2006年7月19日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 村治奏一ギターリサイタルin大阪

 去る7月16日(日)、大阪府豊中市の大野ホールにて、留学先アメリカより現在帰国中の村治奏一さんによるリサイタルが催されました。小ホールですが200人を超え、超満員になった観客と演奏者本人にとって、酸欠になるのではと懸念されるほどの盛況ぶり。
よって演奏中もエアコンは止められず、換気にも気を遣うなど、主催である大野先生ら関係者のご苦労はいかばかりだったでしょう。そんな中、東京よりおいでになったご両親とご一緒に、久しぶりとなるであろうご子息の演奏を楽しませていただくこととなりました。

 プログラムは20分ほどの休憩をはさんで1部と2部に別れ、1部をF.ソルの練習曲など「4つの小品」、同じく「魔笛の主題による変奏曲」、メルツの「ハンガリー幻想曲」、ポンセの3つのメキシコ民謡より「わが心よ、君ゆえに」、ヴィラ=ロボスの「練習曲1番&4番」、最後にバリオスの「ワルツ第3番&第4番」など、今や定番ともいえるギターの名曲が満載。
 「魔笛・・・」は、前日神戸で行われた彼の師匠でもある福田進一リサイタルでも演奏されたので、はからずも関西におけるほほえましい師弟対決となった格好ですが、今回の村治奏一さんの演奏も、古典の様式をしっかりと捕らえた、師匠に負けずとも劣ることの無い名演でした。
 ポンセのメキシコ民謡は、ギターの作品として書かれてはおりますが、なんともギターでは表現し難い、いわゆる難しい曲。彼村治奏一さんは、それを若者らしくないと言ったらしかられるかもしれませんが、とても情感豊かに表現しています。
また次のワルツ第3番にしても、今回の演奏ほど甘く切なく歌われた演奏を私は知りません。

 休憩の後、開始された第2部は、彼の新しいアルバム、「アメリカ」に収められたジャズやボサノバを始め、限りなく南北アメリカ大陸及びキューバに関する音楽で占められ、会場一杯の聴衆は、彼が今集中しているこれらの音楽によるまさに「音のシャワー」「音の洪水」を浴び、終始ため息と歓声の嵐。
 L.ボンファの生んだボサノバの名曲「リオの散歩道」から始まり、J.モレルの「ダンサ・ブラジレイラ」、ヴィラ=ロボス(ディアンス編)の「ブラジル風バッハ第5番」、同じくディアンス編曲のジャズの名曲「A列車で行こう」、L.ブローウェルの「魔術師の鐘」、
J.イルマル「バーデン・ジャズ組曲」、もうひとつディアンス編「愛の国のシラキュース」、そして最後に演奏者本人編による「ラメントス・モロ」の計8曲がたて続けに演奏され、聴衆は従来のクラシックギターという枠を大きく超えた新しい音楽の世界に堪能することができました。これらの演奏は、全て彼の新しくリリースされたCDに収められているので、皆さんもぜひお聴きになっていただきたいと声を大にしてお勧めしたいのですが、私が言うまでも無く、当日用意された販売用のCDが(かなりの数用意されていたが)全て完売になったことを見ても、彼の演奏の素晴しさがご理解いただけるのではないでしょうか

 アンコールに応えて、バリオスの「最後のトレモロ」、マイヤースのカバティーナ、ディアンス「フォーコ」、そしてタレガの「アルハンブラの想い出」と、本人の弁によれば、3曲しか用意していなかったアンコールを急遽もう一曲追加して4曲行なわざるを得なくなるほどの聴衆の熱狂ぶりでした。特にマイヤーズのカバティーナを演奏中、夕立が降り始め、雷鳴が響いてきたましたが、それがなんともこの曲にぴったりで、この若き天才ギタリストの将来を約束するかのような効果を上げていました。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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