2006年7月12日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 自作自演 編

 ここに自分の作曲した作品を全部自分で演奏したという、いわゆる自作自演を収めたレコードが2種類ある。ひとつは最近とみに演奏される機会の増えたアグスティン・バリオスの2枚組のもの。いまひとつはロシアのピアニスト兼作曲家、セルゲイ・ラフマニノフの「ピアノコンチェルト1番から4番」と「パガニーニの主題による狂詩曲」を収めた3枚組みのもの。(ラフマニノフの方は、CDにもなっておるんでいつでも聴ける)
 どちらも当然モノラル録音だし、あまりええ音とは言えんけども、それでもラフマニノフの方がバリオスのものに比べれりゃあまーだまし。
 ラフマニノフのコンチェルトの録音は指揮者が2人いて、ひとりはユージン・オーマンディ(1番と3番)、もうひとりはレオポルド・ストコフスキー(2番、4番、それに狂詩曲)。しかもオーケストラはフィラデルフィア管弦楽団だもんで、当時の音楽界を考えてみりゃあ、恐らくかなりしっかりした録音スタッフを駆り出して収録したんでねえべがと、想像できる。

 それに比べたらバリオスの方は、レコード録音と言えるかどうか疑わしいくりゃあ状態が悪い。かろうじて何を弾いているのか判別ができる程度と言っちゃあ言い過ぎかもしれんが、かなり状態がよろしくない。時々回転数も怪しくなるが、音も消えそうになることがある。楽器は違えども、この二人の天才プレーヤー兼作曲家。ほとんど時代を同じくして音楽界で活躍しとるのに、世界における二人の置かれた環境の違いと言われればそうかもしれんが、なんともはやバリオスさんがお痛ましくておかわいそう。(トホホ・・・)

ラフマニノフは1873年4月1日、ロシアで生まれ、1943年3月28日、カリフォルニア州、ビヴァリー・ヒルズでおかくれになり、一方バリオスの方は1885年5月5日、端午の節句に南米パラグァイで生まれ(パラグァイじゃあこどもの日なんて関係ねえけど)、1944年8月7日、サン・サルバドールでお亡くなりになっとる。
バリオスに対しラフマニノフは12違いのあにさんということになるもんだから、ラフマニノフが70歳まで生きたのに比べ、バリオスの方は長年心臓を患っていて、59歳の若さで死んじまったのに、お亡くなりになったのは1年しか違わない。やっぱりほとんどおんなじ時代を生きた音楽家っちゅうことになる。

ちなみに、当時同じ時代の空気を吸っておった音楽家を、ちょこっとだけ挙げてみると、少し古くてJ.アルカスが1832年~1882年(50歳)F.ターレガが1852年~1909年(57歳)。I.アルベニスが1860年~1909年(49歳)。C.ドヴュッシーが1862年~1918年(56歳)。E.グラナドスが1867年~1916年(49歳)。M.ラヴェルが1875年~1937年(62歳)。ターレガの弟子のM・リョベートが1878年~1938年(60歳)。同じくD.フォルテアが1878年~1953年(75歳)。A.セゴヴィアが1893年~1987年(94歳)。A.タンスマンが1897年~1986年(89歳)。
セゴヴィアを除きほとんどが演奏家兼作曲家。当世風に言やあシンガーソングライターみてえなもんだ。(セゴヴィアもちょこっとは作曲しとるが、作曲家と呼べるほど専門じゃない)

わたしゃあドヴュッシーやグラナドスの演奏は聴いたことがねえのでようわからんけども(なんでも録音だったか、ピアノロールだったか忘れたけども、CDになって出ておるみてえなので、一遍聴いてみるべえとは思っとるが)、この今回取り上げたバリオスとラフマニノフの自作自演は、驚くほど演奏スタイルが現代風。(のように聴こえる)
ちょこっと古めの演奏家は、例えばピアノにしてもヴァイオリンにしても、はたまたチェロにしてもそうだけんど、もっと演奏が粘っとった。(ような気がする)
ほとんど作曲家の意図は無視して、自由奔放に弾いとる。(ように聴こえる)
今から思えば「そりゃあちょっとやり過ぎだべ」ちゅうくりゃあの演奏をしとる。(ものもある)
演奏なんて何でも自分の好きにすりゃあええとは思うんだども、「おっちゃん、おっちゃん、いくらなんでもそりゃあちょっとやり過ぎでねえが?ええかげんにしたってちょ」って言いたなるくれぇのもんも中にはある。(ような気がする)
それに比べりゃあなんとこのお二人の演奏のシンプルなことか。
意外なくらいネチネチ、ベタベタしたところがなく、爽快に弾ききっとる。
どっちか言やあ先ほど挙げた何人かのシンガーソングライター達(歌わねえけども)の中でも、生まれの早い方の部類だと思うだに、演奏スタイルが21世紀の現代にも充分通用するんでねえべがっちゅうようなかっこ良さが感じられるのはなしてだべ。
なんだかバリオスやラフマニノフに比べたら、セゴヴィアやカザルスの方が、またヴァイオリンのフォイアマンあたりの方がずっと古めかしく聴こえちまうのはなぜでげしょ?このレコードを聴いてみたら、おめえら若きゃあもんも、きっと「どえりゃあかっこええやんか」と、名古屋弁と大阪弁が混じっちまうくりゃあ感動してまいまっせ。

この他に自作自演ものといったら、「カルレバロ プレイズ カルレバロ」というLP、「カルドーソ プレイズ カルドーソ」というCD、それにブローウェルのLPが何枚かあるけんど、そのあたりについちゃあ、次回のお楽しみぃー。ちょんちょん。(拍子木の音と思ってちょ)

内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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