消防士 兼 旅人の日記

消防署での出来事、ダラダラした日常生活を綴ります。

救急車…?

2014-09-26 23:27:28 | 救急隊の本音
前回の当番は8件、またまた2ケタ以下の出場で終わりました。

比較的仮眠も長く取れた方ではあるんですが、家に帰ってからはやっぱり眠たかったので寝てしまいました。長い時間寝れたとしても熟睡はできてないんだなって実感する非番の日です。


今日はタイトルにもある『救急車…?』な事案のお話を。

幼稚園ぐらいの子どもの発熱。主訴はそれだけでけいれんがあったとか、意識状態が悪いとかは無し。

熱測ったところ確かにあるけど、高熱と言うぐらいのレベルではありませんでした。

抱きかかえにて車内収容しようとしたんですが、救急車が来たことに近所の人が心配になったのか近くまで来る。で、それを親が大丈夫ですよーって説明しておりなかなか救急車に乗らない。

さすがにしびれを切らして早く乗るように促したんですが、その間子どもは機嫌もよく近所の人に手を振り笑える元気はありました。


聞けば数日前から熱があり、薬を飲ませていたけど下がる気配が無いとのことで救急要請に至ったもの。

お薬手帳など飲んでいた薬が分かる物を持ってきてもらうようお願いしましたが、持ってきたのは薬そのもの。処方された分を飲み切っておらずに、熱が下がってないから、と。

その時間帯は平日の昼間でありまだ近所の病院、クリニックもやっている。まずは、その病院などに自分で連れて行くことは考えなかったのか?

せめて薬を飲み切っても症状改善せず、意識の状態が良くないだとか、食事水分もほとんど取れずならまだ分からなくもない。でも最初に熱出したときにはちゃんと連れて行けてるのだし、その時点で子どもは熱が多少あるが元気はあるのだし、まずはかかりつけの病院にかかるべきでは?処方されてる薬もきちんと飲ませるべきだと思いますし。

熱が下がらない以上また病院に行って診察してもらう必要はあるとしても、わざわざ救急車で行くような緊急性は無いでしょう?

近所の人と話し込んじゃって救急車なかなか乗らないし、子どもだってその間グッタリとかしてたわけじゃないし、その点は親も認識していたんだし。

私も人の親ですし、子どもが熱出して下がらなければ心配にはなるけど、それでも親としてやることはそうじゃないよねって。



もう一つ。

平日昼間の時間帯であれば救急病院もどこもやっているので、比較的現場から近い対応可能な病院で受け入れが決まることがほとんどです。

ですが、夜間や休日だと病院が限られています。救急告示病院(簡単に言えば救急車の受入れに協力してくれる病院)の中から当番の病院を順番に決めて受け入れ体制をとっています。

全科目そこが当番と言うことも我が地域ではたまにありますが、大抵科目によって分かれてたりします。内科は○○病院、外科は××病院と言った具合ですね。

そうなると、よほどのかかりつけの病院が無い限り、搬送先の病院が当番の病院になることがほとんど。そうなると現場から遠くの病院になることもありうるのです。

救急医療体制を説明し、ここから(現場から)少々離れてますが当番の病院がそこになりますので、これから受け入れOKか確認取らないとなりませんが、おそらくそこ(当番の)になると思いますと傷病者本人あるいは付き添いの家族に説明。

そうすると、遠いから行かない!って言い出す方もいます。辛くて呼んだんだし、病院行った方が良いんじゃないでしょうか?と言っても、(遠いから)行かない!と頑なに拒否し出すのです。


近ければ診てもらおうと思ったんだけど…遠いなら大丈夫です、結構ですって。

じゃあ何で救急車呼んだの?今ある症状が辛くて早く治療なり処置してもらいたいから呼んだんじゃないの?それがたとえ緊急性があるかどうかは別の話としても。

平日昼間でも言えることですが、救急車は必ずしも希望の病院に行ける乗り物ではないんです。


救急車の不適切な利用が叫ばれてる昨今、わりとよくあるパターンのお話を今回しました。

救急車の存在意義は生きるか死ぬかの瀬戸際にあるような、治療が遅れれば命の危険があるような。あるいは後遺症が残ってしまうような。そんな人を『救』うために『急』いで病院に搬送するための『車』です。

今回のお話にも書いたとおり、このようなことで救急車が使われたがために、真に救急車を必要とする人のもとに直近の救急車が向かえなかったことがあるんです。直近の救急車が向かえていれば違う未来があっただろう、命を助けられただろうと思ったことも何度もあるんです。

決して救急車をタクシー代わりに使わないで頂きたいと強くお願いして、今日のお話を終わりにしたいと思います。


明日は仕事、メンバーが変わっての当番勤務です