2006年4月27日のブログ記事一覧-ミューズの日記
ミューズ音楽館からの発信情報  ミューズのHP  http://www.muse-ongakukan.com/

 



<あれも聴きたい、これも聴きたい> 益田 正洋 アランフェス編

 4月22日(土)東京 めぐろパーシモンホールにおいて、アマチュアオーケストラの渋谷交響楽団 第40回定期演奏会が行われた。
プログラムは、ロッシーニの「セヴィリアの理髪師」序曲、ビゼーのカルメン、ファリャの三角帽子など、スペインの作品あるいはスパインに因んだ曲目ばかりで、加えてギター協奏曲の定番「アランフェス協奏曲」が、近頃コンサートに録音活動にと大活躍中の益田正洋さんを独奏者に迎えて演奏された。

 そこでいつものように、富士通テンのスピーカーによるPA(SR)システムが活躍することになったのですが、それは4月のはじめ、ミューズサロンで開かれた福田進一さんのコンサートのおり、電話でミューズのギター講師 佐々木さんを通じて、益田さんのお弟子で小川さんという方から連絡をいただいたのがきっかけだった。なんでも小川さんは、このブログをよくご覧になっていて、オケにこのシステムを紹介してくださったとのこと。

 ホールは1200人収容で、あまり響きは良くないと聞いていたのだが、中に入ってみると、わんわん響きすぎるといったようなことのない大変良いホールと感じた。舞台上で準備が始まり、暫くすると益田さんが登場。
真っ先にこちらに来られ、挨拶をされるが、なんと腰の低い、礼儀正しい方かと、少しこちらが恐縮してしまう。今年28歳とのことでしたが、その年齢の頃の自分を振り返ってみると、少々恥ずかしい気がするほどしっかりした、とても明るく気さくな好青年。(私とは丁度30年の歳の開きがある)

 早速マイク、アンプ、スピーカーをセット。音出しテストを行う。
最初にセットした音量でテストをしてみるが、益田さんの感想ではもう少し音を絞ってみたいとのことで、少しボリュームを落として再度トライ。
その間オケの方達も、スピーカーやアンプには大変興味を持たれたようで、いろんな質問が飛び出し、それに応えていると、なんだかオーディオ屋さんになったような気がする。オケとのリハーサルを待つ間、益田さんから楽器のことなどいろいろお話を伺ったが、なんて感じの良い人なんだと感心してしまった。
リハーサルに入り、第一楽章が終わった時、まず第一に感じたことは、益田さんの奏でる楽器のクリスタルな音にもよるのだが、「なんて清潔な音楽を作る人か」ということだった。(楽器は現代ギターの今月号にも紹介されているが、星野良充2005年製)
テクニックも大変しっかりしたものを身につけている上、ジュリアード音楽院を首席で卒業という実績からも分かるように、まったく正しい音楽性を備えたギタリストだと一聴して判る。

何度かの音量テストの後、少し抑えた音量に決定したが、それでも、後で聞くと、指揮者のみならず、オケの方々にもギターの音がよく聞き取れて、大変演奏し易いとの評価。これは私としても一度オケの人達に尋ねて見たかったことなので、今回の大きな収穫だ。
 本番が始まるころ、益田さんは「自分は控え室に閉じこもるのがどうも好きではない」とのことで、楽屋裏、廊下の一部広くなっているところに出て指慣らし。
やはり非常にクリアーな音色と非常にすばやい指さばきが見事。
 1曲目のセヴィリア・・・が終わり、いよいよソリスト「益田正洋」が舞台に登場。
1200の座席を埋めた観客と共に、私もなぜだか少しづつ緊張してくる。
 ぜひとも客席にいて聴きたいが、暗い舞台そでで待機するより仕方ないのが残念。

 大きな拍手に迎えられて舞台中央に進み出たソリスト益田正洋。
 軽快なラスゲアードで快調に第一楽章が始まる。それにしても良いテンポ設定だと思う。難しいパッセージも不安げなところはまったく無し。少しづつこちらも安心して落ち着いてきた。
 第2楽章もゆったりしたテンポで、しかも歌わせ方も甘すぎることなく、節度を持って進められる。いつも気になる最後の盛り上がりの部分、オケのテーマの入り方に多少緊張の緩みがあったものの、アマチュアのオケでこれだけの演奏ができるとしたら、充分ではないだろうか。

 2楽章が終わって、その余韻を残した状態のまま3楽章に突入。非常に良いタイミングだと思う。アランフェスは2楽章が終わって、あまり時間をおいて3楽章に入ると、3楽章があっけなく終わってしまい、なんだか肩透かしを食ったような気分を味わうことになってしまう。1楽章、2楽章の重みに比較して、3楽章の構成が軽く規模が小さい上、多少盛り上りに欠けるため、そのように感じられるのだと思うが、2楽章の後、間髪入れずとは言わないまでも、あまり時間を置かず、このように2楽章の緊張を持続した状態のまま3楽章に入るのが私は好きだ。
このわずかな「間」も、ロドリーゴの意識した音楽の一部のような気がする。
それを、この夜、益田正洋さんは見事に表現してくれた。
割れるような拍手の中、何度も舞台に出た益田さん。アンコールはなんとあの「ロマンス」。禁じられた遊びのテーマ。これにはお客さんも大満足だったのではないだろうか。少し早めのテンポなのだが、なんだかとても新鮮に聞こえ、新しい曲を聴かされたような感すらする。

 最終電車の都合で、アランフェス終了後、システムをまとめて発送できるよう梱包したのち、すぐに会場を後にしたが、また新しいアランフェスを聴くことができたというさわやかな後味と、益田さんやオケの方達とあまりお話ができなかったという後悔の、二つの感想を抱きながら、品川に向かう電車に乗った。
 尚、益田正洋さんの新しいCD「カンタービレ」がレコード芸術5月号にて、特選盤の栄誉を獲得したのは、誠に喜ばしいことだ。
 皆さんも、ぜひ一度そのCDを聴いてみて欲しい。
そこには、洗練され引き締まった、その上妙な色付けをされることのない大変に清潔感あふれる古典の世界を発見することができる。
そして、きっといつかは、何かコンチェルトを聴いてみたいという気持ちが湧いてくるはずだ。
ご本人は、いつかポンセの南の協奏曲がやってみたいとはおっしゃっていたが。
 期待しよう。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )