが組織された。ドイツではこの日、多くの女性が街頭に出て「私はストライキ中」とのメッセージを椅子に付けて沈黙デモをする。
昨年、「女性ストライキ」ベルリン支部は、看護師、看護助手、保育教師などと共に看護・介護領域の労働者が瀕している劣悪な労働条件と低賃金問題について伝えた。例えばデモに共に参加した「シャリテCFM」の職員は、ベルリンのシャリテ大学病院の医療器具の殺菌、患者搬送、病院消毒および清掃などを主な業務として担当しているが、時給は11ユーロ(約1万4千ウォン、約1300円)に過ぎなかった。ベルリン支部会員は声明文を出して「彼女たちは社会的な認定と適正な賃金を得ることができないまま『善良な仕事』を行っているが、『善良な仕事』という認識は労働者が暮らすのに何の助けにもならない」とし、「今後、看護・介護労働者に対する低賃金と評価切下げに対抗して闘争していく」と明らかにした。
オーストリアのジャーナリストのベアトリス・フラズル(Beatrice Frasl)は「COVID-19はフェミニズム問題」であることを指摘し、介護労働者の賃金を上げなければならないと主張する。彼女はオンラインマガジン『EDITION F』への寄稿文で「今のように学校と幼稚園が門を閉ざせば、責任感を感じて職場に行くことのできないまま子供の面倒を見たり在宅勤務をする場合、保育と家事を担当するのは誰か」と尋ね、「自宅隔離の場合、介護や看病の業務を抱え込んだ女性がいなければ、私たちの社会はそのまま止まってしまうだろう」と指摘した。
フラズルの記事によると、オーストリアもドイツと同様に家庭訪問の介護を行う福祉士の92.2%、病院のような入院形式の介護サービスを担当する従事者の85.8%が女性だという。COVID-19により介護と看護に対する社会的価値が明確になった今、これらの労働者の処遇改善が行われなければならないというのがフラズルの主張だ。「週35時間の労働時間の保障」「より良い賃金の補償」「性別に偏らない業務配分」などを具体的な案として提示した。
COVID-19によりドイツも危機的状況に陥り、通常よりニュースがより頻繁に報じられているが、ドイツメディアは韓国に比べて看護・介護人材がいかに重要かを持続的に取り上げる方だ。一例として今月23日、ドイツ公営放送「ZDF」は、COVID-19の危機の中で社会システムが維持されるのに重要な職業群に関する資料を発表した。予想通り「医療・看護人材」「保育教師」「高齢者介護人材」「医療補助員(血液検査、患者文書管理、処方箋発行などの業務遂行)」「薬剤師補助員」など大部分が看護・介護領域で働く人たちだった。彼女たちがいなければフラズル記者の指摘通り、私たちはこの危機をどう乗り越えていくのだろうか。
毎日夜9時、医療や看護の人たちに拍手を
看護・介護領域の構造改善は「同一労働・同一賃金」の主要な鍵でもある。いわゆる女性の領域と見なされる産業と職群の賃金が低い「性別賃金格差」が全世界に存在するからだ。
ドイツの性別賃金格差は21%で、欧州平均の16%より高い。男女が全く同じに働いても365日中約77日は女性が無報酬で働くわけだ。これに対してドイツは年が始まってから77日が過ぎた時点の3月18日を「同日賃金の日」(Equal Pay Day)に定めて、関連映画の上映や街頭キャンペーンなど様々なイベントを行っている。専門職女性(BPW)ドイツ連盟が2008年からこのイベントを開催しており、連邦家族・高齢者・女性・青少年省が後援する。
この他にもドイツ政府は看護・介護領域の構造改革のために、今年から「介護人材支援法」(Pflegeberufegesetz)を施行中だ。新法案は過去に分離していた高齢者介護と医療・看護教育課程を統合し、勤労条件を改善する内容を骨子とする。法改正により約14万人に達する教育生は3年間の教育課程を履修し、授業料を政府から支援される。研修期間中に訓練手当ても受給することができる。職業教育を受ければドイツだけでなく欧州連合全体で資格を認められるのも特徴だ。この法案でどの程度、介護領域の労働者の処遇が改善するか分からないが、持続的に法案を改正して構造を変えていこうとする試みがいつにも増して重要に思われる。
最近、ベルリンでは市民が毎日夜9時、苦労している医療や看護の人たちのために拍手と共に「ありがとう!」(Danke schoen!)と叫ぶ感謝の挨拶を伝えている。このように市民が自ら防疫の主体として政府の勧告事項を守って医療従事者を支持している場合、政府と議会は市民の健康と安全のために医療従事者および介護者が適切な労働環境で働くことができるよう、法と政策を用意しなければならない。看護・介護領域の構造改革なしに「同一労働・同一賃金」も成すことはできない。COVID-19が投げかけたもう一つの課題だ。
チェ・ヘウォン:韓国で女性メディア記者と専門職公務員として働いた。現在はドイツのベルリンでジャーナリストとして働き、国際フェミニストグループ「国際女性空間」(IWS)の会員として活動している。ベルリンで会った全世界のフェミニストに関する話とジェンダー問題を伝える。隔週連載。