(写真:世界最大の塩湖の、ボリビアのウユニ塩湖Salar de Uyuni)
「ひとりの人を理解するまでには、すくなくとも、
一トンの塩をいっしょに舐(な)めなければだめなのよ」
***********
ミラノで結婚してまもないころ、これといった深い考えもなく夫と知人の
うわさをしていた私にむかって、姑(しゅうとめ)がいきなりこんなことを
いった。
とっさに喩(たと)えの意味がわからなくてきょとんとしていた私に、
姑は、自分も若いころ姑から聞いたのだといって、こう説明してくれた。
***********
一トンの塩をいっしょに舐めるっていうのはね、
うれしいことや、かなしいことを、いろいろといっしょに経験する
という意味なのよ。塩なんてたくさん使うものではないから、一トンというのは
たいへんな量でしょう。
それを舐めつくすには、長い長い時間がかかる。
まあいってみれば、
気が遠くなるほど長くつきあっても、人間はなかなか理解しつくせないものだって、
そんなことをいうのではないかしら。
(須賀敦子『塩一トンの読書』から抜粋)
※改行は、読みやすいようにキャベツの独断と偏見で行っています。
<後の記事>
・『塩一トンの読書』 弐
「ひとりの人を理解するまでには、すくなくとも、
一トンの塩をいっしょに舐(な)めなければだめなのよ」
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ミラノで結婚してまもないころ、これといった深い考えもなく夫と知人の
うわさをしていた私にむかって、姑(しゅうとめ)がいきなりこんなことを
いった。
とっさに喩(たと)えの意味がわからなくてきょとんとしていた私に、
姑は、自分も若いころ姑から聞いたのだといって、こう説明してくれた。
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一トンの塩をいっしょに舐めるっていうのはね、
うれしいことや、かなしいことを、いろいろといっしょに経験する
という意味なのよ。塩なんてたくさん使うものではないから、一トンというのは
たいへんな量でしょう。
それを舐めつくすには、長い長い時間がかかる。
まあいってみれば、
気が遠くなるほど長くつきあっても、人間はなかなか理解しつくせないものだって、
そんなことをいうのではないかしら。
(須賀敦子『塩一トンの読書』から抜粋)
※改行は、読みやすいようにキャベツの独断と偏見で行っています。
<後の記事>
・『塩一トンの読書』 弐