<あれも聴きたい、これも聴きたい> 音符は文字、楽譜は文学
皆さん、ギターを練習する時、どんなふうにやっとりますか?
なんでこんなことを言いますかってえと、どうも皆さん、初見があんまし得意ではないように見受けられるのが、ちょっと気になっておるからであります。音符っちゅうのは文字とおんなじでありまして、皆さん本を読むとき、何回も何回も下読みしないと声を出して読めねえなんてことはねえでげしょ?もちろん、知らない漢字が出てきたら、そこでちょっと止まって考えたり、あるいは辞書でも持ってきて調べると思うんですが、普通に読めるところは特別下読みしておかなくたって読めると思うんでごぜえます。
ところが、ひとたびギターを弾くっちゅうことになると、なしてあんなに初見がきかねえのでごぜえますかねえ。それは考げえてみるってえと、おそらくいつも楽譜とギターの指板上のポジションを対比させて練習をなさっていねえんではねえかと思われるんでごぜえますですよ。たとえば指の動きを覚えたら、あとはもうあまり楽譜を見ねえで毎日練習されとるんだろうと思うのでごぜえます。
たしかに自分の前に楽譜を置いては練習するんでしょうが、目はほとんど楽譜を見ておらんのでごぜえましょうなあ。つまり指が動きを覚えたら、後はもうほとんど楽譜を見ねえっちゅうような、そんな練習をなさっとるんだと思うんでごぜえますよ。そういう練習をずっと続けておりますってえと、10年経っても、初めて見た楽譜はまったくの初心者みてえに、ほとんど弾けねえことになっちまうんでごぜえますよ。
ましてやギターの場合は、右指の指定もあるもんですから、もう頭がゴチャゴチャになっちまって、とてもじゃねえが初めて見る楽譜なんざ、はなっから弾けっこねえと思っちまっとるんでしょうなあ。だとしたら、そりゃあ大きな了見違げえってもんでごぜえます。それに、そういう人に限って、楽譜の覚え間違えに気づかずに弾いておられることも多いのは、当ったり前といやあ当ったり前だと思うんでごぜえますねえ。とにかく前にも言ったように、音符は文字とおんなじなんでごぜえます。初めての本を読むのとおんなじように、初めての曲もそれなりに弾けんといけません。そうじゃないと、ひとつの曲を仕上げるのに、まず覚えることから始めんとあかんことになるし、第一ほかの楽器と合わせるなんてこたあ大変なことになっちまうでげすよ。
そったらことねえようにするためにゃあ、どういった練習をしなきゃあなんねえかっちゅうと、とにかくいつも楽譜を見ながら弾くようにしねえとあかんっちゅうことでごぜえます。見ながらったって、ぼーっと眺めとるだけではいけません。(「見る」と「視る」の違い)一音符一音符、ちゃんと頭で認識した上で、自分の指に指令を出して押えていくっちゅうことを繰り返しやらんとあかんのでごぜえます。この最初の音は何弦の何フレット、そのポジションを左のどの指で押える。そして次の音も同じように、何弦の何フレットを何の指で押える、というように、ひとつひとつの音符ごとに目と頭を総動員しながら練習をするのが大切なんでごぜえます。
カレンダーを見た時、1の次にゃあ2がくる。2の次にゃあ3がくると決まっとるもんだから、だれもカレンダーの日にちを順に読んでも、ちゃんと目で認識しねえまま読んじまうのとおんなじで、楽譜も一度覚えちまうと(覚えた気になっちまうと)、次はここ、その次はここと、指の動いていく順番を追って弾いていくだけで、音符の認識がどっかいっちまっとるんではないかと推察するんでごぜえます。
一遍自分の弾いとる曲を、五線紙に書けるかどうか、やってみたらええと思うのでごぜえますが、意外と書けねえ人が多いんじゃごぜえませんか?ギターの演奏を聴いとる人からみたら、まさか自分の弾いとる曲の楽譜を書けねえなんて、思ってもみねえことでごぜえますですよ。
つまり、初見のきかねえ人の共通点は、楽譜に書いてある音符のひとつひとつに対する脳の認識がちゃんとできてねえっちゅうこってごぜえますです。
音符を目で見た時、「あっ、この辺かな?」っちゅうくれえの認識なんでござんしょう。要するに動体視力の訓練が足らんのでごぜえますよ。動体視力っつうても、音符が動くわけじゃねえが、曲が進んで行くから、相対的には音符が動いているのとおんなじことになるんでごぜえますです。動いているものをひとつひとつちゃんと認識できるように訓練をしねえと、いつかも言ったように、10年やっても100を切れねえ下手なゴルファーみてえなもんで、曲を仕上げるのに、えれえ時間と労力が必要になることになっちまうんでごぜえますよ。
おそらく皆さんは、人前でギターを弾く時は、普通楽譜を見ねえで弾くもんだから、楽譜は見ねえでも弾けるようにしとかんとあかんとお考えなんでしょうが、そこがそもそもまちげえのもとなんでごぜえます。
おんなじように、よく自分の指を見ねえでも弾けんとあかんと思っとるお方がおるけども、どうしてそんなことを考げえるのか、了見違げえもはなはだしい。わけがわからんのでごぜえます。剣の達人が、目をつむっても相手を切れるとしたって、目をつむってチャンバラするやつぁいないのとおんなじで、ちゃんと見て弾けば良いのでごぜえますよ。これからは、ちゃんと目を開けて、楽譜と自分の手を見ながら弾くっちゅう癖をつけるようにしておくんなさい。
そして、初めて見た楽譜でも、それなりに弾けるくれえの実力を身に付けておくことが大切でごぜえますよ。
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