<あれも聴きたい、これも聴きたい> 良い楽器とは。第4回
②弦高ができるだけ低いこと。
フラメンコギターのように低くして、びびってしまうようではまずいが、これも許せる範囲で、できるだけ低い方が当然押え易い。
以前、ミューズで演奏されたことのある渋谷 環さんに伺ったら、6弦の12フレットで3.0mmにしているとのことであった。私の所有するヘスス・ベレザール・ガルシア(1974年製)も、どちらかと言えば弦高は低い方だと思うが、同じ6弦の12フレットで3.5mm弱であることを考えると、いかに渋谷さんの楽器の弦高が低いかお判りいただけると思う。
さらに、あまり言われることは少ないのだが、ほとんどの楽器で第1フレットの弦高が高いことが気になっている。第1フレットは、駒が近いので弦のテンションも強く、また、最も使用する機会が多いポジションでもあるので、ここが高いと、かなり弾き難い楽器と感じてしまう。これは、製作家の方々にも、充分注意して製作していただきたいところだ。(ただ、ここを始めから低くしておくと、どうしてもびびり易くなるため、敢えて少し高めにしておられるのかもしれないが)
そして次に、これは意見が少し分かれるかもしれないが、
③弦の張力があまり強くないこと。
弦の張力が強いと、音を出すのにも大きなパワーが必要になるが、その前に、押さえるのにも強い力が要ることになる。
また、力いっぱい弾いた時にびびらないからといって、弦の張力が必要以上に強くてはあまり意味をなさない。
重要なのは、より少ない力で押弦できることであり、軽く弾いても、充分張りのある明瞭な、しかも大きな音が出せることだ。
自分は、弦の張力が強い方が好みだという人がたまにおられるが、それは普段力を入れて弾くクセがついてしまっている、つまり脱力がうまくいっていないという可能性があるので注意した方がよい。
どのような人にとっても、より少ない力で弾けるに越したことはないのである。
それは、どんなによく走る車であっても、エンジンが小さく、重量が軽く、そして燃費が良いに越したことはないのと同じだ。
「これだけ走る車なんだから、燃費が悪くて当たり前だ」と考える必要はない。
さらに、より少ない力で楽器を弾くことができるということは、より疲れ難いということであり、より疲れ難いということはよりミスを起こし難いということに繋がる。疲れれば、集中力も衰え、ミスを起こし易くなるため、スポーツ競技などでは、先に疲れた方が負ける確率は非常に高い。
従って、どんなスポーツ選手も基礎体力を重視するのは、なるべく長い時間体力を維持して、競技中に起こすミスを最小限に抑えるためでもあるのだ。
道具は、それを扱う人間を、可能な限り疲れさせないものが良い。
私の考えでは、現在一般的に見られる楽器のほとんどは、弦の張力が強すぎるようだ。
後に述べるが、弦の張力は思ったより弱くとても押さえ易いが、音には充分張りと音量があるという楽器が、世の中には存在する。
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