mitumine 夢幻庵日記

夢うつつで過ごしている日々、趣味の絵・旅行・写真・ハイキング・読書などを写真を交えて気ままに記しています。

6月に読んだ本2冊 (「名画の言い分」「銃・病原菌・鉄」上下)

2020-06-30 08:40:36 | 読書
 
「名画の言い分」木村泰司 著 ちくま文庫 


著者は冒頭「美術は見るものではなく、読むものです」と言って驚かす。
中世以前の西洋絵画は一定のメッセージを伝えるもので、そこには明確な意図が内在している。
そのためには、時代の歴史、政治、宗教観、思想、社会背景などの知識が必要としている。
美術のプロになるわけではないので、「その時代のエッセンスをつかむ」事を著者は提案している。

本書はその手引きと言っていい。欧米では子どもが小さいときから美術館へ連れて行って
分かりやすい言葉で美術教育をしているという。

本書で解説している美術作品106点がカラーで20頁にわたって掲載されている。


上図左下のボッティチェリ「プリマベーラ(春)」1482年頃 フィレンツェ ウフィッツィ美術館の図録(見学時買い求めた)から下に転載


この絵のエッセンスは要約すると次のようになる
13世紀イタリアでは、11ー3世紀の十字軍遠征により経済的に発展、裕福な市民階級が台頭、神様に束縛されるのはこりごりだ、現世を楽しもうとなって再び(ローマ・ギリシャ時代)人間中心の時代となって、ルネッサンス(文芸復興)の華が咲き誇る。

そんなときミラノ公国が全イタリアを支配下に置こうとして対フィレンツェ共和国の間で戦争が勃発、フィレンツェでは古代ギリシャアテネの故事(BC480サラミスの海戦 )に倣って美術の力を利用して国民の士気を高め、勝利しようと考えた。
当時のギリシャ・ローマ人は異端の神を信仰していたが、それを大々的にリーニュアル(例えば性愛の神ウエヌスを愛と美のヴィーナス、性と欲望の神グピトを愛の神キューピッド)して時代に合わせた(キリスト教人文主義)。それを象徴する作品がこのプリマベーラだという。

右から西風の神様ゼフェロス(春風)、大地の精霊クロリス、花の女神フローラ、愛の神様クビト(キューピッド)、美の女神ウエヌス(ヴィーナス)、三美神、伝達の神様メルクリウス(ギリシャ名ヘルメス)と、この作品は異端の神々のオンパレード。

この絵の解釈の一つ(93頁)
西風の神様ゼフェロス(春風)が、大地の精霊クロリスを愛し求め、花嫁となったクロリスは花の女神フローラに変身します。これは人間の愛を表しています。目隠しされたキューピッドとヴィーナスが指し示しているのが三美神。三美神は天井の愛、神の愛を表しています。メルクリウスは伝令の杖で頭上の雲を払っています。この仕草から彼が何を言いたいのかというと「人間の愛なんて神様の愛に比べればこの程度」と、あくまでイエス・キリストの愛を讃えた、キリスト教人文主義を表す絵画となっているわけです。

「銃・病原菌・鉄」上・下 ジャレド・ダイアモンド 著 倉骨 彰 訳 草思社
 


本書は、1万5千年にわたる人類史である。読後、何と多岐にわたり長いスパンの事象を研究したものと、驚いた。内容を紹介するのは非常に難しいので、次でお茶を濁したい。
著者が38頁に「本書の概略について」を記しているので、これを参考にした。

 人類がアフリカで誕生してたの大陸に拡がるまでの歴史
 過去1万三千年の間に、それぞれの大陸の環境の差異が、人類社会の歴史に与えて影響を考察
 フランシスコ・ピサロ率いる少数のスペイン軍が、インカ皇帝アタワルパの大軍にペルーのカハマルカ盆地で遭遇した瞬間を、その目撃者の証言を通じて紹介しながら、異なる大陸の民族の衝突について考察する。征服できた直接の要因は、病原菌であり、馬や文字や政治機構であり、技術(特に船と武器)であった。
人々が先史時代に、野生の動植物をどのように栽培化し、家畜化したかを考察する。
 人口の稠密な集団に特有な感染症の病原菌がどのように進化したかを考察する。ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌の犠牲になったアメリカ先住民や非ユーラシア人の数は、銃や鋼鉄製の武器の犠牲になった数よりもはるかに多かった。
 文字は、過去数千年に登場した人類の発明の中で、最も重要な発明であろう。文字や技術の伝播について考える。
 農耕によって食料生産と余剰食糧の蓄積が可能になり、非生産者階級を養うゆとりを社会に生みだし、技術の発達を可能ににした。政治家を養うゆとりも生み出した。
 オーストリア大陸の特異性、アジア本土と太平洋域で起こった歴史の展開についてみていく。
 最後にサハラ砂漠以南のアフリカ大陸の歴史をみる。特にバンツー族の拡散による人口分布の変化が興味深い。

著者は、序文で人類史における重要な発明のいくつかは東アジアと太平洋地域で最初に登場している。船を造り、四万年前にインドネシア海域に拡散していき、オーストリア大陸まで到達していたのは、南東アジア人だった。研磨加工を施し、刃先の長い石器を最初に造ったのは日本人だった。これは、世界各地の人類が未だ石器を用い、鉄器について何も知らなかった時代のことで、ヨーロッパで石器が研磨されるようになる1万五千年以上も前のことである。世界で最初に土器を発明したのも日本の狩猟採集民だった。それはヨーロッパで土器が見られるようになる5千年前、南北アメリカ大陸で見られるようになる9千年も前のことである。
 縄文人か弥生人か分からないが、先祖もたいしたものと感心した。
 









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