JCP市原時夫です

千葉県房総の睦沢町から、政治・経済・歴史・オペラ・うたごえを考えるgabuku@m12.alpha-net.ne.jp

明治維新は何だったか、戦前日本の侵略性を知る 野呂栄太郎

2012年08月20日 | Weblog

 明治維新はなんだったか、日本が侵略戦争をすすめた背景とその残虐性、日本人の集団主義・個人主義の現在は、日本人の社会変革の思想と運動、私の故郷北海道の特殊性など、私の問題意識に一定の答えを与えてくれたのが、雑誌「前衛」の9月号「『戦前の理論誌と野呂栄太郎』1930年代に焦点をあててー 不破哲三」です。
 不破哲三さんは、野呂栄太郎が中心となった「日本資本主義発達史」の策定過程を通じて、当時の理論的な到達点を明らかにしています。
 第一に、戦前日本共産党はコミンテルン(共産主義インターナショナル)という世界の国際組織の支部でしたが、当時の日本社会の分析と民主主義革命の方向は、野呂栄太郎など日本人が独自に解明していたということです。日本は世界的に遅れて資本主義の道を歩み出した訳ですが、社会の発展方向を見いだす力量が日本にはあったということと、その、学問的な土壌はどこからきたのかという問題意識も新たに感じました。
 不破哲三さんは「日本における自主的なマルクス主義研究の強さと高さを示す機会となったということです。『二七年テーゼ』の場合にも、野呂の『日本資本主義発達史』は、国際的な結論の後追いではなく、先行的な研究としての意義を持ちました。『三二年テーゼ』の場合にも、『講座』の仕事はその先行的な研究としての意義を持ち、さらに国際的な舞台での結論を日本自身における日本社会の研究で裏付けるという役割もはたしたのでした」と書いています。
 不破哲三さんは、昨年一年にわたった「古典講座」の中で戦後の旧ソ連の「絶対化」や中国毛沢東派との理論闘争なかで、自主独立の立場を鮮明にして断固たたかった歴史を紹介しています。(前衛7月号)。わたしは、日本共産党としての理論てきな成果にとどまらない、日本人のすぐれた側面として評価すべきではないかと思います。
 第二に、明治維新から日本の侵略性の問題について、私にとっては、新しい発見があったということです。不破哲三さんは野呂栄太郎の論文を紹介する中で「日本帝国主義のとくに著しい侵略性という問題をとりあげ、絶対主義的天皇制の経済的な基盤が、半封建的な地主制にあるだけではなく、天皇制国家が強大な軍事力をつくりあげ、それが必要とする軍需工業を起こすとともに、巨大財閥もその要求に役立つような形で育成・誘導してきた、その事が重要であって、そこに今日の日本帝国主義の基礎がある、こうう見方を展開したのです」 わたしが改めてわかったのは「巨大財閥のこの異常に強大なる独占的支配力はどこから生まれたのか。野呂は、そこに『封建的絶対的官僚』、すなわち天皇制国家の重要な役割があると論じます。」また「三二年テーゼ」の主要な規定の一つとして「日本が資本主義の軌道に移行せる際に天皇制ー反動的な反封建的官僚と地主ーが勝利したことは、帝国主義列強に対する日本の不平等の地位(高圧的条約)を排除せんための初期の闘争に弱い隣接民族を略奪するための闘争という形態を取らしめ、近代的日本帝国主義の強盗政策のために道をひらく結果となった」と紹介している点です。
 不破哲三さんは、「新日本共産党綱領を読む」の中で、「まわりの国ぐにを従属させることで、大国の仲間入りをしようという根性」とその背景を語っていましたが、この本の展開は、日本の侵略戦争を歴史的事実を歴史的に明らかにするという主旨でしたが、侵略戦争に突き進む日本社会の矛盾という視点で、今回さらに深められた気がします。
 なお、歴史的事実という面では、今は亡き 吉岡吉典(元日本共産党参議院議員)さんの「『韓国併合』一〇〇年と日本」(新日本出版2000円)が事実を掘り起こし、歴史的経過事実の前で侵略の意図を解明しています。
 第三に、北海道における明治維新と現在と将来という問題意識です。不破哲三さんは、「講座」に参加した、山田盛太郎さんの著作をとりあげ「山田(盛)の方法論が、日本資本主義の成立の過程であれだけの成功をおさめえたのは、その過程が、イギリスなど先に資本主義化した国ぐにのように自然成長的な過程ではなく、原始的蓄積に必要な諸過程の多くの側面を国が「上から」推し進める形で進行させたことに一つの要因があったように思われます」としています。
 私の育った環境も北海道の官営の払い下げ、移住、政治犯などの囚人労働、たこ部屋、アイヌ民族問題などもこうした、視点から見る必要があるのではないかと思います。
 不破哲三さんは、どうも、数知れない問題意識を持っており、新たに解明すると、さらに新しい問題意識をもって、さらに解明していくという感じがします。
 「多数者革命はどう継承されてきたか」前衛6月号の中でも「日本の歴史は革命の連続なのですが、その中で、新しい支配勢力が自分の政権をつくる時に、最後まで自分の力に依拠して営々と新政権をつくったという例がほとんどないのです。革命の根拠づけがほしい、みんな看板だけでも、古い権力だった天皇家中止の旧秩序の名目を借りて、そこに自分の支配の根拠をもとめようとするのです。」と書かれており、私は非常に重要な指摘だと感じています。
 今の、原発反対やTPPや消費税反対の声と幅広い運動が、こうした日本社会の歴史的な変革のあり方を乗り越える、自覚的な変革者として日本社会が発展できるものとしても、がんばらなければと思います。

 
 

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