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肝臓がん 国が定める検診はなくても「肝炎ウイルス」検査は必要だ (死亡者年間約1.8万人)
国民病とまで言われた、B型肝炎とC型肝炎は、長期間かけて、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行する。
血液を介して感染することが多く、集団予防接種による連続注射や血液製剤や輸血が主な原因だ。現在、肝臓がんは公的ながん検診の対象にはなっていない。だが、それをもってとくに検査が必要ないと考えるのは間違いだ。
B型肝炎とC型肝炎ウィルスに感染している人は、推定350万人。問題なのは、現在でも自身の感染に気づいていない人が多いことだ。
肝臓クリニック札幌・院長の川西輝明医師は、独自に「肝がん検診団」を結成し、北海道全域で潜在的な患者の掘り起こしや、肝炎患者の検診を行っている。
「肝炎ウィルス検査をまだ一度も受けたことがない、という人は今でも少なくありません。B型もC型肝炎も治療薬が進歩して、早期で治療すれば、肝臓がんになるのを防ぐことが可能になりました。だから、ぜひ一度検査を受けて欲しい」
川西医師によると、B型やC型肝炎ウィルスの感染が判明した人は、たとえ症状がなくても定期的な検診が必要となるという。
「基本的には、半年ごとに血液検査で肝機能の数値(AST、ALT)をチェックし、エコー(超音波)検査で、肝臓の状態を確認することが必要です。」
加えて最近、肝臓病専門医の中で問題となっているのが、 肝炎ウィルスの感染がなく、酒も飲まないのに、肝臓がんになるケースだ。
川西医師によると、非アルコール性脂肪肝炎=NASH(通称ナッシュ)が原原因とされているのが非アルコール性脂肪肝炎NASH(通称ナッシュ)。推定患者数は、100万人以上とみられている。
川西医師によると、NASHの主な原因は、生活習慣病だという。
「NASHの2割が、10年ほどで肝硬変や肝臓がんに進行することがわかってきました。
最近は、NASH由来の肝臓がんで死亡した人のほうが、B型肝炎から肝臓がんになり死亡した人の数を上回っています」
NASHによる肝臓がんの発症は、70歳前後に多い発症を避けるには、食生活の改善が基本だと川西医師は言う。
「無理な糖質ダイエットは長続きしません。患者さんに勧めているのは、1日の食事のうち1回は、主食のでんぷん質(米やパンや麺)を、卵2個と交換換する食事法。〝ニコタマ療法〟と名付けています(笑)。これに、野菜たっぷりのスープを習慣化すると、3ヶ月から半年で効果が出てくるはずです」
健康診断で肝機能異常や脂肪肝の疑いを指摘された場合、専門医の診断を受けてNASHの疑いが無いかを確認する。肝臓がんの公的検診が存在しない以上、命を守る対策が必要だ。