それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

2014年、面白かった番組ピックアップ

2014-12-26 20:05:53 | テレビとラジオ
どうでも良いことを書き続けるこのブログ。

今年、特に面白かったテレビ番組を2つほどピックアップしておきたい。


1.NHK「妄想ニホン料理」

今年は、和食が無形文化遺産に登録された。

しかし、四方田犬彦が『アステイオン』(81号)で書いていたように、「和食」というカテゴリーは嘘くさいか、あるいは、ある種、権力的なものである。

日本の料理は、様々な地方の多種多様な料理から構成されており、「和食」とされるのは、そのごくごく一部に過ぎない。

日本の中心部と結びついた「和食」というカテゴリーは、地方の多様性、日本料理の異種混交性を破壊する可能性を孕んでいる。

料理は、権威によって一方的にカテゴライズされるべきものではなく、常にそれぞれの地域の環境や文化的多様性に根差した、異種混交なものであるのが自然なのではないか。

だから、料理は常に刷新されるし、自由であるべきだし、国単位ではなく、もっとミクロな歴史とともにあるものではないだろうか。



そんな今日この頃、NHK「妄想ニホン料理」が素晴らしい。

妄想ニホン料理は、日本のありふれた料理を、箇条書きにした説明のみで外国の料理人に外国で作ってもらう、という内容だ。

例えば、「かっぱ巻き」だと、

「かっぱ巻きとはカッパのロールという意味である」
「カッパとは日本の川や池にいるとされる妖怪である」
「中心はジューシーで歯ごたえがある」

という3つのヒントのみで料理を行う。

この回で料理を行ったのは、インドネシア・バリの料理人たちと、チェコ・プラハの料理人たちだった。



この番組が面白いのは、このめちゃくちゃ不親切なヒントが、結果的に料理をその地域の言語体系に翻訳させる手助けになるということだ。

「カッパ」という妖怪が、それぞれの国のおばけ、あるいは神様的な存在に翻訳され、それが料理のアイディアの基礎になる。

宗教的な言語は、食材上のタブーや選好を決定し、そこにその地方の料理の言語、料理人たちの技術やセンスが加わる。

そこから分かるのは、「料理」というものを構成している言語や文脈の複雑さ、多重性である。

料理は自然環境を反映し、宗教を反映し、経済・社会的価値規範を反映する。

この妄想ニホン料理は、普通に料理をするのでは明らかに出来ないこの多重性を見事に明らかにするのである。

これからもぜひ続いてほしい番組のひとつだ。



2.日本テレビ「所さんの目がテン」

身近な事象を「科学」的に分析するこの番組は、私が小さい頃からずっと続いている。

今年は何度もこの番組を観て、大いに楽しんだ。

例えば、最近で言うと、「繁盛店の科学」の回が非常に面白かった。

番組が、飲食店激戦区・三軒茶屋にあるスペイン料理店(繁盛していない)の売り上げアップを目指すという内容。

お店の概観を徹底的に改良し、メニュー表も変え、宣伝をし、色々な工夫をしていく。そして、確かに売り上げがアップしたという話だった。

また、「マンガの科学」も興味深かった。

出版社で全否定された専門学校生のマンガを、文学部の先生や経営学の先生らで分析し、改良のヒントを与えていく。

ビッグデータを使い、キーワードを増やし、シナリオを文学的に検討し直す。

最後は本人の努力もあって、確かに最初よりははるかに面白いマンガになった。



大学で研究されている「科学」には、それ独自の言語体系がある。

学会で評価されるには、学会の言語で語り、学会の知識体系と噛み合わなくてはいけない。

一般の人も大学生もこのことがほとんど分かっていない。

大学の「科学」は実際問題、社会のことを論じていても、社会の言語からは乖離している。

だから、大学の「科学」が社会的なニーズや具体的な事象と噛み合うのは、実は貴重なことなのだ。

「目がテン」がどこまで科学的なのかは、その回によって大きく異なる。

ただ、絶対に評価されるべきなのは、「科学は具体的で身近で、そして、役に立つこともあるよ」ということを示していることなのである。



今年はSTAP細胞事件があった。

理系の研究者のみならず、文系の研究者にとっても衝撃的な事件で、それは日本の大学の博士課程教育に内在する根本的な問題点を暴き出してしまった。

さらには、日本社会の科学的リテラシーの限界を明らかにし、社会的な悲喜劇を上演する結果となった。

正直言って「目がテン」は科学的リテラシーという点では、少々怪しいところもある。

しかし、それでもなお、この番組が科学と社会の関係を取り持というとしている点で、大いに評価されてしかるべきだと私は思う。



とりあえず、以上。

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