えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・今年買って地味に良かったもの

2017年12月23日 | コラム
 そろそろ趣味に「買い物」を追加してもよいのではないかと言い聞かせつつ物を買う歳末を歩き去りながら、盛んに来週から再来週の二週間にかけた買い物への誘導が続くテレビを流し見ながら手元でスノードームに詰まった『バベルの塔』を転がしていた。今年六月の『ブリューゲル展』限定(この言葉はまことにずるい)で売られていた、大きめのスーパーボール程度の小さなスノードームである。私が訪れた時は販売所の真中にレイアウトされながらも誰も手に取る人がいなかったので、哀れみを覚えながらレジに運んで行ったことを覚えている。

 中身の『バベルの塔』はピーテル・ブリューゲルの絵のとおり、途中から作りかけの階層が欠けており、窓も丁寧にちまちまとあけられている。だがいかんせん小さい。細目で見ると食べかけのチョコレートシフォンケーキのようだ。千円を切っていた値段と比すとなかなかの出来だと思う。

 黒地の箱はブリューゲルの肖像画と中身のスノードームを、金色のインクで交互に側面へ印刷した、そこそこ洒落たデザインだった。置く場所もなかったので中身を箱の上に置くとちょうどよい塩梅になる。手持ち無沙汰な時に掌で転がしていると、玉の中で螺鈿色のラメがゆるく流れてこぼれる。液体に渦を作ろうと回しているうちに塔が逆さになっていたりする。壊すよりもこれくらいで済ませる方が平和だったのかもしれない、などしょうもないことを考えながらまた土台を軸に回転させるとラメが塔の周囲に流れ窓の一つにひっかかった。

 好かれもせず嫌われもせず、買って以来同じ場所をバベルの塔のスノードームは何事もなかったかのように占めている。ほどほどの大きさとほどほどの出来、そして掌で転がすことができるという地味な満足が、なんとはなしにモノの性格を語っているようだった。

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