えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

祭りの四日:しなやかな声

2010年02月26日 | 雑記
ふっふっふっふ。
予想はしておりましたがまだ26日の25時だからいいんだい。
気を取り直してまいります。


上海バンスキングの顔というか、声というか、ともあれこの人なくては
バンスキングがありえない、そんなヒロインが吉田日出子です。
よくよく考えると、私の愛聴している『上海バンスキング』のCDというのは
歌手も役者、演奏者も役者で、一部本職の音楽家が携わっているとはいえ
歌や音楽を仕事としている人たちのものではありません。
それでも惹かれるのは、吉田日出子が役者だからこそだったのではないかと思います。
全ての曲が場面に関わっていて、誰かの背景や心情、周りの状況や雰囲気とともに
歌われなければならなかったからこそ、『上海バンスキング』のタイトルのもと
吉田日出子は歌えるのではないかと思います。そして彼女の声の艶は演技を上回って
のびやかにスピーカーから響いてくるのです。

幕開けにふさわしい「ウェルカム上海」の華やかで余裕たっぷりの色気、
「月光値千金」「あなたとならば」の甘やかでころころした女らしさ、
「素敵なあなた(高音が信じられないほどきれいです)」「港は雨の晩」で鮮やかに
浮き出る頽廃の空気。

もちろん曲そのものの持つ雰囲気とも、バンドとの息とも合っているのですが、
どれを歌っても曲に負けずに歌いこなす吉田日出子にどんどん引き込まれてゆきます。
艶っぽさと可愛らしさを併せ持つ声は、何度聞いてももたれません。
頽廃と言うことばに含まれるささくれのような居直りよりも、冬の寝床のまどろみに
似た穏やかな、でもかげりのある暖かさの際立つ声の歌うジャズは、日本人の耳に
馴染んでちょうどよい。

『上海バンスキング』はミュージカルではなく、ジャズメンたちを描いた中必然として
歌やジャズを取り入れていった結果の歌と俳優でできています。
だから、お話を演じるにあたって、歌自体に何かの役割ががっちりと割り当てられている
というよりは、その場に一番ふさわしい歌・歌い方・演奏の仕方は何か?と丁寧に
作り上げていったから、歌手として歌い上げてかつ「聴かせる」歌になったのでは
ないでしょうか。

CDにはたった23曲しか収録されておりません。先の「海ゆかば」も収録されてはおりません。
(LPにはCD未収録のものも入っていますが)
どう歌うか、吉田日出子。
何を歌うか、吉田日出子。

どきどきします。


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