2006年6月12日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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先日、間違って最終回(第8回)の冒頭文を第7回の最後に付けてしまい、7回で終わったかのような誤解を与えました事、お詫びいたします。今回第8回で最終回となります。(山下 高博)

7回に渡って「良い楽器」というものについていろいろお話してきましたが、一応今回で最終回をむかえます。これを機会に、ミューズ音楽館において、もっと皆さんとお話できる機会が増えればいいなと考えています。

<あれも聴きたい、これも聴きたい> 良い楽器とは。第8回

私は企業の研究所が使用する計測器や試験機といったものを扱う仕事に長年携わってきたので、何種類かのクラシックギターの音を、計測用のマイクと、音や振動の解析装置を使って周波数解析をしてみたことがあるが、何種類かの楽器を比較してみたところ、一見して高い周波数の成分(分布&パワー)に違いがあると感じられた。
しかもそれは歴然とした違いであった。(この周波数解析とか、各周波数におけるパワーといった用語については、いつか解り易くご説明したいと思っている)
しかしこれは、あくまでも出た音を解析したまでで、無響室で、周りからの反響音を排除して測定したわけではないので、正しい意味での音響解析にはなっていないが、それでもおおまかな違いは確認できたと思っている。

現在は、測定器や測定技術といったものが、一般に知られている以上に発達している。今や計測機器の技術は、人間の感知できない領域まで踏み込んで、我々のまったく知らなかった世界を見せてくれるまでに進歩している。
そういった技術をもってすれば、人間の耳で聴き取ることのできる程度の違いであれば、測定器で確認することは、そんなに難しいことではない。
ただし、そのように出た音のみを解析したのでは、楽器の良否を見分けるには不充分で、同時に弦に加えた力の量も計測、解析しなければならない。
しかも、その時の、基準となる音量や弦に加える力を、正確に同じにする必要がある。その上で、それぞれの楽器音のどのあたりの周波数に顕著な違いがあるか、またその個々の周波数のパワー(レベル)の差はどうか、ある波長からある波長までの間の「カーソル間パワー(量)」といったものがどれほど違うのか、といったことに注目してやる必要がある。

さらに言うと、音の時間経過に伴った周波数解析(周波数解析の三次元表示)や、弦に加えた力と音の時間軸領域での相関関係を解析する必要も生じてくる。
(最後に難解な専門用語が出てきて恐縮ですが、読み飛ばしてください)
つまり、「いかに弾きやすいか」、すなわち「いかに必要とする音量や音色を出し易いか」といったことを計測しなくては、良い楽器とそうでない楽器との差を見出すことはできないということだ。

運転してみれば大きな差を感じる軽四輪車とスポーツカーだが、同じ速度で走っているところを外から見ているだけでは、その差を知ることはできない。
そういったことをしっかり認識した上で正しい解析を行えば、好みに関する問題以外、それぞれの楽器の違いは解明することができるであろうし、良いと感じる楽器の条件というものを、箇条書きにして、数字で挙げることも可能であろう。
しかし、私は、やはり楽器の良し悪しを語る上で、弾き易さは全ての条件に優先すると考えている。
皆さんがギターを選ぶ上で、なんらかの参考になればよいのですが。

内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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