沖縄県国頭(くにがみ)郡今帰仁(なきじん)村は、米軍基地も置かれてないし、今のところ上空をオスプレイも飛ばないようだが、昨年夏、村長自ら先頭に立って普天間飛行場「オスプレイ配備反対」の決起集会を催すくらいには、十分に沖縄県民の痛みを認知している地域だと、筆者は思っている。
当然のように、沖縄戦の惨禍はここでもみられた。その種々のエピソードは古老の話として時折耳にすることがあるが、正確なところは概して文献に拠らざるを得ない。此処は、県北地方の西に突き出た本部半島の半分程を占め、名護市辺野古が太平洋に東面するのに対し、反対側の東シナ海に北面していて、有名な世界遺産、今帰仁城(グスク)跡を山懐にいだき、隣村本部町の、ジンベイザメで知られる水族館を持つ、海洋博公園に通ずる国道沿いに位置する村(そん)である。
海を隔てた古宇利島へ行く、屋我地島からの古宇利大橋や、最近完成した今帰仁村からの橋の上から見るまさにエメラルドグリーンの、晴れた日には透明な海面を見せる海原の絶景は、ここを通る観光客も思わず車を止めて眺めいる見事な「チュラウミ」を展開している。
その今帰仁村の県立高校である北山高校が抜群の速球投手を擁して県春季高校野球を制し、晴れて九州大会への代表権を獲得したのだが、ここを母校とする芥川賞作家目取真俊氏は、gooブログでもお馴染みの「海鳴りの島から」と銘打ったブログにおいて、「沖縄問題」をはじめとする政治・文化・教育等にわたる問題点の指摘、追究、あるいは、種々の情報報告など極めて精力的に潤筆を揮われている。
一昨年の大震災後も本土被災地に飛んで、とりわけ福島の惨状を熱心に報告され、また最近は「高江の様子」と題して、名護市の隣村東村にある高江のヘリパッド建設阻止座り込みに日々参加し、その活動と国による圧政の実態をつぶさに報告されている。
本土の半可通状態にある日本人は、あの「戦争」がここでは今まさに日常近辺に普通に有り、そこから「非戦」が当然に望まれ、戦時の悲惨な経過と結果に打ちのめされた郷土の人々はじめ多くの人間の姿に思いを馳せ、辺野古の海岸に「座り込む」おじいおばあの血を吐く切実な思いに耳を傾け、アメリカ合衆国と日本国が、その化け物じみた権力を振り回して、沖縄いじめに没頭している醜悪な実態を垣間見るためにも、氏のブログはじめ氏の作物に触れて欲しいとつくづく思う。(つづく)