大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

今日は、大分県土地家屋調査士会総会です

2015-05-22 08:24:18 | 日記
今日は、大分県土地家屋調査士会の第61回定時総会です。充実した議論の上で、今年の調査士会のしっかりとした体制がつくられるよう期待しています。

個人的には、私は今日の総会をもって大分会の会長を退任します。最後くらいはしっかりした挨拶をしなければ、ということで表彰式での挨拶について原稿を用意しました。さて、どれくらいきちんと原稿を読めるでしょうか?


本日は、大分県土地家屋調査士会第61回定時総会とそれに先立つ表彰式の開催にあたり、大分地方法務局馬場潤次長をはじめとした御来賓の方々の列席と多くの会員のみなさまの出席をいただきましたことに、まず御礼を申し上げます。ありがとうございます。

今年は「戦後70年」の節目の年にあたります。この「節目」は、単にきりのいい数字の年である、ということだけでなく、さまざまな変化をもたらす節目としての意味をも持つものとなっています。
戦後、私達が前提としていた社会・経済・政治の体制が大きく変化しようとしています。
私たち土地家屋調査士もその変化を見据え、社会がそして国民生活がより良い方向に動いて行くよう、私たちの業務分野からの貢献のための努力をしていかなければなりません。
わが国は今、人口減少社会の道を急速に進んでいると言われています。全国の人口が2010年の1億2800万人から減少をはじめ、2044年には1億人を割り込むまで減少していくとも言われており、高齢化と都市一極集中が進む中、「地方消滅」の危機さえもがささやかれています。
このような社会の趨勢は、私たちの業務にも大きな影響を与えます。人口減少・過疎化の進展の中で、「人と土地との結びつき」に変化が起きています。土地の管理を行おうにも、地元に本人はおろか親戚もいないようなケースが増えています。土地の境界については、すでに土地所有者自身、自分の土地の境界がどこであるのかわからないというケースが増えており、隣接土地を含めて今後の土地利用に大きな支障をきたす恐れが高くなっていると言えます。全国に1000万戸あるともいわれる「空き家」の問題は、人口減少、少子化・高齢化が具体的な社会問題として顕在化して、生活と地域社会の状況に様々な影響を及ぼすに至っていることを示しています
このような状況に対して、私たち土地家屋調査士は、不動産(土地・建物)に関する専門家として、特に土地境界に関する専門家として、問題の解決に貢献していかなければなりません。まさに専門家としての、専門家であるからこそできる貢献が求められていることを、あらためて肝に銘じる必要があります。

3.11東日本大震災から4年が経過しましたが、被災者が元通りの生活を取り戻すには至っていません。被害は、直接には、自然災害によるもの、福島第一原発事故によるものとしてありますが、復興が思うように進まない要因として、既存の制度の様々な欠陥による部分もあることが指摘されています。復興計画を進めるための障害として、境界が確認できずにいたり、土地所有者が不明であったり、多数の相続人がいて所在不明の人がいたりすることが計画の推進に対する阻害要因になっている、ということが指摘されています。3.11の経験と教訓を活かして今後の全国的な防災体制の構築と復興計画を進めるための制度的な改善、特に私たちの業務領域に係る改善を私たちの課題にしていかなければなりません。

日調連においては、それらの課題を「境界紛争ゼロ宣言!」ということに集約して発信しています。土地境界が安定的なものであることは、国民の社会経済生活の基礎として大変重要な意味を持ちます。私たち土地家屋調査士が分筆登記等の日常的な業務を通じて正しい筆界の確認を通じて安定的な土地境界関係を形成し、それを「地図」として公的に共有しうる情報にしていくこと、そして不幸にして境界紛争に至った場合にも適切で迅速な解決が図られるようにすること、それらの総体を有機的に連携させて進めて行くことが土地家屋調査士に求められています。
この課題の実現のために必要な制度改革を実現していかなければなりませんし、制度改革の実現のためにも私たち土地家屋調査士の日常的な業務が国民の信頼を得るに足るものであり続けることが必要です。

私たち土地家屋調査士には、分筆登記等の日常的な土地の筆界に関わる業務を、筆界特定制度や「土地境界の不明を原因とする民事紛争」の解決のための民間紛争解決手続(ADR)の質を持ったものとして、まさに土地家屋調査士でなければできない質を持つものとして行って行くことが求められています。
土地家屋調査士会は、「会員の品位保持とその業務の改善進歩を図るため」の「指導及び連絡」を行うことを目的として設立・運営されているものです。この基本にあらためて立ち戻り、適正な業務の遂行のための指導・連絡をさらに強化して行くことが求められています。それは、とりもなおさず、たとえ土地家屋調査士が行う業務であったとしても、その業務内容が「土地家屋調査士の業務」と言える水準に達していないものであるのなら、会則上に定められている「注意勧告」や「指導調査」を含めて調査士会の本来の役割である「業務の改善進歩のための指導」の対象にする必要がある、ということでもあります。この点への、あらためての認識と理解をお願いいたします。
また、このような土地家屋調査士の適正業務実施への不断の努力こそが、非調査士による業務を許さない最大の根拠である、ということを確認しておきたいと思います。非調査士が申請人の都合に合わせた誤った筆界位置を、いい加減な調査に基づいて「確認」して登記申請を行い、そのまま登記されてしまうようなことがあるのなら、登記制度による筆界の公示とそれによる安定的な境界関係という国民生活の基盤が破壊されていってしまいます。そのようなことのないよう、筆界に関する唯一の専門家としての土地家屋調査士の役割をしっかりと果していかなければならない、ということをあわせて確認しておきたいと思います。

本日の総会は、このような多くの課題を担うべきものとして開催されます。総会での議論を通じて、私たち土地家屋調査士が、そして大分県土地家屋調査士会が、今申し上げた諸課題の実現に向けて進んで行く体制を作っていきたいと思います。本日の総会が実り多いものになるよう、皆様の協力をお願いして、私からの挨拶とさせていただきます。