えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・呑飲薫香

2021年01月01日 | コラム
 凍える寒さに大晦日へ集中した掃除の疲れが溜まり、昨年から引き継いだコロナウイルスの猛威は各地の初詣に牽制をかけ、夜の寒さにかこつけて今年は朝食のあとに一家揃って初詣に出かけることと相成った。新年の朝の用意の中で後回しにされがちな洗濯物を干しつつベランダから下を見下ろすと、酒瓶を抱えたうろうろする人影を見つけて溜息が正月早々にこぼれた。朝の九時にも関わらず既に酒の匂いを漂わせ、そこはかとなく足元がおぼつかない二人はそのうちに玄関へ回ってチャイムを鳴らす。両親が出迎えると一升瓶と同じ大きさのビール瓶がリビングにやってきた。雲一つない晴天下に洗濯物が連なるところ、ビールの栓を開けるので入って来いと手招きされた。
 肌理の細かいビールの泡ときつね色のビールは引き締まった味で、朝一番にお酒をいただくことそのものは毎年のお屠蘇で慣れてはいたものの、これから初詣に行くためにそれぞれが準備していた只中の酒はおめでたいお邪魔虫だった。早速車の免許持ちの断った酒が私の下に回される。飲めないことは無いが強くはない。酒の匂いを口から吐きながら真っ青な空のもとの参拝の列には並びたくない。飲まない奴に呑むのを薦めるのはよろしくない、と既に顔が赤い叔父に真顔で言われたところで、その「飲まない奴」に私は数えられていないため飲め、飲めと繰り返しが耳に刺さる。目の前のグラスを干して洗濯物の続きをすると告げてベランダに逃げた。窓から覗くだに他の家族たちも絡み酒を避けて部屋に戻ったらしいが、叔母は酔っ払ったのよ、と言いながら母を引き留めている。
 早々にアルコールが体に回る。まだ体が赤くなるほどの量ではないが、指先が震えて洗濯ばさみのばねに指を引っ掻けた。新年の真夜中に振る舞われる清酒の、背筋を正す舌先の酔いがただ懐かしかった。

 新年早々に、夜中の参拝の受付をやめたお寺社へ朝から人が「集まる」こと自体が、予想は出来て気持ちも理解できなくはないだろうに、お正月気分を壊さない程度にラジオやニュースでまるで初詣そのものを責めるような言葉に胸が痛みました。「集まる」こと自体はまだまだ注意をし続けなければならないものの、それにかこつけて何かを責め続ける誰かは常に正しいのでしょうか。そうしたわだかまりを昨年に置いていけなかったことは心残りであるものの、だからこそ問題と向き合いながら厳しく律してゆくことが大切な今年なのかもしれません。
 ここをご覧になられている方がどれほどの物かはわかりませんものの、いつも閲覧をいただきありがとうございます。本年も拙文拙ブログをどうぞよろしくお願い申し上げます。

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