犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>捏造された洪水、東岩取入口は残ったが(その20)

2017年01月20日 | 辰巳ダム
 意見交換会において、「データの捏造」のほか、特に問題として提起されたことは、
(次号以降に)

(辰巳ダム計画(旧)がボツに)
 意見交換会は、7月31日に終了した。翌月の8月17日に、石川県公共事業評価監視委員会(川島良治委員長)が開催され、辰巳ダム計画が俎上にあげられた。
 公開の審議、引き続き非公開の審議、合計3時間以上の審議の後、石川県公共事業評価監視委員会の意見および付帯意見が発表された。
 その様子は、以下のURLで確認できる。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~saigawa/reassessment_z.html

石川県公共事業評価監視委員会意見は、以下のとおり。

1 意見
 住民の生命財産を守るためには犀川の治水対策は重要であり、石川県が進めている辰巳ダム建設事業の継続の方針は理解できる。
 なお、辰巳ダム建設事業については様々な意見もあることから、次の付帯意見について十分に配慮しながら事業に当たられることを申し添える。

2 付帯意見
(1)犀川水系の治水・利水については、浅野川などを含め流域全体の総合的な見地から検討を行うこと。
(2)環境対策については、水質保全に努力し、また生物多様性についての追加調査を行い、貴重種等が確認された場合には保全等の対応に努めること。
(3)辰巳用水については、辰巳ダム建設により影響を受ける区間は出来るだけ復元や移設等に努め、やむを得ない区間は今後の研究や調査に十分供する資料などを残すこと。
(4)上記に際しては、学識者などの意見に配慮すること。
(5)事業全般について、県民の理解を得るよう最大限の努力をすること。

 この「意見」が出された結果、石川県の「辰巳ダム計画」は、一から出直すことになり、「旧辰巳ダム計画」はボツとなった。
 この時に、石川県河川課は失地回復に動き出したが、谷本知事は、一時、辰巳ダム建設中止を考えたようだ。
(つづく)
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辰巳ダム>捏造された洪水、東岩取入口は残ったが(その19)

2017年01月19日 | 辰巳ダム
 冊子『「犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」(平成11年8月■■大学工学部工学博士■■■■)についての意見と反論および問題提起』(1999年(平成11年)11月1日)、中 登史紀
 の指摘の中で、石川県が返答に窮して最も大きな問題の一つとなったのは、「データの捏造」ということだろう。

 ■■工学博士は『所見』で以下のように弁護した。
「大出水には数10年周期の周期性のある可能性が高いことがいわれている(例えば、高橋 裕著「河川工学」東大出版会)ので、本来であれば計画降雨の採用にも数十年間程度の資料を用意することが望ましい。残念ながら、犀川流域でこの条件を辛うじて満たす観測資料は金沢地点のものしかなく、昭和31年まではこのデータにのみ頼らざるを得ないことがわかる。さらにいえば、これをデータの流用というのは当たらない。」

 これに対して、中はつぎのように反論した。
「反論を述べる前に確認しておく。言葉尻を捉えるわけではないが、「これをデータの流用というのは当たらない。」というのは、「データの流用はするが、データのねつ造というのは当たらない。」という意味であろう。以下、「データの流用」の意味について議論したいので確認しておく。
 ダムの計画する時点で十分なデータが無くてやむをえずに既存のデータでやらざるを得なかったことに対して、責任追及するつもりもない。しかし、少ないデータによる解析、データが無く他の地点のデータ流用は、場合によってはとんでもない誤差が生まれる危険性がある、「データ流用」の結果を鵜呑みにするととんでもない間違いを起こすことがある。
 「データの流用」に関して2つの大きな問題がある。一つは解析結果を評価する際に論理的な誤りをおかす点、一つは降雨という自然現象の空間的・時間的変動を無視するという点である(筆者のように内水が専門である場合は、無視しても実用上の支障はあまりない。しかし、外水の場合はこれが大きな問題となる。)」

 「データの流用」が「データの捏造」ではないといっても、「データの流用」によって求められた結果を信頼できる答えだと説明するのであれば、「データの捏造」で騙したことと同じである。

 冊子『「犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」(平成11年8月■■大学工学部工学博士■■■■)についての意見と反論および問題提起』(1999年(平成11年)11月1日)、中 登史紀
は、以下のところでアクセスできる。
http://www.nakaco.com/k_txt1.htm
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辰巳ダム>捏造された洪水、東岩取入口は残ったが(その18)

2017年01月18日 | 辰巳ダム
(1999平成11年、意見交換会)
1999年(平成11年)、意見交換会へ
第1回意見交換会(1999年(平成11年)4月17日)「工事実施基本計画問題」
第2回意見交換会(1999年(平成11年)5月15日)「雨量、洪水問題」
第3回意見交換会(1999年(平成11年)6月5日)「雨量、洪水問題」
第4回意見交換会()「高畠、三千億円の問題」
第5回意見交換会()「環境アセスの問題」
第6回意見交換会(1999年(平成11年)7月17日)「文化遺産の問題」
第7回意見交換会(1999年(平成11年)7月31日)「その他」

 中は、雨量・洪水量問題について、石川県の説明は一般論の域を出ていなかったので、最終の意見交換会において、「辰巳ダムに関する意見交換会の要約と再問題提起」文書を石川県へ提出して、回答を求めた。
 石川県は、河川工学の権威に、辰巳ダム計画に関する文書を依頼して作成して、平成11年8月17日の石川県公共事業評価監視委員会において各委員に配布した。石川県から公表された文書は、大学名、筆者名が黒塗りされていた。
『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」(平成11年8月■■大学工学部工学博士■■■■)』

 1999年(平成11年)11月、中は、冊子『「犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」(平成11年8月■■大学工学部工学博士■■■■)についての意見と反論および問題提起』を作成して反論した。
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辰巳ダム>捏造された洪水、東岩取入口は残ったが(その17)

2017年01月17日 | 辰巳ダム
(1999:石川県と県民との意見交換会へ)
 1998年(平成10年)12月の石川県公共事業評価監視委員会の後、1999年( 平成11年)3月16日に平成12年度第2回石川県公共事業評価監視委員会が開催され、辰巳ダム計画が俎上に載せられたが、辰巳ダムに結論を出せなかった。
 1999年(平成11年)2月2日、 県公共事業評価監視委員会の運営について、石川県内の15の市民団体が昨年の12月の申し入れに引き続き、再申し入れを行った。
 1999年(平成11年)2月23日、石川県公共事業評価監視委員会(委員長川島良治)に対して、反対派県民を代表して「辰巳の会(会長代行 中井安治)」※ は、「辰巳ダムに反対する県民からの意見聴取にかんする申し入れ」を行った。
※:「兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会」の略称。
 1999年(平成11年)3月6日、公共事業再評価に関わる「意見交換会」の実現に向けての予備交渉について、石川県と15の市民団体の代表者との話し合いが持たれた。
 1999年(平成11年)4月3日、辰巳ダム計画に関する「意見交換会」に向けた予備交渉の内容について、石川県河川開発課長米田昭夫と「辰巳の会」碇山洋との間で合意がなされた。

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本日の合意
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記載内容を確認し署名する 平成11年4月3日

 河川開発課長 米田昭夫
 監 理 課 長  多賀久和
 辰 巳 の 会  碇山 洋

1 前回の確認事項の再確認
 (1)今回の意見交換会の性格は、県の方針に対して意見、批判、疑問を持つ市民(以下
 「意見発表者」とする)の意見、批判、疑問及び県側の意見、回答を委員会に伝えるも
  のである。
  (一部報道にあるような「辰巳ダム推進のための意見交換会」ではない。また辰巳
  ダムを中止するための意見交換会でもない。)
 (2)公開で行う。
 (3)監視委員会への報告文書は、県側、意見発表者側合同で作成する。
 (4)委員(特に委員長、副委員長)の出席を得るため、日程調整等最大限努力する。

2 本日の確認事項
 (1)意見発表者は、辰巳ダムに意見、批判、疑問を持つ団体、個人とする。
 (2)意見発表者が意見を出し、県側が回答する形で進める。
 (3)議題
  ①「工事実施基本計画」問題 ②雨量、洪水問題 ③「3千億円」問題
  ④高畠地区浸水対策問題 ⑤環境(アセスメント)問題 ⑥文化財問題
  ⑦共有地問題 ⑧その他
 (4)1回目の議題は、3時間程度を使い、①②とする。
 (5)監視委員会への報告の際の意見発表者側の補足修正発言の可否については、委員長
  と再度相談する。その際、意見発表者側は、最小限の補足修正発言が認められること
  を意見交換会への出席の前提条件としている事を委員長に説明する。
 (6)双方は、意見交換が効率よく進められるため工夫し、県は必要な資料を提供する。
 (7)意見発表者側は、質問等をできるだけ早く事前に伝える。
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(つづく)

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辰巳ダム>捏造された洪水、東岩取入口は残ったが(その16)

2017年01月16日 | 辰巳ダム
(1998:費用対効果について、河川開発課へ公開質問状)
 1998年(平成10年)12月18日に開催された石川県公共事業評価監視委員会土木部会で、石川県が「辰巳ダムの費用対効果は21倍」と説明したことを複数の新聞が報じた。

 分母の辰巳ダム建設費が140億円に対して、分子のダム建設による洪水被害を防止する効果は3千億円と試算。3000/140=21倍。

 異常に高い数値である。一般的に整備が進めば、効率も低下する。犀川では2つの既設治水ダムが築造されていたのだから、3箇所目の治水ダムの費用対効果がかなり低いはずである。桁違いに高い数値21倍を持つ超優良プロジェクトであるわけがないだろう。

 中は、石川県河川課に対して、公開質問状を提出した。提起した疑問は以下のようのものだ。
「分母の建設費は辰巳ダム費用単独であり、イソップ童話のネズミの例えのとおり、すべてを独り占めと考えている。既存の犀川ダム、内川ダム、現在と今後の治水事業のすべてを含めたものではないか。
 仮に、辰巳ダム単独であるとすると、この分子に既存ダムを入れ替えて見ると、犀川ダムの効果も3千億円、内川ダムも3千億円ということにならないか。
 さらに、150年確率の第二辰巳ダムの費用対効果、200年確率の第三辰巳ダムの費用対効果も同様の高いとなるのか。」

 石川県河川課は、翌年に開催した県民との「意見交換会」でこの費用対効果についてつぎのような説明をした。
「辰巳ダムだけの効果を算定するため、平成9年時点での現況河川に対して辰巳ダムの有る無しによる被害軽減効果を算出する手法をとっていることから、辰巳ダムのみの効果が3千億円と試算されているものです。費用対効果=効果(辰巳ダムがある場合)/費用(辰巳ダムのコスト)」と答えた。

 手柄独り占めで、ほかの事業は織りこみ済みで無視である。このような考え方に従うと、犀川ダムも未来のダムもすべて超優良プロジェクトになることに対しては答えがなかった。

 効果(辰巳ダムがある場合)については、氾濫金額が現実の事例と比較して著しく過大に見積もられている。
 また、想定氾濫区域も誤謬がある。複数の箇所で堤防が決壊して流域の全域で浸水すると想定している。一箇所の堤防が決壊すると、他の地点の決壊の危険度は一気に低下する。複数箇所で決壊し、全域が浸水することは、現実にはほとんど起こりえない。ただ、行政が準拠するマニュアルは、非現実であっても可能性の最大限を取る、安全サイドを取るという考え方をとるようだ。
 誤魔化しの種明かしの一端は、梶原健嗣の「八ッ場ダムの費用対効果」で知ることができる。
(出典:『辰巳ダムの「費用対効果」 : 公共事業プロジェクトの費用便益分析事例 』中登史紀 著,2000)
(つづく)
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