前回の続き。
手術の日がだんだんと近くなってきて、あれこれ色々と考えるようになりました。
患者さんは辛く苦しい前処置に耐えているだろうか?
それを無菌室の外から見守るしかできないであろう家族の気持ち。
私の身体を気遣って、心配してくれる職場の同期や上司、友人。
そして私の両親のことと、私自身の身体のこと。
相手の患者さんのことを考えるとやっぱり落ち着かなかったですね。
入院する何日か前に、ドナー休暇の申請をする。
官公庁や一部の企業によっては、普段の年次休暇の他に『ドナー休暇』なるのもがあるようです。
私の所属する市でも(消防職員ですが、基本的には市の職員に変わりありません)ドナー休暇はありました。
職業柄平日に休みがありますので、今までの確認検査、最終同意面談、術前検診などは平日の休みを使って行ってましたが、入院だけはそうは行かない。
一応3泊4日の入院予定でしたので、どうしても1回は当番勤務にあたってしまう。
私の勤務サイクルだと入院する前日、入院3日目に当番にあたってしまうので、その2当番と退院後1当番、合計3当番のドナー休暇を頂きました。
入院する前の最後の当番では、『しっかりやって来い』と激励を受けました。
年度末で色々忙しい時期に抜けてしまったので申し訳ない気持ちでしたが、快く送り出してくれた隊長には感謝です。
私の入院は3泊4日でした。手術する前日に入院し、2日目に手術。3日目は病院で安静にして4日目に退院。
こんな流れでした。ここからはその時つけた記録を元に書いていきます。
・入院する前日(手術の2日前)
術前検診のときにもらった入院案内のパンフレットを見ながら、入院するのに必要な物を準備する。
書いてあるものを一通り揃えてカバンに詰め込む。
しかし今まで入院したことの無い私は、
『着替えは足りるのかな?これは書いてないけど必要かな?』なんて考え込んでしまう。
コーディネーターに電話をして分からないことは聞いて、何とか準備も完了。
入院する病院は実家の方が近いため1日泊めてもらう。
手術が近いからか、もう撤回はできない状態だからか、実家でも手術の話はあまり出ませんでした。
ただ夕食は私の好物ばかりが出てきたのを覚えています。
万が一何か事故があって、これが最後の晩餐とならないようになんて思いながら・・・
・入院当日(手術前日)
いよいよ入院当日。13時までに病院に来てくださいと言われたので朝はわりとゆっくり過ごす。
電車の時間が近づいてきたのでぼちぼち支度してたら、父から電話がかかってくる。
『病院まで送ってくから、支度して家の前で待ってろ』と。
朝仕事に行ったのですが、わざわざ抜け出してきてくれたようです。
迎えに来た車に乗り込み、父と2人で会話しながら病院へ。
『今回の手術で、相手の患者さんが快方に向かってくれるといいな』なんて色々話しながら・・・。
そして病院へ到着。入院手続きも無事に済ませいよいよ病室へ。
私に用意されたのは4人部屋。
ドナーには個室が用意されることが多いらしい(他の患者さんに配慮しての事なのかもしれませんが)のですが、コーディネーターから
『ちょっと今個室がいっぱいでして、相部屋になるかもしれません』と事前に聞かされていました。
この入院するのに必要な経費はドナー負担にはなりません。
私の入院費や今まで受けた検査の費用は全て相手の患者さん持ちなのです。
個室に入院するとなれば、当然差額ベッド代がプラスされる。
ただでさえ患者さん側は高額な治療費を払い続けているのに、私の入院の分まで負担してもらっている。
なんだか申し訳ない気持ちでした。その負担を少しでも減らしたかったから、逆に個室じゃなくて良かったのかな。
元々健康体で入院するので、同室の患者さんには後ろめたい気持ちもありましたがそれもたった4日間の辛抱。
今の私の役目は、患者さんに私の骨髄を提供することだから。
病室に案内された後、着替えて荷物の整理。
少しして手術担当の看護師さんが来て、明日の手術の説明がありました。内容は
・手術は朝一番で行う。当日手術室へ行く前に血栓防止のためのストッキングと手術着に着替えて待つこと。
・全身麻酔をかけるので夜9時以降は絶食。
・麻酔が効きやすくなるよう、筋肉注射を打つ。
・点滴をうち、全身麻酔後には気管挿管と尿道カテーテルを入れる。(男性はこの尿道カテーテルを抜くときが激痛らしいです)
尿道カテーテルの激痛に恐怖心を覚えました。
今度は入れ違いぐらいに担当の看護師さんが来る。
入院中の生活の説明と採血、血圧、血中酸素飽和度(SPo2)を測定。
血圧を測った後、SPo2測る機械を渡される。看護師さんが使い方を説明する前に自分で計測してたら、
『使い方分かるんですか?』なんて言われたので、
『救急車に積んであるので・・・』なんて返す。実は消防職員なんです、とも。
指先にただ挟むだけので簡単なんですけどね。その後はコーディネーターも来て身長、体重の測定。
お風呂も今日を逃すと入れないので、準備をして入浴。
この後は夕食まで何もなし。手術は明日だし、検査も特になし。医師、看護師が時々来ては説明をしていき、それ以外は病室のベッドで過ごす。
暇つぶしにあらかじめ買っておいた本も、1日で読みきってしまいました。
18時ごろ夕食。そのほんの少し前に麻酔科の医師が来る。この間の麻酔科検診のときとは違う先生。
ここでもやはり明日の手術の説明。
この夕食の後はもう明日の夕食まで食事は無いことを告げられる。
気管挿管の説明もしようと思ったのだが、私が消防職員と言うことを知っていたのか
『消防士さんだから恐らくどんなことやるかお分かり頂けると思うんですけど・・・』と医師。
『ええもう十分承知してます。』と私。
気管挿管の説明は省略。これで麻酔科の医師の説明は終了。
5分ぐらいで終わっちゃいました。
夕食後、私のベッドのところに『朝、昼食禁止です』と大きく書いたマグネットがありました。
21時消灯。いつもなら起きている時間と言うのもあったし、明日ついに手術と言うのもあってなかなか寝付けませんでした。
『眠れないようなら軽い睡眠薬出しますから言ってくださいね』と看護師さんがおっしゃってくれましたが、薬は飲まずに眠れました。夜中何度か目が覚めましたけどね。
・入院2日目(手術当日)
6時ごろ起床。あまり熟睡はできませんでした。
どうせこれから麻酔で眠らされるからいいかぁなんて思いながら、昨日指示された薬を飲む。
朝食の時間になるが、これから手術の私は食事無し。洗面をして昨日渡されたストッキングと手術着に着替える。
ストッキングとパンツと薄いガウンだけだったので寒い寒い。
ストッキングは江頭2:50みたいでした。(苦笑)
8時過ぎになって医師と看護師が病室に迎えに来る。
点滴のルートをとり、麻酔を効きやすくするため筋肉注射をする。手術室まで歩いて行くのかと思ったら寝ていたベッドごと手術室へ。
手術室へ運ばれてる間、頭の中で患者さんに『もう少しで骨髄液がそっちに行くから、もう少し頑張れよ』って思いました。
もうこの時点で意識がなんとなくボンヤリしてましたが・・・
手術室へ到着しストレッチャーに乗り換える。手術室には医学生と看護学生かな?やたらと人が多かったような気がします。
私の手術の見学?いやいや考えすぎか・・・
ストレッチャーから手術台にまた乗り換えて、また点滴のルートを取る。薬も2~3個投入。心電図やら何やらたくさんのケーブルで繋がれる。もう動けません。
そして麻酔が入る。インターネットでドナーになった人の体験記を見ると、笑気ガスで麻酔をかけると言う話を聞いていましたが、私の場合は静脈注射でした。
左手に何か冷たいのが入ったなぁって思った瞬間、そこからの記憶が一切無くなる。・・・
『ムサシさん、終わりましたよ。起きてくださーい』
気がついたら病室へ戻ってきていました。顔には酸素マスク、足には血栓防止のための機械がつけられていました。激痛と聞いて1番恐ろしかった尿道カテーテルは既に外されていました。
麻酔をかけられたのもいまいち思い出せない私は、
『手術は?これからですか?』なんて聞いたみたいでした。こんなことを言ったのも覚えてないぐらい、意識ははっきりしなかったです。
麻酔がかかる直前からの記憶が全く無し!恐るべし全身麻酔。
この時点でまだ頭はボンヤリ、そして強い眠気。酸素マスクは付けられたまま。手術した腰の部分は痛いと言うより重たい感じ。麻酔がまだ抜けきってないような、そんな感じがしました。
止血のために腰のところに砂袋みたいなのをしばらく敷いてそのまま安静にする。
どんな感じなんだろう?と緊張する間もあまりなく、あっと言う間に手術が終わったのでした。
次回へ続きます。
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書きたいことは頭にあるのですが、文才が無いもので上手くまとまらず・・・
それでも、一生に一度あるかないかの貴重な体験を自分の中にしまっておくのはもったいない。ドナー登録を考えてる方に、メリットとデメリットを包み隠さず伝えることで判断してもらう。
今まで骨髄バンクを知らなかった人でも、この記事で少しでも目を向けてもらえたらなと思いました。
骨髄バンクのドナーと言う形にこだわらず、自分の出来る範囲で出来ることをこれからも続けていきたいですね
拙いブログではありますが、また見にいらしてください。お待ちしています
いよいよ次は、最終面談です。
やはり、ドナーになるのが不安になったり、
「ドナーの輪」などで経験談を読んで、ちょっと
弱気になったり…
でも、将来?の夢は「こびとの靴屋」?
そおっと誰かの役に立ちたいんですよね。
ぜひ、大変なことも、なんでだろう?と
思ったこともいっぱい書いてください。
いろいろ聞いて、思ったより楽だった。と
がんばってきたいと思います。
医師、コーディネーターからもう一度詳しい説明があると思います。
恩着せがましくではなく相手にとって、そっと何かの役にって気持ちが本当に大切だと思います。
不安が色々とつきまとうかもしれません。ご自身の気持ち、ご家族の方の心情などを良く考えて結論を出して頂きたいと思います。
ドナーは強制されるものではありませんからね。
ドナーになった方の
ドナーになった方の体験が知りたくて偶然ムサシさんのブログを発見しました
私は生まれてこのかた入院などしたことがなくて痛いのは平気な気がするのですが、全身麻酔に対して不安があります。ムサシさんの体験を読んで患者さんのためにやるぞっって気合が入りました
もうひとつ偶然なんですが私の恋人が消防士なんです。ムサシさんのブログ読んで彼の仕事への理解を深めることが出来て嬉しいです
来月いよいよ採取ですか・・・私が提供したのも3月。
Waccaさんにとっても無事に終わりますよう、提供する患者さんにとっても最善の結果になるようにお祈り致します。
骨髄バンクのことだけに限らず消防のことも、何も面白みの無い普段の生活も書いていきたいと思います
またお越しくださいね
追伸、ちなみにもう一つの偶然を。
実は私も24歳です。
ムサシさんの 文章の感じが落ち着いているから年上だろうなぁって思ってましたよ
なんだか益々心強くなりました
消防士という職業柄肉体的にも精神的にも大変だと思いますが頑張ってくださいね
また寄らせて貰います
ではでは~
昔は落ち着いてると言うイメージをマイナスに捉えていましたが、今では褒め言葉として受け止めています
実物の私はとても年上とは思われないのですが(苦笑)
仕事柄体力的にもそうですが、惨事ストレスと言って精神的にダメージを受けることがあるのも否定できません。
身近にいるwaccaさんだからこそ、そんな彼氏さんをいたわってあげてくださいね
ドナー体験記も続きを書き次第随時アップしていきます。(前回からだいぶ空いてしまいましたが・・・)